副業OKの会社はわずか3.8%
「副業は夜にこっそりやるもの」
そのイメージから「副業をする人」を指す「ムーン・ライター」という言葉が生まれるほど、「副業」=「後ろめたいこと」のように語られていました。
しかし今年4月、その「副業」をめぐる状況が変化しつつあることがわかる報道が流れました。大手製薬メーカーの「ロート製薬」が国内の正社員1500人を対象に「副業OK」の方針を発表したのです。これまでにも一部のベンチャー企業などで、「副業OK」だけでなく「専業禁止」といったユニークな取り組みをする会社はありましたが、大手もこれを取り入れたとなると「副業」をめぐる環境が今後変わっていく予感がしませんか?
2015年にまとめられた「兼業・副業に係る取組み実態調査」の報告書によれば、調査対象の4513社のうち、「副業制度を容認している」と回答したのは、全体のわずか3.8%。実はこの3.8%のほとんどが以前から副業を禁止していなかったか、黙認していた企業。
30代は「副業解禁」を望んでいる
とはいえ一方では、従来は禁止していたものの、導入について検討し、新たに容認した企業もわずかながら存在したそうです。「副業」に対する考え方には、まだ企業ごとに大きな差があるようです。
しかしながら、今年4月に株式会社もしもが行った調査によると、「企業や政府による副業促進」の動きについて、賛成と答えたのは全体の73%。特に30〜39歳の層では「副業」に対する関心が高いのか、81%も賛成の声が上がっています。働く人々からの「副業解禁」への要望は非常に強いのです。
では実際に副業をしている、または、したことがあるという人々はどのくらい存在するのでしょうか?
女性の4人に1人が副業中
2015年から2016年かけてエン・ジャパン株式会社が4233名のユーザーを対象に行った調査によると、「ダブルワーク経験者」は57%。5年前の2010年に39%であったところから、右肩上がりに上昇し、この調査で過去最大となっています。また、この57%のうち「ダブルワーク中」と答えたのは17%。約5人にひとりが副業をしていることになります。
さらに女性に限るとその割合はもう少し上がります。2011年に行われた別の調査によれば、正社員のうち「副業をしている」と答えた割合は男性が17.4%に対し、女性は27.9%。女性の約4人にひとりが副業をしている計算になります。
なぜ、女性のほうが副業に対する意識が高いのか。その理由のひとつとして収入の格差が考えられます。
副収入の使い道は?
同じ調査によれば、男性の49.1%が副収入の使い道として「娯楽」と回答しているのに対し、女性はそれよりも少ない37.8%。一方、「生活費」と答えた男性は全体の22.6%ですが、女性は10%ほど多い32.4%となっています。
先ほどのエン・ジャパンの調査によれば、副業を始めた理由として最も多いのは「副収入が必要なため」。実際に、男女の収入を比べてみると、30代男性の平均が488万円なのに対し、女性は384万円(DODAによる2014〜2015年の調査結果)。
男性よりも女性のほうが100万円ほど少ないことから、「副収入が必要」という切実さは女性のほうが強く、それが女性の副業への関心を高めているとも考えられます。
では「副業」をしている人はどのくらい働き、どのくらい稼いでいるのでしょう。
月収5万以下が8割弱
エン・ジャパンの調査によればダブルワークに求める仕事期間で最多の回答は「10日以内の単発」で60%。時間帯では「土日の昼間」が最も多い44%となっています。このことから、多くの人が「平日はいつも通り会社の業務に専念し、土日の空いた時間で仕事を」という働き方を望んでいることがわかります。
また、前出のMMDの調査によると副業での月収は「2万1円から5万円以内」が18.5%でもっとも多く、次に「1001円から5000円以内」の13.8%が続きます。副業と一口に言っても、「株式投資」や「アフィリエイト」などのインターネットを利用するものから飲食業、さらにはお店を覆面調査する「ミステリーショッパー」までさまざまです。
どのような副業を選ぶかによって、得られる収入も必然的に変わってきますが、ひとつ言えるのはその収入額が5万円以内に集中していることです。この調査でも、収入が5万円以内としたのが全体の76.4%に対し、5万円以上は23.5%です。
「起業の準備」という側面も
しかし、副業のメリットは副収入を得られることに限りません。冒頭で紹介した「兼業・副業に係る取組み実態調査」では実際に副業を実践している従業員へのヒアリングを行っていますが、そこで挙げられているメリットは「将来の起業に向けて準備ができる」「副業が物事の視野を広げてくれる」「本業とは異なるスキルが身につく」など、「自身の能力を高められる」ということです。
また、会社にとっても従業員が副業をすることがメリットになる場合もあります。企業側が副業についてメリットだと思う点としては、「経営者感覚を養う最高の人材育成方法」「副業で得た知識を活かし、本業に貢献してくれる」といったことが挙がっています。このように企業側、従業員側のメリットが合致すれば、「副業」は双方に大きな利益をもたらすようです。
とはいえ冒頭で書いたように、「副業OK」の企業はまだまだ多くありません。企業側の不安要素としては、本業への支障や健康管理面、情報漏えいの危険性などがあり、簡単には踏み切れないのも納得できます。しかし、本来「職業選択の自由」の観点からすれば副業自体は違法ではありません。今後、どのように企業側と従業員側のメリットが一致するような「副業OK」の環境づくりが進めていくか。まだまだ課題は山積みなのです。
(安仲ばん)