今や、スマホやパソコンがなくてはならない時代です。多くの人がスマホやパソコンを使い、LINEやTwitter、Facebookなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を利用しています。最近では、電話番号や住所も知らず、SNSだけで繋がっている人も多いのでは?
そんなときふとよぎる、「私が死んだら、この繋がりはどうなるの?」という不安。実際に、「父の葬儀の際、スマホのロックが開けず誰を呼べばいいのかわからなかった」という声も聞きました。
スマホやパソコンは、あなたが亡くなった後、どうなるのでしょうか?
一般社団法人デジタル遺品研究会ルクシーの代表理事を務める、古田雄介さんにお話を伺いました。
定額制サイトやFXの落とし穴
「結論から言えば、基本的には『そのまま』です。銀行は大抵の場合、遺族の届け出があって初めて本人の死を知り、口座を凍結します。それと同じで、スマホやパソコンも、持ち主の生死と連動していないからです」(古田雄介さん・以下同)
スマホやパソコンなどのデジタル機器は、中身も含めて、よくわからないまま放置されるということが多いそうです。しかし、生活の中でのデジタル機器の重要性が高まるにつれて、放っておけないケースが増えています。
例えば、
・直近までの仕事
・交友関係
・写真
・インターネットバンクや証券関係
などのデータが欲しい場合、遺族は何とかしてデジタル機器を開こうとします。
突然死の場合は、直近までやっていた仕事に支障をきたすこともあります。故人の交友関係を知るには、スマホやパソコンを調べる必要があるというパターンも珍しくないでしょう。葬儀の知らせを送るために交友関係が知りたい場合や、遺影に使うために写真が必要な場合、葬儀までの時間に迫られながら、デジタル機器と格闘する遺族もいるはずです。
「また、あとで遺族が知らない財産が見つかると、遺産分割協議をやり直さなくてはならなくなります。ごくレアなケースですが、故人がFXなどをしていた場合、借金が残されていたり、気付かない間に負債が増える恐れもあります」
他にも、定額制サイトなどの会員になっていた場合は、亡くなった後も引き落とし先が凍結されるまでは、支払いが続くことになります。しかし、インターネットバンクの口座から引き落とされている場合、遺族がそれに気づくのは、なかなか難しいかもしれません。
あまり人には知られたくないサイトに登録をしている方は、注意したいところです。
iPhoneのロック解除はFBIの要請でも応じない
スマホやパソコンはセキュリティを高めるため、複数の鍵を備えています。
iPhoneの場合、以下の鍵があります。
・1つめの鍵は、端末そのものの鍵であるパスコード
・2つめの鍵は、持ち主であることを証明するAppleID
・3つめの鍵は、アプリや会員サイトなどのアカウントIDやパスワード
遺族の立場でみると、1つめの鍵があれば、中に入っているデータにどんなものがあるかは見ることができますが、状況に応じて、2つめ、3つめの鍵が必要になります。
「パスコードを設定しているiPhoneは、パスコードを入力しない限り開けません。10回以上連続でミスすると、iTunesの入ったパソコンでApple IDの入力を求められたり、最悪の場合は中身が初期化されたりします。そのため、闇雲に入力する手も使えないと考えたほうがいいでしょう」
遺族にとっては、必要としているデータを初期化されたら大変です。
「キャリアショップやメーカーに問い合わせても、ここは対応してもらえないと思ってください。ユーザーのパスコードについてはAppleでも把握していません。以前、アメリカのFBIが、テロリストが持っていたiPhoneのロックを解除するようAppleに協力を求めましたが、結局応じられませんでした」
iPhoneのセキュリティの高さに驚かされます。でもそうなったら、iPhoneを開くことは諦めるしかないのでしょうか。
「誕生日や記念ナンバーなどを数回試してダメだったら、一旦本体は脇に置いて、購入時の契約書類のメモ書きを調べてみたりするほうがいいでしょう。また、故人が使っていたパソコンが残っていて、アクセスできる状態なら、そちらとコンビで解析するほうが復旧の可能性が数倍増えます。そのほか、過去の郵送物からネット銀行の口座の存在に気づくこともあります」
「スマホやパソコンを単体でみるのではなく、俯瞰した目で鍵を開くヒントを探してみる意識が大切」だということですね。
『もしも』のときに備えるために
スマホやパソコンを、持ち主以外の人が開くことって、すごく大変なことなんですね。
だけど、あなたが亡くなったとき、残された家族が、あなたのスマホやパソコンを開く理由を知っておけば、家族の手間を減らせるだけでなく、あなたが家族に見せたくないものや知られたくない情報を隠しておくことができるということです。
あなたが亡くなったとき、まず第一に遺族がやるべきことは、「あなたの財産を把握すること」です。
だから、あなたの財産が、どこにどれだけあるのかがわかりやすい状態になっていれば、「家族を困らせること」「あなたが隠しておきたいものが見つかること」その両方を防ぐことができます。
銀行の通帳や保険証書など、重要書類が置いてある場所に、スマホやパソコンのパスワードをメモしたものを入れておくのもいいですし、自宅のパソコンなら、デスクトップに貼っておくのもアリかもしれません。
万が一のときに備えて、早速実行してみてはいかがでしょうか。
次回は、TwitterやLINE、Facebookなどがあなたの死後にどうなるのかについて、紹介したいと思います。
(旦木瑞穂)