「好き」と「稼ぐ」を両立したい。over35のためのぼちぼち起業 第7回

独立するなら、リスクをとっても事務所や店舗を持つべき?【over35の起業】

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独立するなら、リスクをとっても事務所や店舗を持つべき?【over35の起業】

「35歳からのぼちぼち起業」
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「もっと自由に働きたい」「好きなことで食えるようになりたい」社会人を10年近くやれば、そろそろ自分のライフスタイルにあった働きかたを見つけたいもの。そんな30代女性に向けて“起業”というワークスタイルを提案する連載「“好き”と“稼ぐ”を両立させたい over35のためのぼちぼち起業」。

第7回のテーマは「事務所や店舗を持つかどうか」です。

FP(ファイナンシャル・プランナー)としてこれまで30代の女性の起業をサポートしてきた氏家祥美(うじいえ・よしみ)さんに教えていただきます。

事務所や店舗は本当に必要?

独立・起業を考えた時、一番決断が難しいのは「場所を持つか、持たないか」の問題かもしれません。つまり、オフィスや店舗を借りるか、それともレンタルスペースや自宅を活用して安く済ませるか? それぞれにメリット、デメリットがありとても迷うところ。

FPとして、30代の女性の起業を見てきた筆者としては、事業形態にもよりますが7〜8割の方には「できるだけ場所を借りずに、固定費は抑えましょう」とアドバイスしています。

でも、少数派ながら、なかには場所を借りた方がいい場合もあるんです。今回は、固定費というリスクをとって、あえて場所を持つことにした株式会社イエティの土川雅代(つちかわ・まさよ)さんのケースをご紹介しましょう。

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「四ツ谷駅から徒歩2分」の物件に思いきって投資

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土川さんの会社は、「レンタルスペースイエナ」を運営しています。

四ツ谷駅から歩いて2分という恵まれた立地でありながら、静かで落ち着いた雰囲気のビル最上階に位置する「レンタルスペースイエナ」。

これだけ聞くと、「うわっ、すごく家賃高そう!!!」と思いますよね?

はい、実際お高いんです。毎月土川さんの会社が負担している賃料は相当の額に上ります。それでも、土川さんは「借りるだけの価値があった」と言います。

どういうことなのでしょうか?

土川さんが「レンタルスペースイエナ」を始めるまでの話にさかのぼって聞いてみました。

夫の転勤を機にたどりついた今のビジネス

「レンタルスペースイエナ」を利用する顧客は、占い師やセラピスト、カウンセラーといった業種の人が中心。つまり、自分の事務所を持たないフリーランサーの、「お客さんと安心して使える場所が欲しい」ニーズに応えたレンタルスペースなのです。

土川さんが、このビジネスのきっかけを掴んだのは、34歳の時。

当時、大阪に住んでいた土川さんでしたが、夫の転勤で上京することに。それまで勤めていた会社を辞めたことをきっかけに、「東京で自分で事業を始めるのもいいかも」と考えるようになります。

「でも、何ができるかわからなくて。もともと編集の仕事をしていたので、それに関連した業種で独立しようと考えていました」

そんな時、たまたま知り合いの占い師やカウンセラーから「自分じゃうまくアピールできないから、プロデュースしてほしい」という依頼が舞い込みます。編集の仕事は突き詰めれば、おもしろい人を世に出すこと。「できるかも」と感じて引き受けることにしました。

東京でプロデュースの仕事を始めてみて気づいたのは、「世の中にはおもしろいスキルを持っているのに、埋もれている人がたくさんいる」ということ。

その後、2012年に36歳にして第一子となる男の子を出産。仕事量をセーブしながらもプロデュース業を続けていた時、ふと土川さんはひらめきます。

「個人でやっている占い師やカウンセラーが“場所”がないと困っているという話は、以前から聞いていたんです。そこで鑑定や施術に使えるレンタルスペースをオープンしようと思いつきました」

初期費用はなんと500万円

こうしてスタートした「レンタルスペースイエナ」。物件探しも順調に進み、冒頭で紹介した四ツ谷駅から徒歩2分という理想的な物件が見つかります。

「やるからには、ちゃんとやりたい」と完璧主義の一面をもつ土川さん。プロの内装業者や経営コンサルタントにも相談しながら着々とオープン準備に取りかかりました。

「削れるところは全部削っても、結局総額で500万円もかかっちゃいました。その費用は自分で工面しました。でも必要な投資だったと思っています。みんなが居心地よく感じられる納得のいく場所ができましたから」

「とはいえ、賃料に加えてアルバイト代の人件費もかかり、オープン当初は出費ばかりがかさみましたね」

開店まもなく、土川さんは「あの初期投資はムダじゃなかった」と実感します。

「四ツ谷という場所は信頼につながりました。“四ツ谷でやっている”というのはやはり印象がいいのでしょう。レンタルスペースを利用したお客さんが、別のお客さんを紹介してくれるようになり、どんどん人の輪が広がっていきました」

場所があるとイベントを開けるというメリットも。占いやスピリチュアルをテーマにしたイベントを開催するようになると、そのおかげで認知度が上がりました。それに連動するように占いコンテンツを制作や監修の仕事も増えていきます。

「固定の場所があるということはとても大きかったと思います。場所に人が集まり、そこからレンタルスペースのビジネスだけでなく、コンテンツ制作や人材の紹介まで広がりました。こういう状況を目にして、また話を持ってきてくれる人が現れて」

今ではサイトの運営も手がけるようになった土川さんの会社。現在は約50人のライターと契約して、記事の受発注管理から編集作業まで任せられる人材を育て始めているそう。土川さんのビジネスは今後も拡大していきそうです。

場所を持つなら、こだわるべき2つのポイント

四ツ谷駅から徒歩2分の場所を初期投資500万円かけて手に入れるという土川さんの判断は、正解だったと言えそうです。

事務所にしろ、店舗にしろ、“場所”を構えるのにはリスクが伴います。

一般的に敷金として家賃の10ヵ月を求められますし、その他に礼金、火災保険料、内外装の工事費、テーブルやイス、オフィス機器などなど、いろいろな費用がかかり、あっという間に100万円の札束がいくつも消えてしまいます。

今回紹介した土川さんの場合、成功した理由は二つありました。

一つは「立地」。これが家賃をケチろうとして、「主要路線から外れている」「駅から遠い」「裏路地」「人通りが少ない」といった悪立地の物件を選んでしまうと、せっかく場所を持った意味がなくなってしまいます。

もう一つは「内装」。プロに依頼しておしゃれに仕上げたからこそ、客単価を上げることができました。

場所を持つなら、そのメリットを最大限に引き出すために「立地」と「内装」にはこだわった方がいいと言えます。

「固定費は抑える」が起業の基本ですが、本当に必要であると思うなら、“場所”にお金をかけるのは悪いことではありません。自己資金がない人も創業融資制度を利用する手もあるので、前向きに考えてもいいでしょう。

(氏家祥美)

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35歳からのぼちぼち起業

好きなことしながら自由に生きたい。それなら“起業”も一つの選択肢かも。ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんと鈴木さや子さんに、35歳の起業のリアルと成功の秘訣を教えていただきます。

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