ギリシャの難民キャンプで暮らす13歳の少女が見た世界

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る
ギリシャの難民キャンプで暮らす13歳の少女が見た世界

日本では新学期が始まる9月ですが、世界には難民であるがゆえに何年も学校に通えないままの子どもたちがいます。中東からの難民が押し寄せているギリシャにも、そんな子どもたちが何万人も暮らしています。国際人権NGOアムネスティ日本の調査員がギリシャの難民キャンプで出会った13歳の少女と、彼女が日々目にしていた世界とは。

難民の4割が子ども

ボートでヨーロッパ諸国を目指す難民が最初に到着するのがギリシャです。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、今年1月から8月までにギリシャにたどり着いた難民は、16万人以上。そのうちの38%が子どもだそうです。

©Amnesty International (Photo: Richard Burton)

©Amnesty International (Photo: Richard Burton)

ギリシャの島々には多くの難民キャンプがありますが、雨が降れば水浸し、夏は耐えられない暑さが襲います。全身を蚊に刺されたり、時にはヘビも出るなど、とても厳しい環境です。それでも子どもたちは必死で生きています。© Amnesty International (Photo: Richard Burton)

ギリシャの島々には多くの難民キャンプがありますが、雨が降れば水浸し、夏は耐えられない暑さが襲います。全身を蚊に刺されたり、時にはヘビも出るなど、とても厳しい環境です。それでも子どもたちは必死で生きています。© Amnesty International (Photo: Richard Burton)

非正規にギリシャに渡った難民・移民をすべてトルコに送り返す、その代わりトルコにいる正規のシリア難民を同じ数だけヨーロッパで受け入れる、という人間をモノ扱いするEUとトルコの協定が結ばれてから4ヵ月が過ぎた今年7月アムネスティの調査員は、ギリシャのあちこちにある難民キャンプを訪れました。

子どもたちや親たち口から漏れるのは、ギリシャ到着までの苦労、キャンプ暮らしのつらさ、そして学校に行けないことの悲しさでした。

読み書きを忘れてしまった子も

13歳のマヘルはヤジディ教徒の難民です。ヤジディ教徒はイラクの少数派コミュニティ。自称「イスラム国」の襲撃を受け、多くのヤジディ教徒が国を逃れています。

やっとの思いでギリシャにたどり着いたマヘルは調査員に、困難な旅の話をしてくれました。

「本当に怖い思いをしたの。トルコ軍は銃を撃ってくるし、水の中に2時間も浸かっていたことだってあるわ。もう2年も学校に行っていない。学校に行けなくてさびしいの」

2年どころか5年もちゃんとした教育を受けていない子もいます。読み書きを忘れてしまったと、しょんぼりする子も。以前は学ぶことに費やしていた時間とエネルギーを、今は生き延びることに向けるしかないのです。

©Amnesty International (Photo: Richard Burton)

©Amnesty International (Photo: Richard Burton)

クルド系シリア人のディアナは14歳。キャンプで母親と弟と暮らしています。トルコでは3ヵ月間、仕立て仕事をしていたそうです。

「毎日12時間働いて、月にもらえるのは2万円もいかなかった。学校には3年間しか通ってなくて、アラビア語もクルド語も、読めないし書けない」

「大きくなったら医者になりたい」と言うディアナ。でも、その夢は遠のくばかり。父親はドイツで難民として認定されているとのことですが、いつになったら父親の元に行けるのか、不安ばかりが募ります。そもそも一緒に暮らせるようになるのかさえわかりません。

「学ぶことはダイヤモンドのようなもの」

キャンプの暮らしは単調でみじめです。学ぶ場がないことは、その状況に追い打ちをかけます。心を蝕むことすらあります。

サモス島で出会った男性は、娘のことを心配していました。彼女は、ストレスとまともな食事をとっていないことで、急激に痩せてしまったそうです。別のキャンプにいた男の子は、将来に希望が持てず、何のために生きているのかわからない、とつぶやいていました。

キャンプで生まれた子どもを抱きながら、「私たちは人間です。動物のようには生きていけません。感情があるんです」とキャンプ生活のみじめさを嘆く男性。© Amnesty International (Photo: Richard Burton)

キャンプで生まれた子どもを抱きながら、「私たちは人間です。動物のようには生きていけません。感情があるんです」とキャンプ生活のみじめさを嘆く男性。© Amnesty International (Photo: Richard Burton)

多くの親たちが、子どもに教育を受けさせてやれないのが一番気がかりだと言います。片足を失い車いす生活を送るシリア難民の男性も、自分が足を失ったことより、息子たちが6年も学校に行けていないことの方が、つらいと語ります。

「学ぶことはダイヤモンドのようなもの」

ボランティア、NGO、そして難民たち自身も、できる限りのことはやっています。訪問したキャンプではどこでも、教育活動が行われていました。でも、そこには、いろいろな困難が待ち構えています。

「何年も学校に行っていないため、どうしても集中することが苦手です。2分と落ち着いていられません」

そんな話もあちらこちらで耳にします。

ヨーロッパ首脳に書いた手紙

「ここにもう423日もいます。希望もない。教育もない。学校もない」と言うシリアから来た16歳のアブドラは、ヨーロッパの首脳陣宛てに書いたメッセージを見せてくれました。

©Amnesty International (Photo: Richard Burton)

©Amnesty International (Photo: Richard Burton)

そこにはこう書いてありました。

「学校もないテントでただ座っているためにシリアを脱出したのではありません。僕の望みは難しいものではなく、ただ学びたいだけなんです。ここでオランダ語を覚えました。みなさんが望む言語は何でもできるようになります」

メッセージを前に、調査員は返す言葉がありませんでした。「あなたの声はきっと届くはず」と言うのが精一杯。

しかし、この状況はギリシャだけの責任ではありません。ヨーロッパ、いえ、豊かな国々がこれまでにとってきた対応は、どれも失策ばかり。第三国定住制度をもっと積極的に活用する、家族を呼び寄せる、人道ビザや学生ビザを発給するなど、各国は、ギリシャにいる難民を受け入れるためにあらゆる手を尽くすべきです。

今年8月末、ギリシャの国会はある法案を可決しました。今年の9月末までに学校に難民の子どもたちを受け入れるクラスを設け、将来、その子たちがギリシャの教育制度に入っていくための準備段階にするというもの。教師が確保できるか、本当に学校教育についていけるようになるかなど、課題は残りますが、ひとまず希望への第一歩です。

難民問題はヨーロッパだけのものではありません。アジアにもキャンプで暮らす難民がいます。アムネスティ日本では今年の11月と12月の2ヵ月にわたり、インドネシア、ミャンマー、ハイチ、ヨルダンなどで長年難民の緊急支援に取り組んでいる人道活動家を日本に招き、4都市で講演会を開催します。難民の子どもたちのために何ができるか、一緒に考えてみませんか?

(アムネスティ日本)

【イベントの詳細】
■神奈川(2016年11月30日)
■東京(2016年12月3日)
■名古屋(2016年12月4日)
■大阪(2016年12月5日)

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

ギリシャの難民キャンプで暮らす13歳の少女が見た世界

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング