最近は結婚後もパートナーの給料や貯蓄がいくらあるのか知らないというケースが増えてきているそう。思いがけず相手がお金を持っていた!という場合はラッキーですが、実は多額の借金があった……なんてドラマのような話も本当にあるようです。アディーレ法律事務所の篠田恵里香(しのだ・えりか)先生によると、特に男性は借金を抱えていることを結婚後も隠し続ける傾向があるのだとか。結婚も借金もしちゃったものはしょうがない! せめてこれ以上負債が増えないように、法律の知識で身を守りましょう。
〈今回のポイント〉
【1】夫の借金が発覚! 離婚できる?
【2】ダメダメな夫に借金を作らせない方法
【3】夫が作った借金を妻は払わなきゃいけないの?
エリカちゃん(永遠の30歳)
「六法全書」の妖精。本名はオピストコエリカウディア・スカルジュンスキィ。辛口で正論をバシバシ言うが、困っている人は放っておけない姉さんキャラ。例えれば、リカちゃん人形サイズの真木よう子。
結婚後に夫の借金が発覚……
前回、不慮の事故から婚姻届を出してしまった私。デキ婚が決まった親友ララコとの台湾旅行中の今も、本当にブルー。愛のない結婚生活なんてまっぴら!と即離婚を切り出したところ、相手がなかなか承諾してくれないし。しかも、いろいろ問い詰めたらバツ2×借金持ちということが発覚して発狂寸前……!
「リリちゃん、不慮の事故って本気で言ってるの?(苦笑) 酔っ払って記憶飛ばして自分で婚姻届出しちゃったんだから、完全に自業自得でしょ?」
「ちょ、ちょっとエリカちゃん! 人の頭の中読むのやめて!」
「あなたの「自分は悪くない」みたいな顔つき、本当に腹立つわね〜。自分のだらしなさと頭の悪さで招いた結果でしょ! そんな怒り散らしたって何にもならないわ」
「うう…。でも相手に借金がいっぱいあったことも、バツ2だったことも知らなかったんだもん」
「会って2回目の男と籍入れたんだから知らないことばかりなのはどう考えても当たり前でしょ! いい加減付き合いきれないわね……帰ろうかしら……」
「待って! エリカちゃん!! 見捨てないで!!!」
「はあ〜〜〜」
「ねえ、結婚した相手に借金があった場合って、すぐ離婚できないのかな……?」
「う〜ん。単に借金があったってことは離婚原因にならないのよね〜。離婚原因として認められるのって「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められるものなの。だから夫婦2人で頑張って返していける金額の借金や、夫婦生活のための借金だったら原則認められないし、逆にその借金のせいでケンカが絶えなくって、夫婦関係が破綻してるってことなら認められる可能性があるわ」
「夫婦関係の破綻ってとこがポイントなんだね? 私たちも破綻しまくってるよ!」
クレジットカードに消費者金融……ダメ夫に借金を作らせない!
「ただあなたの夫(笑)、ずいぶん離婚を渋ってるみたいじゃない?」
「……それなんだけどさ。冷静になって考えてみると、会って2回目に酔っ払って籍を入れるなんて、別に愛があるとかそういうわけじゃないじゃん」
「リリちゃんも、さすがにそれはわかってたのね」
「う、うるさいな〜! ともかくそれなのにこんなに離婚をイヤがるなんて、何か魂胆があるんじゃないかな。もしかして私に自分の借金を半分背負わせようとしてるんじゃ……!」
「確かに夫婦の生活のために必要な借金だったら、負担せねばならない可能性はあるわね」
「やっぱり!! 私がこうやってる間に勝手にいろいろ買われる可能性だってあるしやっぱり不安だよ! ねえ、アイツが借金できないようにする方法はないの?」
「ないこともないわ。申告して個人信用情報機関に登録しちゃうって方法があるわねよ。これは日本貸金業協会ってところが運用している貸付自粛制度と言われるものね」
「これは他人でも申請できるの?」
「親族のうち一定の範囲の人なら申告できるわ。これはつまりブラックリストに載せちゃうってことだから、これ以降その人は原則として、クレジットカードを作ったり、消費者金融で借金したりできなくなるわね」
「なるほど。でも、今アイツが使ってるクレジットカードはそのまま使い続けられるよね? それは何とかできないの?」
「リリちゃんこんな時ばっかり必死ね〜! 残念だけどそれは無理よ。クレジットカードの利用停止は本人でないと受け付けてもらえないの。もうこれは説得するしかないわね」
「説得……アイツ、ムダにプライド高そうだし、そんなことできる気がしないよ……」
「そうねぇ。いきなりクレジットカード止めて!って本人に言うのが難しい場合は、手始めに利用可能額の枠を小さくしてもらうっていうのも方法よ」
「なるほど! 確かにハードルは低いかも」
「あとは、もう強硬手段。カード自体を取り上げちゃうしかないわね!」
「最終手段だね……。そもそも夫にいくら借金があるかって、私が調べることってできるのかな?」
「基本的には難しいわ。個人信用情報機関に問い合わせて聞くのはまず無理ね。でも、カードを使っていたり借金をしたりしていれば当然自宅に明細や督促のハガキが来るはずだから、開封せずとも相手がどんなところで借りているかくらいはわかると思うわ」
「ふむふむ」
「それに相手が通帳を見せてくれるなら、履歴に金融機関やカード会社の名前と金額が記載されていたりするからそれも参考になるかもしれないわね」
夫の借金、そもそも妻に支払い義務はある?
「不安になってきちゃったんだけど、無事離婚できたとして、すでにあるアイツの借金を折半するようなことになったりする……?」
「その心配はないわ! さっきも言ったように借金が、夫婦生活のための借金=日常家事債務と言われるものだったら夫婦が連帯して支払う義務があるけれど、夫が個人的に作った借金は基本的に妻が負う必要はないわ」
「ほっ」
「ローンの支払いなど夫婦の合意のもと折半する場合でも、あくまでも借り入れの名義は夫。保証人などになっていない限り、借入先との関係では名義人のみが返済義務を負うの。妻はそれを夫に対して半分負担するポジションってわけ」
「なるほど。あくまで夫の借金ってことなんだ」
「これは妖精の勘だけど、あなたの夫、借金依存症ね」
「え!?」
「お金を借りることに麻痺してしまっていて、借りたお金を自分のもののように思ってしまったりしている状態は一番危険なの。借金に依存していたり、自転車操業的に借金を繰り返している人は、自分が返済できなくなるということが意外にわかっていなかったりするのよ」
「……そういう場合どうしたらいいの?」
「カウンセリングや精神科での治療はもちろんだけれど、借金の状況を弁護士に相談するというのも大切よ。第三者から「この状況だとあなた絶対に返していけなくなります」って長期の見通しを見せられて初めてハッとするって人もいるわ。本人はどれだけ借金があって、どれだけ利息を払っているかわかっていないことが多いの」
「そうなんだ……。やっぱりもう一度ちゃんと話してみなきゃだね……」
わかってはいたけれど気が重い……。そんな私の心を見透かしたのか、エリカちゃんが「ふん」っと鼻を鳴らした。自分のバカさ加減にうんざりするけど、ともかく旅の間は身重のララコに心配かけないようにしなきゃ! この件は帰国してからが勝負だ(ため息)。
【1】 夫の借金が発覚! 離婚できる?
借金がある、というだけでは離婚原因にはならないの! ポイントになるのは「婚姻を継続しがたい重大な事由」かどうかということ。借金のせいで夫婦関係が破綻しているという場合は認められる可能性があるわね。
【2】 ダメダメな夫に借金を作らせない方法
申告して個人信用情報機関に登録してもらう、貸付自粛制度を利用すれば可能よ! 親族のうち一定の範囲の人なら申告できるわ。
【3】 夫が作った借金を妻は払わなきゃいけないの?
基本的に負う必要なし! ただ、夫婦間の生活のための借金は負担せねばならない可能性があるわ。
リリコ(32歳)
小さなデザイン会社に勤める中堅デザイナー。基本的に他力本願。趣味はネイル、お酒(ワインと焼酎)、サイゼのお気に入りメニューは「ミラノ風ドリア」。例えれば、だらしない石原さとみ。