クラフトビールが注目を集めたり、各地でビアフェスが開催されたり、近年ビール人気が高まっています。普通に店で飲める種類も爆発的に増え、もはや「とりあえず生!」と注文してしまうのは恥ずかしい!? 数あるビールの中から美味しいビール選ぶための豆知識を『白熱ビール教室』(星海社)の著者、杉村啓(すぎむら・けい)さんに聞きました。
「水のように飲むビール」はもう古い
――なぜ今、改めてビールブームが起きているのでしょう?
杉村啓さん(以下、杉村):これまでのビールは、「ピルスナー」という喉ごしがいい種類が主流でした。日本の夏は蒸し暑いこともあり、そういう時にごくごく飲めるものが人気を集めていたんです。
そんな中、アメリカで、クラフトビールという大手のビールメーカーが造るビールだけではなく、小さい醸造所で職人が手がけるビールが流行しました。それが世界的に流行し、ここ数年で日本にも伝わり、味わい深いクラフトビールを飲めるお店が次々にオープンしているのです。
ビールは大きく分けて2種類ある
――なるほど。最近では驚くほど種類が豊富ですが、種類が覚えられません……。
杉村:ビールは大きく分けて「エール」と「ラガー」に分類されます。エールは香りが華やかで、ラガーは喉ごしを重視しているのが特徴です。
味わいの違いについて一番わかりやすいのが「色」ですね。エールでもラガーでも、ビールは色が濃ければ味も濃い。麦芽を焙煎した際の色が反映されるので、色が濃いほどに味も重く香ばしくなるんです。「スタウト」や「ポーター」といった黒系ビールも、やはり味が濃く深いですね。
――「ラガー」と「エール」について、詳しく教えてください。
杉村:使われている酵母が違います。ラガーは温度の低いところで活発になる酵母を、エールは温度が高いところで活発になる酵母を使用しています。
ラガーはいわゆる「日本のビール」で、喉ごしがすっきりしたもの。低温で醸造するため設備をまるごと冷房しなければならない分、設備投資がかかる。だから大手メーカーがよく手がけます。一方のエールは、喉ごしより香りや味わいを重視しています。
エール造りはもともとイギリスで始まったのですが、それがアメリカに伝わり、華やかな香りのするアメリカンホップをたくさん使ったものも誕生しています。代表的なのが今人気の「アメリカンIPA」ですね。
――造られる国によっても味わいは違うのでしょうか?
杉村:一番わかりやすいのはベルギービール。ものすごい種類があるのですが、日本で流通しているものは華やかでフルーティなタイプが多いですね。
特に違いがはっきりしているのは、アメリカ、イギリス、ドイツです。アメリカは華やかな味のホップを使っているので香りも華やか、イギリスは比較的どっしりしていてアメリカに比べると落ちついた味わい、ドイツはラガーが中心で、従来の日本のビールがお手本にしたもの。日本ほど高温多湿ではないので、味わいが濃いものもあります。
日本のビールはすっきりしていて喉ごしがいいのが最大の特徴。脂っこいものを食べた時にしつこさを洗い流してくれるんですね。
苦味がイヤなら白系ビールを試してみて
――どんなビールから挑戦したらいいでしょうか?
杉村:ベルギービール系のフルーティなものが飲みやすいと人気ですよ。それから、「ベルジャンホワイト」「ヒューガルデンホワイト」などの白系ビールですね。フルーツを加えた「フルーツビール」も女性の間で人気です。
――やはり、色の淡いものから試してみるのがよさそうですね。
杉村:僕の友人で、味わいがすっきりしている「アサヒスーパードライ」しか飲めないという女性がいました。「ヱビス」や「ザ・プレミアム・モルツ」は苦すぎて飲めない、と。そういう人でもヒューガルデンは美味しいと言って飲んでいたので、やはり色が淡くて苦味が少ないものから始めてみるといいでしょう。
それから、「アメリカンIPA」は華やかな香りと一緒に苦味も味わえると評判です。独特の苦味で口の中が引き締まる感じも心地いいので、ビールの苦味にだいぶ慣れてきたら楽しんでもらいたいですね。
ビールが120%満喫できるお店・ベスト3
――なんだか飲みたくなってきてしまいました。杉村さんおすすめのお店を教えていただけますか?
杉村:僕が衝撃を受けたのは、新橋にある「ブラッセリービアブルヴァード」。ここは日本一「アサヒスーパードライ」を美味しく飲ませてくれるお店といわれていて、「シャープ注ぎ」「サトウ注ぎ」「マツオ注ぎ」という3種の注ぎ方で提供しています。注ぎ方で泡の量を変えたりしているのですが、味わいがまったく違うものになるんですね。もちろんスーパードライ以外のビールもありますが、ビール好きにはたまらないお店でした。
それから、ビール醸造所で直接飲めるところもいくつかあります。京都にある「京都醸造株式会社」では、土日にブリュワリー(ビール醸造所)に併設された試飲スペースでいろいろなビールを楽しむことができますし、名古屋の「ワイマーケットブルーイングキッチン」では、建物の1階で造ったビールを2階で飲めます。全国に次々と面白いお店がオープンしているので各地のお店に行ってみるのも楽しいですよ。
(竹川春菜)