日本伝統の”薬草”がスタイリッシュによみがえる 毎日飲むだけのセルフケア

緑茶、抹茶、紅茶、中国茶、ハーブティー、ルイボスティー……。女性の間でも趣味としてお茶に凝る人が増えていますが、日本の「伝統茶」を知っている人は少ないのでは? 実は日本全国には、古くからその土地に根付いている効能あるお茶がたくさん存在します。
国産の薬草を使ったお茶を通して、新しい暮らしの形を提案したい。その思いから日本の伝統茶ブランド「{tabel}(タベル)」を創業した新田理恵(にった・りえ)さんに、知られざる伝統茶の魅力について聞きました。
女性に嬉しい「伝統茶」の魅力
――{tabel}で扱っている「伝統茶」とは、どんなものなのでしょうか?
新田理恵さん(以下、新田):日本全国には300種類を超える薬草・野草があります。それらをもう一度生活に取り入れたくて、いろいろと学び始めました。
実は韓国にも「伝統茶」と呼ばれるものがあります。チャノキ以外の地場の植物から作られたお茶をそう呼んでいるのですが、日本にも同じようなものがあるので、「伝統茶」と呼ぶことにしました。
――どのような特徴があるのでしょうか?
新田:{tabel}では今のところ4種類のお茶を取り扱っています。特徴はすべて異なりますが、どれも女性におすすめです。男性と同じようにバリバリ働いて体を酷使している方や、妊活、子育てを頑張っている方には特に飲んでいただきたいですね。
・「当帰」…貧血や冷えなど女性特有の悩みにおすすめ。温めて飲めば、冬でも体がぽかぽかします。
・「月桃」…ポリフェノールの含有量が赤ワインの約33倍もあるので、いつまでも元気な体を維持したいという方に。
・「はすの葉」…血流をよくしおなかの調子を整えてくれるので、表情が明るくなります。楊貴妃も愛飲していたと言われる美容茶。
・「カキドオシとハトムギ」…水分のめぐりをよくしてくれるので、体がすっきり。これからの季節には特におすすめです。――パッケージも素敵です。「薬草」という古くさい雰囲気は皆無ですね。
新田:ぱっと見た時にわくわくするデザインを心がけました。水分のめぐりにアプローチしてくれるものはブルー、体が温まるものはピンクなど、カラーリングはそれぞれのお茶の特徴をイメージしています。
「おいしい」ものは、体が必要としているもの
新田:塩や砂糖といった無性に欲しくなる味を除いた時に、人が「おいしい」と感じるものは、実は体が求めているものである場合が多いんです。「薬草=苦い」というイメージをなくしたくて味にも気を使ってセレクトしていますが、面白いことにみなさん直感的に自分が必要としているものを選んでいかれます。素直に「この味、いいな」と感じたものを飲めば、体にも効くんです。
――おすすめの飲み方はありますか?
新田:お湯出しが手軽なのでおすすめです。あと、薬草茶は昔から煎じて飲まれてきたので、一度試していただくと違いが実感できると思います。「煎じる」とは弱火でだいたい半量になるまで(1人分で約20〜30分)詰めること。例えば「月桃」なら、角がとれてまろやかな味わいになります。普通のお湯出しにするより、効能も強くなるので、その意味でもいい方法ですね。
――錫(すず)を使った茶器は涼しげな印象。これからの季節に合いそうですね。
新田:錫は水の雑味をとってまろやかにしてくれるんです。冷茶を錫のコップにいれたり、錫のマドラーでかき混ぜたりするといいですよ。
新田:それから、京都で作っている麻のお茶っ葉袋もおすすめです。昔はこのように各家庭で麻布を縫って「お茶袋」を作るのが主流だったんですよ。何度も使い込むうちに、袋が自分の飲んでいるお茶の色に染まるんです。今後もこんなふうに“長く愛用できるもの”を提案していきたいですね。
体にじっくり向き合える国産素材
――ブランドを始めたきっかけを教えてください。
新田:私は管理栄養士の資格を持っていて、大学でも栄養学を専攻していました。学んでいくうちに、一人ひとりの体に合うものが何かを突き詰めて考えたいと思うようになり、たどりついたのが「薬膳」でした。薬膳は食物の旬や効能を活かして体のバランスを保つもの。私自身、薬膳のおかげで体質がいい方に変わったので、広めたいと思いました。ところが、国産の薬膳の材料がなかなか手に入らないことがわかったんです。
日本の場合、薬膳に使用されるパワーフードの自給率はわずか12%ほど。外国産のものが悪いとは思わないけれど、栽培方法などが追跡できないために漠然とした不安を抱えることになってしまいます。体によいことがしたいのに、それでは実現が難しい。国内産のものをなんとか調達できないかと考えたら、当時気に入って飲んでいた「はすの葉茶」が頭に浮かんだんです。九州に在来種の蓮を無農薬で栽培している方がいたので、さっそくその方に会いに行きました。
お茶で地域も元気に
――お茶はどうやって作っているのですか?
新田:現在取り扱っているのは西日本のものが多いです。2種類は九州で、あとは沖縄県・石垣島と奈良県。それぞれ、薬草の栽培場所の近所で加工とパッケージングまでやるようにしています。
なぜパッケージングまで現地でやるかというと、地方が抱えている、過疎化や仕事が少ないという問題を改善したいから。茶葉は軽いので、高齢者や女性が作業するのに最適なんです。全国には自分の街を活性化したいと考えている方がたくさんいるので、協力して活動しています。そういった方々がさらに別の方を紹介してくれてご縁がつながることも多いですね。
――お茶で地方も元気にする。多くの可能性を秘めているんですね。
新田:そうですね。例えば「当帰」という薬草は世界中で作られていて、日本でも「北海当帰」や「深山当帰」などがあります。{tabel}で扱っているのは奈良県で作られる「大和当帰」という品種なのですが、これは他に比べて有効成分の量が多いという研究結果が出ました。
海が近いところなら根からミネラルを多く取り込み、日照時間が長いところならたくさん陽光を浴びて育ちます。同じ薬草でも、生産地の特性によって効能の強さや味に違いがあらわれます。地域ならではの魅力やパワーを込めて届けられる点も伝統茶の魅力のひとつです。
「薬草のある暮らし」を末永く
――「伝統茶」は、現代の暮らしを支えてくれるものなのですね。
新田:薬草は元来その土地にある自然資源だから、人の体にも環境にも無理がないんです。病気になる前に、健康をつくるお手伝いができるのも嬉しい。毎日手軽に飲めますし、ゆっくりとお茶を淹れる時間、深い味わいを楽しむ時間など、お金には換算できない“豊かさ”をもたらしてくれます。「薬草のある暮らし」が今後100年、200年と続いていけばいいなと思います。
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(竹川春菜)