「結婚相手に求める年収は1000万円以上」なんて、まだそんなこと言ってるの? 自分もそこそこ稼いでいるから、パートナーに対して特に収入は求めない。同じくらいの収入があればそれでいい。そう考える女性が珍しくない今の時代——。
でも、収入が自分より低いどころか、負債まで抱えている起業したて男性とつきあう勇気はある? 事業が大当たりする可能性もあるけれど、多額の借金を抱えて倒産する可能性も……。
今回ウートピでは、そんな将来性が未知数の「起業男子」とつきあっている、または結婚している女性3人を集めて座談会を開いてみました。彼女たちがリスク覚悟で関係を育む理由とは?
つきあった理由や経緯を聞いた第1回に続き、第2回は創業まもない「起業男子」といえば一番に浮かぶ「お金の心配」について聞きました。やっぱりお金の苦労は尽きないの?
座談会に参加してくださったのは、こちらの3名。
美波さん(仮名):既婚32歳。夫は2回起業して2回とも失敗。現在ベンチャー企業で修行をしながら3回目のチャレンジに向けて準備中。
華菜さん(仮名):未婚29歳。1年半前から起業家の彼と交際中。結婚の話はまだしていない。事業は今のところごく小規模だが順調のよう。
莉子さん(仮名):未婚26歳。1年半前から起業家の彼と同棲中。IT分野で起業した彼には会社付けで数億単位の負債が。すでに結婚も検討中。
第1回:まだ負債しかないけれど…私が「起業男子」とつきあう理由
頭はピカイチだけど現金がない…
——創業まもない「起業男子」とつきあうとなると、一番に心配になるのがやっぱりお金のことですが、どうですか?
美波:彼が起業してる時は、ずっとお金のことばかり気にしてましたね。だから、とにかく物を買わない習慣がついて。自宅はびっくりするくらい物がないんです。洋服もすごく気に入ったものがない限り買わないし、食器や家具もまったくお金をかけなくなりました。お金をかけるのは食費だけかな。
——起業家は体が資本ですもんね。
華菜・莉子:そうそう、食べものはケチらない。
美波:サラリーマンで毎月お金が入ってくるのは、ホントありがたいですよ(笑)。たまーにいいお皿を買ったりしたら、すごく嬉しい。また彼が起業したら、お金のことを心配する生活になっちゃうから今のうちだけ楽しんでます。
華菜:私の場合はまだ同棲してないこともあって、生活費に困った経験はないですね。そもそも彼の収入は把握してないですし。デートは基本的に彼持ちです。儲かってるかどうかも知らないし、借金があるかどうかも知らないです。
美波:じゃあ、まあまあ儲かってるんじゃないですか。
華菜:いやー、どうなんでしょう。ホント知らなくて。でも、どっちにしろ女性に出させるのはイヤなタイプなんだと思います。普段のデートは彼が出してくれるので、その分はプレゼントで返したりしてますね。料理を作ってあげる時に、材料費は私が持ったり。そういうふうにさりげなく返してます。全体的には全然彼の方が払ってくれてると思います。
莉子:生活費は今のところほぼ私が出してますね。
華菜:えらい!
莉子:というのも、彼、全然現金を持ってなくて。頭はピカイチにいいんですけど、行動は結構バカなんですよね。たとえば、役員報酬は1度決めると次の決算まで1年間は変えられないんです。彼はそれを知らずに役員報酬0にしていて、現金がまったくないという状態に……。株は持ってるけど、とにかく現金ゼロ……。それを見た時、バカだなって思いましたね。
家賃分3万円だけはもらってますけど、あとはかなり私が出してますね。デート代、光熱費、食費……全部、私の負担。まあ、今は私が個人事業主でいろいろ経費で落とせるからいいんですけど。
——頭はピカイチで株はあるけど、現金はゼロ……なんですね。
莉子:株で建てた実家とか株とか資産はあるみたいだから、結婚したらもらっちゃおうかな(笑)。数千万円の資産があるなら日々の小金は「いっか」みたいな。それは、まあ、冗談として、別に今はおしゃれなレストランとか行かなくてもいいんです。「王将」で十分。贅沢したいとも思わないし。今度、出張がてらベガスに行くんですけど、最終日だけ奮発して2万円のいいホテルに泊まるけど、あとは全泊ユースホステルだし。
華菜:莉子さんは頭の天秤がスケール大きいですよね。
莉子:同期はすごくキラキラしたIT企業社員になってるので、今の私とは落差がすごくて(笑)。男性におごってもらうの当然でしょ! みたいな感じですから。話はまったく合わないですね。
華菜:幸せの基準は人それぞれですもんね。
借金はあるの?
——起業には借金もつきものかなと思いますが、実際にみなさんのパートナーは負債を抱えていたりするんですか?
莉子:うちは会社付けですけど、数億単位で借金あります。個人保証でも数百万円単位でありますね。
美波:うちも個人保証で借金を返してます。
——借金はフツーにあるものなんですね。パートナーが借金を抱えていることについて不安はないんですか?
