20代ならすぐに消えていたやけどやすり傷の痕がなかなか治らない――年齢を重ねると実感する“大人肌”の悩み。今年30歳になる筆者も、春先に虫に刺された痕が、ふくらはぎにポッと残っているのが気になっていました。
そこで目についたのが、小林製薬が展開する「アットノン」シリーズ。できてしまった傷あとを目立たなくしていくというアイデア商品。なんと、2011年3月に発売されて累計出荷額35億円を超える大ヒットを記録しているらしい……。特に気になるのが、傷あとを隠しながら薄くしていく「コンシーラータイプ」。筆者のふくらはぎも、本当にちゃんと“見せられる足”になるのでしょうか?
露出が増える夏の救世主!
ということで、さっそくコンシーラータイプを使用してみました!
チューブから出すとしっかりめのテクスチャですが、ほどよい柔らかさもあるので、すっと肌に馴染みます。使い方は、気になる部分に塗ってからトントンと軽く叩くだけ。いつできたのかさえ思い出せない古い傷あとも自然に隠すことができました。また、さらりとしたつけ心地なので、べたつきを感じることもなく、乾くのを待つ必要もありません。
使用していて特に嬉しかったのは、日焼けした部分にもすっと馴染んでくれること。アウトドアの後に残ってしまった虫刺され痕にもうってつけです。
使い心地もよく、あきらめていた傷あともコンシーラー効果で10秒ほどで見えなくなり、肌が生まれ変わる新陳代謝の28日周期を意識して毎日使えば、徐々に作用して薄くなっていく。女性にうれしい製品ですが、いったいなぜこんなことが可能なのでしょうか? 小林製薬のブランドマネージャー・池本晃一(いけもと・こういち)さんに開発までの道のりを聞きました。
ある女性研究員の悩みがきっかけ
———アットノンは、どのようにして生まれた製品なのでしょうか?
池本晃一(以下、池本):弊社の女性社員の実体験がもとになっています。ある時、その社員が自転車に乗っていて転び、傷を作ってしまったんです。傷自体はすぐに治ったけれど、傷あとはばっちり残ってしまった。それで、「傷あともどうにか治せないか」と考え始めたのがきっかけです。弊社では定期的にアイデア会議をやっていて、生活の中で困っていることはないか探しているんです。
医療現場で使われている成分を配合
——なるほど。傷あとを治せるメカニズムを教えてください。
池本:有効成分は「ヘパリン類似物質」という成分です。アットノン全製品に入っているものなのですが、主に血行促進、抗炎症、水分保持という肌のターンオーバーを助ける3つの作用があります。血液の循環をよくして新陳代謝を促進し、傷あとの奥にある皮膚組織の再生を助けるという仕組みです。子どもの頃の古傷は難しいですが、1、2年前の傷あとなら効果が期待できます。
実は「ヘパリン」はこれまで医療現場ではおなじみ物質で、手術の痕を治す際などにも用いられていたもので、とびきり新しい成分というわけではないんです。しかしながら、今まで「自分で傷あとをケアする」という発想はなかったと思いますし、それをドラッグストアで気軽に買えるようにしたのがアットノンなんです。
「すぐに消したい」というニーズに応えたい
——発売後の反響はいかがでしたか?
池本:すごくよかったです。ドラッグストアのバイヤーの方々からも「ニーズがある製品だ」と売り出しにご協力いただいて、その年のヒット製品になりました。使用された方からの反響も大きく、つい先日も、「ずっと傷あとに悩んでいたけれど、今では好きな服が着られます」というお手紙をいただきました。
——今年新たに発売された「コンシーラータイプ」の開発のきっかけを教えてください。
池本:「アットノン」が発売されて丸5年経ちますが、だんだんお客様の声が蓄積されてきて、不満点も見えてきました。肌のターンオーバーには1、2ヵ月かかるため、どうしても効果を実感するまで長期にわたり使い続けなくはいけないのですが、「そんなに待てない」と。
また、一般女性にヒアリングしたところ、「傷あとはどうしていますか?」という問いに「コンシーラーや絆創膏で隠す」「長袖を着る」と答える方が多かった。傷あとをすぐに隠したいというニーズに応えるべく、コンシーラータイプの開発がスタートしたんです。
自宅&外出時のダブルケアができるように
——これまでの「アットノン」とはどういうところが違うのですか?
池本:効き目は同じですが、使用するシーンが異なります。既存のジェル、クリームタイプはお風呂あがりのケアとして、コンシーラータイプは外出時に使っていただくイメージで、特に洋服で隠せない部分にある傷あとにオススメです。
8割の日本人の肌に合う色味が生まれるまで
——これからの季節に役立ちそう! 傷あとは種類によって「赤」「茶色」「青」など色がさまざまですが、どんなものでも隠れるのでしょうか?
池本:そこは非常にこだわった点です。どんな色の傷あとも隠せて、さらにユーザーの肌の色を問わずなじむ色味にするため、調整を重ねました。顔の色は人によって違いますが、カラダの色って実は大差ないんです。結果的に、日本人の8割に合う色を作ることに成功しました。
——8割! それはすごいですね。
池本:でも、実際には結構苦労しました。コンシーラーの色は粉を混ぜ合わせて生み出すのですが、単純に混ぜるだけでは色ムラができてしまうんです。製品化のためには、毎回安定して同じ色を出せなくてはいけません。そこがとにかく大変でした。粉の粒子は、もともと大きさがバラバラなので、それを均等にして混ぜ合わせることでようやく解決したんです。
——化粧品のコンシーラーとは成分が違うのですか?
池本:はい。医薬品に使える添加物の種類は化粧品の10分の1ほどなので、その制約の中で色がしっかり出せて、水で落とせるものを作りました。服についてしまっても、洗濯すればちゃんと落ちます。使い方としては、朝出かける前に塗っていただけば、あとは汗をかいた時などに塗り直すだけで十分です。
普通の化粧品とは異なる「スキンケア医薬品」
——今後もニーズは増えていきそうですね。
池本:そうですね。「ヘパリン」の可能性はまだまだ広がると考えているので、研究を重ねていきたいです。
「アットノン」もそうですが、弊社では毎日のスキンケアで補いきれないものを医薬品の力で改善する「スキンケア医薬品」というジャンルを提唱しています。今後もスキンケアから一歩踏み込んで、美しく健やかな肌を作るお手伝いをしていきたいですね。
■関連リンク
小林製薬 アットノン公式ページ
(竹川春菜)