愛犬であるパグの「次郎」に服を作ったことをきっかけに始めたパグ・はなペチャ犬グッズ専門店「はなペチャ家」。店主の山崎亜紀子(やまざき・あきこ)さんはアパレルショップの仕事と両立しながら続けていたものの、今年5月にショップが閉店。それを機に「はなペチャ家」を副業から本業にシフトすることに。趣味で終わらせない、好きなことをビジネスにつなげる秘訣を聞きました。
フルタイムの本業との両立はきつい?
――「はなペチャ家」は最初、副業として始められたんですよね?
山崎亜紀子さん(以下、山崎):そうです。実は、今年の5月1日までアパレルの仕事をやっていたんです。「はなペチャ家」の立ち上げ準備をしていた頃は、平日は朝9時から夕方5時まで週5回アパレルショップの仕事をして、仕事帰りに生地を見に行ったり、自宅で型紙を作ったりして勉強していました。
――よく体力が続きましたね!
山崎:やはりフルタイムでの両立はきつかったので、途中で出勤回数を週2、3回に減らしましたね。
――なぜパグ・グッズを作ろうと思ったのですか?
山崎:私も夫もパグが大好きで、2012年4月末に愛犬・次郎を飼い始めたことがきっかけでした。パグって首が太くて胴が短いという特殊な体形をしていて、ペットショップで売っている小型犬の服で合うものがなかったんです。そうかといって中型犬の服は大きすぎる。
デザインもなかなか気に入るものがなかったので、それだったら自分で作るしかない! と思いました。
やるからにはちゃんと稼げる仕事にしたい
――初めから「これを仕事にしよう」と思っていたのですか?
山崎:そうですね。もともとは自分で何か仕事をしたいという思いがありました。ペットは家族の一員で大切にされている時代ですし、ビジネスとして伸びていくと思いましたね。この仕事が成功すれば、家で次郎と楽しく生活しながら仕事ができるかなと考えたのが大きいですね。それが2013年1月頃でしたが、実はその時点では裁縫に関してはまったくの素人で、自宅にミシンもない状態でした(笑)。
――それもすごいですね! その後は?
山崎:まずは縫製の勉強をしようと、週末は縫製を教えてくれる先生のところに1年くらい通い、基礎から学びました。2013年12月に「はなペチャ家」をプレオープンして、2014年7月から本格始動したのですが、SNSや近所の人の口コミで広がり、パグ好きの芸能人の方がペットにうちの唐草模様のハーネスをつけてテレビに出てくださったこともあり、すぐに注文が入るようになりました。以来ずっと4ヵ月待ちの状態でした。
今は縫い子さん4人にお願いしています。また私が5月にアパレルショップを退職したことで、「はなペチャ家」の仕事に専念できるようになり、納期を3ヵ月待ちに縮められました。
――アパレルの収入が減っても大丈夫だったんですか?
山崎:アパレルに出勤している時間を製作に当てられるようになったので大丈夫ですね。そういう意味でも副業をしていたメリットは大きいですよね。私の場合、夫が働いてくれているのでこれで失敗しても困ることがないから、どんどん先に進んでいけたと思うのです。「はなペチャ家」の仕事を始めるにあたり、初期投資はあまりかけていないので負担はなかったです。
他とどう差別化できるかがカギ
――「はなペチャ家」がここまで支持されるようになった理由は?
山崎:どう差別化するか、オリジナリティを出すかですね。一点一点、ワンちゃんのサイズを聞いて調整するセミオーダーにしているのも、その一つ。また、市販されている散歩用のハーネスの生地は無地など無難なものが多かったので、唐草模様の生地や海外から輸入したパグ柄の生地でグッズを作るなどして、パグ好きにはたまらないアイテムを提供できたことで、ファンの方に愛されているのだと思います。
私はロックバンドが大好きなのですが、バンドTシャツを犬用にリメイクしたりもしています。マニア向けになってしまいますが、こういう自分の得意な部分、こだわれる部分が出せることはすごく大事だと思っています。
――アイテムはご自身で作っているんですか?
山崎:デザインから生地の買い付け、縫製まで私ひとりでやっています。「はなペチャ家」の一番の売れ筋はハーネスとリードです。ハーネスは小型犬のみですべての犬種OKです。洋服の種類は、タンクトップ、ワンピース、Tシャツ、バルーンワンピなど。今の季節だと浴衣も作っています。夏祭りや花火大会に着せたいというお客さんが多いので、納期を早めて作るようにしています。
趣味を超えて仕事にするには
――副業が趣味で終わる人と本当に仕事(本業)につなげられる人との違いは?
山崎:「はなペチャ家」を始める時から、私は仕事として考えていたので趣味で終わることは頭になかったですね(笑)。明確な目標を立てて、それを実行するための努力はしています。
――SNSを使ってファンを増やすにはどうしたらいいですか?
山崎:私は、わりと人を取り込むのが得意なんです(笑)。「はなペチャ家」を立ち上げるまでに、犬を飼っている仲間たちに、試作品を見てもらったり、アンケートをとらせてもらったり、あえて「立ち上げ前」を見てもらっていましたね。
お客さんの大切なワンちゃんのアイテムを製作させていただくので、何か困っていることがあれば何度でもメッセで話します。お客さん一人ひとりとお友達になって、気軽に話せたり頼めたりする関係性を築くようにしています。「みなさんの応援があって、『はなペチャ家』が存在する」という感謝の気持ちを伝えていくことがすごく大切だと思います。
――ファン心理に詳しいですね!
山崎:そうですね。アパレルをやる前に10年ほど音楽業界にいて、バンドのマネジメントやファンクラブの運営もやっていたので、ファン心理はとてもよくわかります。そこで培ったマネジメント力を活かして、先々のビジョンまで明確にして、今やることは何かを考え、実行すること。それをやってきたから今があると思います。
――これから本格始動となりますが、今後の計画は?
山崎:まずは、今年の8月9日(パ・グの日)に法人化して、「はなペチャ家」の認知度を上げ、ブランディングしていきたいです。海外のお客さんも少しずつ増えてきているので、本格的に海外展開をしたいですね。ワンちゃんにとって、負担のない商品をこれからも製作していきます!
(間野由利子)
関連リンク;HANAPECHA YA(はなペチャ家)