美波:不安はないですね。今、こうして投資しておけば将来絶対に成功するし(笑)。
華菜:自分も働いてますしね。
美波:そうそう。
莉子:彼、初任給が1100万円だったんです。他人から理解はされにくい性格かもしれないけど、とにかく頭はいいから何とかなると思います。1000万円くらいの借金なら2年くらいで稼ぎながら返せるし。それと、一応もし今、私が妊娠したら、会社員やるって言ってくれてはいますね。実際どうなるかわかりませんけど、そのお気持ちだけは受け取っておきました(笑)。
美波:もし本当にダメだったら、離婚するかもしれないけど、それはそれでいい。こんなこと言ってるから、まわりの友達と話が合わなくなっちゃうんですよね。
仕事は絶対に続ける!
——パートナーに借金があっても、彼の可能性を信じてるし、自分自身も働き続けるから特に不安はないんですね。パートナーの事業が不安定だからこそ、ご自身の働きかたについてはどんなふうに考えてるんですか?
美波:私の場合は、彼の働きかたにあわせて自分の働きかたも柔軟に変えてますね。例えば、彼が四国で起業していた頃、私はちょうど転職活動中だったんです。結局人材系のベンチャーに決めたんですけど、リモート勤務にしてもらって、彼の挑戦をそばで支えてました。その代わり、最初の数ヵ月は正社員じゃなくて業務委託になっちゃいましたけど。
今は夫が会社員に戻って収入が安定したから、今度は私が充電のために勤めていた会社を辞めたところなんです。私自身も個人事業主としてキャリアをスタートさせようかな、って考えてるところです。
——パートナーの起業中は自分が会社員をやって支えて、彼が会社員をやっている今のうちに次のステージの準備をする、と。柔軟ですね。
莉子:私も柔軟に、自分がまた会社員に戻る可能性は考えてますね。彼がサラリーマンに戻る可能性はないだろうし、私の収入がなければ家計は破綻するので。こうしてふたりとも自営業でやっていると保険料がめちゃくちゃ高くて負担なんです。その分、給料から保険料が天引きされてるとはいえ、会社にいろいろ支えてもらえる会社員って、素晴らしいな、と。出産とか考えると、産休・育休がないとしんどいので、その時は会社員に戻ろうかなとも思うし。
美波:ね! 普通に毎月お金が入ってくるって素晴らしいよね。
華菜:私の場合、一緒に住んでるわけじゃないから経済的に「支えてる」っていう感覚はないかな。ただ、仕事がトラブったりして彼が精神的にも経済的にも不安定になることがあるから、仕事は絶対に続けよう、と決めてます。まわりには「結婚したら辞めるかも」みたいな女子がまだいるけど。母も働き続けていたから、仕事は続けるのが当たり前だと思ってるし。
彼の事業が成功したら、どうする?
——ここまで「お金がない……」という話ばかりしてきましたが、将来的にはみなさんのパートナーの事業が成功して大金持ちになる可能性もありますよね? その可能性についてはどう考えているんですか?
美波:そうなったらいいなって思うけど、お金がゴールじゃないんです。むしろ、経営がうまくいけば、他のことを始められるじゃないですか。教育事業でプロボノ的に働いたり、社会のために時間とエネルギーを割けるようになる。ゴールはむしろそっちですね。
莉子:そうそう、不労所得で好きなことをしたい。
——なるほど、お金はゴールじゃない、と。
華菜:お金がゴールだとヘンな方向に行っちゃいそうですよね。私もお金持ちになりたいから起業家とつきあってるわけじゃないですから。
——世の中的には、みなさんのように「たとえ借金があっても彼の夢を応援したい」というタイプの女性は少数派だと思うんです。やっぱり多数派は、パートナーに並以上の年収を求めてしまうはず。そういう多数派の女性に対して何かメッセージがあればお願いします。
美波:たとえば、結婚相手の条件として「年収1000万円」とかって言ったりしますけど、仮に年収1000万円あっても、子どもが2人いて家のローンを返していたら、そんなに余裕のある生活は送れないじゃないですか。それを何十年も続ける方が、私には信じられない。
私自身は前職で人材系の会社にいて人の年収を死ぬほど見ていたので、このくらいの年収だとこういうライフプランになるってかなり具体的にイメージできちゃうんです。その結果、こうやって一か八かで投資してるほうがいいなって結論して(笑)。年収と幸福が直結しないことも見てきたし。パートナーの年収を気にしちゃう女性には、「どうして目の前の収入をそんなに気にしちゃうの?」って言いたいですね。
莉子:そうそう、サラリーマンが良いとか悪いとかの話じゃないんですけど、サラリーマンで稼げるのは1000万円くらいが限界。起業して上場すれば何億と入ってくる。それがいいとは思わないけれど、収入1000万円が条件と言って相手を探してる女性には、他の世界もあるんだよ、って伝えたいですね。
それと私自身は、自分が認められたい人なので、相手に収入がすごくあって養われているという状態には耐えられないと思うんです。自分の価値が損なわれるみたいでイヤなんですね。彼が稼いでいても、いなくても、常に自分で稼いでいたい。
——みなさんの、その「今」に囚われない価値観、すごく自由ですがすがしいくらいです。最終回は「起業男子」とのちょっと不思議な日常生活について聞いていきます。ありがとうございました!