イスラム女性のための水着「ブルキニ」は、なぜ議論になっているの?

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イスラム女性のための水着「ブルキニ」は、なぜ議論になっているの?

「危ないから、そんな格好しちゃダメ」――女性として生きていると、言われがちなことではないだろうか。だが、まったく疑問である。いったいなぜ、危ない目に遭わせる加害者ではなく、危ない目に遭わされる被害者の方が我慢しなければならないのだろう。

そんな議論が今まさに、フランスのビーチで勃発している。

イスラム教徒の女性のための「ブルキニ」が禁止

2016-8-22-burukininaka

今年の夏、フランスの一部地域で、「ブルキニ」と呼ばれる水着が禁止された。ブルキニとは、イスラム教徒の女性のために考案された特別な水着で、女性が公共の場で肌や髪を見せることを禁じるイスラム教の教義を守りながら泳ぐことができるというものだ。

無論、イスラム教徒の女性全員が全身を隠すというわけではない。だが、ブルキニが開発される前は、全身を覆うヴェール「ブルカ」を着用して海に入る人々もいた。着衣水泳のような状態になるため、布の重みで溺れる危険も少なくなかった。マリンスポーツやそれに関わる職業のユニフォームも着られないため、職業選択やスポーツの自由も制限された。

そんな中、オーストラリアに住むデザイナーのアヘダ・ザネッティさんが、イスラム教の装束の上からビーチバレーのユニフォームを着て四苦八苦している姪っ子を見てデザインしたのが、「ブルカ+ビキニ=ブルキニ」の始まりだった。2000年代初頭のことだ。(出典:ワシントンポスト)

だがその直後、2001年、のちに「9.11」として記憶される世界貿易センタービルへのテロが起こった。

ニースのテロ事件の影響も

ザネッティさんの住むオーストラリアでも、イスラム教徒の人々全体を同一視して憎悪を向ける人が出始めた。高まる憎悪は2005年、一部の白人がイスラム教徒(に見える人)に対して「オーストラリアは白人の場所だ、出て行け」などと発言したことから始まったシドニー人種暴動にまで発展した。

このような憎悪の連鎖が、2016年にも繰り返されてしまったのだ。7月14日、南フランスのニースで、暴走トラックによるテロ事件が起こったことは記憶に新しいだろう。現地では花火大会や自転車レースが中止され、銃を持った迷彩服の仏軍兵士が行き来している(出典:朝日新聞)。

そういう背景のもとに、今回のブルキニ禁止令が発令された。「イスラム教徒 vs. 白人」といった単純な対立構図を煽るのはよくないが、そのことを頭に入れた上で、禁止した側の言い分にも耳を傾けてみよう。

フランス側の言い分は

「ブルキニはイスラム過激派の衣装だ」――ブルキニ禁止を決めたカンヌ市長、ダヴィド・リスナール氏はこう語った。十字架やキッパ(ユダヤ教徒の民族衣装)は禁止しないとしたうえで、今回の措置は「テロの危機に晒されている中の緊急措置だった」と言う(出典:Europe 1)。

また、フランス首相マニュエル・ヴァルス氏も、今回の禁止令に賛成した上で、「(ブルキニは)女性に対する抑圧の象徴」と発言している(出典:Le Figaro)。

フランスは、フランス革命によって国民みずから自由・平等・博愛の共和制を打ち立てた国である。女性にだけ肌を隠すよう強要することは、「そうでもしなければ女性は性的に不道徳な行いをなすだろうという女性蔑視に基づくもの」であり、「共和国の精神に反する」というのだ。

確かにフランスは、ライシテと呼ばれる、日本で例えるなら政教分離に近いような独自の理念を国の基幹に据えている。また、女性の権利運動も盛んであり、2012年からは厚生省や国防省に並ぶ「女性の権利省」まで新設されている。

さて、そんな中で、当の“女性”はどう思っているのだろうか?

ブルキニを着たい女性の自由

“女性”といえどもさまざまだが、今回のブルキニ禁止令を受けて、ひとりのイスラム教徒女性であるレモナ・アリさんは英国の新聞ガーディアンにこんなコラムを寄せている。

「ブルキニを着る5つの理由――それは、フランス人をイラつかせるためだけじゃなくて」

ムッシュー、平等(エガリテ)とは多様性(ディヴェルシテ)についてのことでもあるんです。フランス語を交えながら、アリさんはユーモアたっぷりに訴えた。ブルキニを着る自由を――そして、日焼け止めや脱毛ワックスの節約を。

そんなふうに書いたアリさんのコラムを読みながら、考えている。ブルキニを「着せられているものだ」と決めつけられることも、「着るな」と禁じられることも、ブルキニを着たい人の意思を無視する、自由の精神に反したものではないのだろうか、と。

フランス・カンヌ市でのブルキニ禁止令は、今後動きがなければ、2016年8月31日まで続く見込みだ。

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