ウートピ短歌―言葉をうたえば、世界が変わる 6月分・結果発表(講師・加藤千恵さん)

【ウートピ短歌・結果発表】降る雨が記憶を流すこともなくむしろ記憶を封じこめていく

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【ウートピ短歌・結果発表】降る雨が記憶を流すこともなくむしろ記憶を封じこめていく

ウートピ短歌、2回目の結果発表

ウートピ読者のみなさま、こんにちは。
加藤千恵です。
好きなナッツは、ココナッツです。
この時期は限定商品がたくさん出るので、片っ端から買っては試しています……。

連載2回目ですが、近況という名の宣伝をさせていただくと、先月、『ラジオラジオラジオ!』(河出書房新社)という単行本を出しました。表題作は、地方都市に住む女子高校生が主人公の中篇小説です。2001年が舞台となっています。どこか切なくなったり苦しくなったりする物語かもしれません。他にも「青と赤の物語」という短篇小説が収録されています。

そして今月、『いつか終わる曲』(祥伝社)という文庫を出します。実際の曲(主にJ-POP)を、異なる三人の立場から聴いている、という設定のショートストーリーが、いくつも収録されています。Webで連載していたものなのですが、書き下ろしもありますので、ぜひ。

どちらもよろしくお願いします。思いのほか告知が長くなってすみません!

短歌は「見え方」も表現のうちです

さて、この連載では、みなさまから短歌を募集していますが、2回目の「ひとりの梅雨」というテーマに対しても、たくさんの投稿いただきました。ありがとうございます!

みなさん、とてもレベルが高くて、読んでいて、思わず共感したり、心動かされたりするものが多いのですが、何人かの方に一点注意を。

短歌の中で、ひとまとまりになっている一句ごとにスペースを入れている作品があるのですが、基本、スペースは不要です。あったほうが読みやすくなったり、意味がとおりやすくなったりする時にだけ、入れていただければと思います。

見え方(字面)も作品の一部ですので、ぜひいろいろこだわってみてくださいね。

「ひとりの梅雨」の“おもしろさ”や“せつなさ”

それでは、今月も投稿作品の一部をご紹介させていただきます。

六月の教えていない誕生日特にケーキが欲しくもなくて(小川窓子)
☆教えていない誕生日、という言い回しがとてもよく効いてますね。誕生日をそういうふうにとらえたことがなかったので、発見がありました。

ハンカチが乾かないからいまだけは本当のこと言わないでくれ(辻原僚)
☆下三句がとても魅力的な歌だなと思いました。嘘をついてくれ、というよりも、切実さが含まれている感じがします。

雨音で目覚めた夜更け 既読スルー確認したらまた目を閉じる(くまこ)
☆LINEなどでいまやすっかりおなじみの、既読スルーという新しい言葉が、派手でなくすっと馴染んでいる情景であり短歌だと思いました。

あのひとのすべてのような色をして窓のむこうはこんなにも降る(嫉妬林檎)
☆「あのひと」が一体どんな人であるのか、想像をつい膨らませてしまいます。

見られたくなくて手前にかたむけた傘は何からわたしを守る(渡辺嘉子)
☆傘が雨以外のものにも、防具として働くことがあるんだな、と。腑に落ちる情景だと思いました。

恋人や家族をぼくが作れないせいで仕事の無い洗濯機(根暗腐男子)
☆一人暮らしだと、回されることが少ないのを指しているのでしょうか。なんにしても、おもしろい言い回しですね。

転寝の中で私があなたから指環をもらう間も降っていた(三崎利佳)
☆ハッと夢から覚めた女性の姿から、徐々にズームアウトしていくような、そういう映像で浮かびました。

あの人を好きになりそうと思った 貸してもらった傘をたたんで(ようかん)
☆「あの人」を目の前にしたときではなく、一人の瞬間にそれを思っているのが、おもしろいし、逆にリアルな気がしました。

タクシーを使えば会いにいけるけど靴濡れちゃうしもう眠たいし(倉田ぐら)
☆後半二句の畳みかけが、この歌には書かれていない事情(相手への愛情の希薄さ)を、あらわしているかのようですね。

信じられますか今この屋根を打つ雨音を私だけが聞いてる(ナタカ)
☆内容自体は変わったことじゃない、というかよくある情景のはずなのに、インパクトある出だしによって、特別なことにも感じられますね。おもしろいです。

今回もまた、紹介できないものが多く、申し訳ない気持ちなのですが、「選ばない=好きじゃない、おもしろくない」というわけではまったくないので、引きつづきの投稿、心よりお待ちしています!

もちろん紹介させていただいた方も、また新たな短歌をぜひ。この連載を支えていくのは、画面の前のあなたたちです!(←とある番組風に)

そして最後に、テーマに沿った、わたしの自作短歌を一首発表させていただきます。

それでは!

降る雨が記憶を流すこともなくむしろ記憶を封じこめていく(加藤千恵)

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