MrやMissだけじゃない ジェンダーに配慮した新しい敬称Mxとは?

MrやMissだけじゃない   ジェンダーに配慮した新しい敬称Mxとは?
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Mr(ミスター)が男性の敬称、Miss(ミス)が未婚女性/Mrs(ミセス)が既婚女性の敬称。そんなふうに中学校の英語の授業で習ったという方も、きっと少なくないのではないでしょうか。ところがこれらの敬称は、次の理由から、近年では「呼ばれる本人が望まない限り使わない方がよい表現」とされているそう。

[1]女性だけを既婚/未婚で呼び分けるのはおかしい。
[2]Mrsとつづるのは、なんだか「Mrのもの」というような感じがする。

ということで、女性は既婚/未婚の別にかかわらず、「Ms(ミズ)」と呼ぶのが主流となってきていますね。

それに加え、近年メジャーになりつつある新しい表現があります。「自分はミズ(女性)でもミスター(男性)でもない」というアイデンティティを持つ人の敬称、「Mx(ムクス)」です。

敬称「Mx」、どんなところで使われているの?

敬称「Mx」は、イギリスではかなりオフィシャルな場面でも使われるようになってきています。たとえば英国南部のブライトンでは2013年、公文書において敬称「Mx」が使われるようになりました。また、イギリスの日本郵便にあたる会社・ロイヤルメールでも、利用者登録の際、2013年5月から「Mx」が選択可能になっています。

イギリスだけではありません。アメリカでも、アーティストのジャスティン・ヴィヴィアン・ボンドが「Mx」を名乗り、「Mxアメリカ」というショーを演じました。ニュージーランドでも2015年、アメリカの有名誌TIMEが「Mx」についての記事を掲載したことでニュースになっています。
*参考:stuff

オーストラリアでは、2011年からパスポートの性別欄に「X」が選択可能となっており、2015年頃から「Mx」も一般化してきたようです。ただしオーストラリアでは、日本でいうところの「ホットペッパー」みたいなフリーペーパーがもともと「Mx」という名前だったため、「えっ? 雑誌……?」という混乱はあったようですが。
*参考:ABC News

性別に関する無意識の偏見をなくす

「Mx」の導入に伴い、性別に関する無意識の偏見を見直そうという動きも活発になりました。たとえばロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(王立スコットランド銀行)では、パスワードを忘れた時の秘密の質問「母親の旧姓は?」を廃止しました。人は婚姻した男女カップルのもとで育つとは限らず、事実婚、男性同士の結婚、シングルファザー家庭など多様な家族形態がすでにあるためです。

こうした変化を受け、2015年8月には、世界に名高いオックスフォード英語辞典(OED)も、次の版に「Mx」を収録することを検討しています。
*参考:産経ニュース

敬称「Mx」が生まれた経緯

この「Mx」は、もともとこんな経緯で生まれました。

「もう男も女もそうでない人も全部“M”の一文字でよくない?」「いや、それだとフランス語の“ムッシュー”の略称と同じになっちゃうし、男とか女とか強調したい人もいるからやめよう。Mの次に、なにものにもなれる*(ワイルドカード)の代わりとしてxをつけて、“Mx”にしよう」

ということで1970年代に生まれた「Mx」は、それから40年ほどかけて現在オフィシャルな地位を手に入れることになりました。他にも、「個人(Individual)」の短縮形である「Ind.」や、「人物(Person)」の短縮形である「Pr.」などが提案されていましたが、日本語で言うところの「個人・山田さん」みたいな雰囲気が出てしまうためか、あまり広まらなかったようです。

以上、現在使われている英語の敬称を、一覧にまとめるとこうなります。

なお、注意点としては、「Mx」を「ミクス」と読むからといって「男女ミックスされている」という意味にはならないということです。「自分は男女ミックスだ」と感じる人もいますが、そうでない人々――たとえば「自分は男でも女でもない」と感じる人などもこの敬称を希望する場合があります。

また、この「Mx(ミクス)」は、あくまで相手の希望があった場合に使う表現です。誰でも彼でも使ったり、「この人はオネエっぽいからMxでしょ?」と決めつけてしまったりすると、かえって失礼にあたりますので、相手に合わせることを心がけましょう。

日本語でもかつては、「○○嬢」「○○女史」といった敬称が使われていましたね。ですが現代では、放送局や新聞社などでも性別問わず「氏」に統一されるようになり、「女史」という言葉もほとんど見かけなくなりました。一つの言葉を文脈無視で差別と決めつけるのは考えものですが、今まで選択肢を与えられてこなかった人たちが「Mx」のような新しい言葉を選べるようになるのは、喜ばしいことではないでしょうか。

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