育休を取るには「人望」が必要? アラサー男子のホンネが飛び出す座談会

育休を取るには「人望」が必要? アラサー男子のホンネが飛び出す座談会

共働き夫婦が増加するなか、育児に積極的に参加する男性、いわゆる”イクメン”のニーズはますます高まっています。最近は男性の育休取得を推進する声も大きくなっていますが、厚生労働省「平成 26(2014) 年度雇用均等基本調査」によると、育休の取得率は女性が86.6%であるのに対し、男性は4.2%と大きな差があることがわかっています。

男性が育休を取りにくい理由には、経済的な事情や体裁の悪さなど、さまざまなことあると思われますが、実際のところ、結婚適齢期を迎えてそろそろ育児に興味を持ち始めるアラサー男性は、育休についてどう考えているのでしょうか? 仕事もプライベートも充実しているという、アラサー未婚男性3名による座談会を開いて、その本音を探りました。

〈参加者〉
Oさん:26歳。WEBサイトの記者。収入がそれほど高くないため、いまのところ結婚願望はなし。しばらくは趣味に時間とお金を使いたい。専業主夫でもいいと自分は思うが、親戚や周囲からの風当たりが強くて難しそう。

Sさん:28歳。エンジニア。次に彼女を作るなら結婚が前提。「家に帰って人がいる」「パートナーと支え合う」という環境で精神を安定させたい。共働きを望んでいるが相手が専業主婦でもOK。自分が主夫になることもやぶさかではない。

Kさん:30歳。事業戦略。姪っ子の誕生を機に育児欲が高まっている。価値観のズレを防ぐためにも妻には働いていて欲しい。専業主婦を希望する女性は正直無理。自分が主夫になることも基本的には避けたい。

育児は「しなきゃ」ではなく「したい」が……

――まず、育児について正直どう思われてますか? 育児に時間を割くことに抵抗感はないですか?

Sさん:抵抗は全然ないですね。「むしろ育児しなきゃな」と思うので、時間が許す限り自分ができることをやりたいと思います。育児に参加するのは当然かな、と。

Oさん:僕は「しなければ」というよりは「したい」ですね。なんか、子育てって好奇心をかき立てられるんですよ。親いわく、僕は「手がかかった子ども」だったらしくて、両親がノイローゼになりかけたという話を聞いていたのですが、そういう苦労も後々の人生に役立つかな、と。オムツ替えをしたり保育園の送り迎えをしたり、育児のすべてが自分の成長になるんじゃないかなと思っています。

Kさん:僕もしたいですね。子どもが生まれたら子育てをしっかりしたい。だから、それまではちゃんと遊んだり、友達との時間をたくさん作ったりしたいです。最近生まれた姪っ子が超かわいいので、自分にも子どもができたら死に物狂いで育児しなきゃと思うだろうな。あと、奥さんが産後うつになったという話も周囲で聞くので、そうならないように自分にできることは協力したいです。

育児は「お手伝い」程度になってしまうかも

Oさん:ただ、自分主体で育児をするというよりも、奥さんのお手伝いになっちゃうかもしれません。たぶん6対4くらいかな。5対5にはならない気がします。

Kさん:それはわかります。男性と女性では、できることに限界があると思うんですよ。それは、母乳をあげることひとつとってもそうですし、子どものごはんを作るにしても、肌感覚的になんとなく女性の方が育児に向いているんじゃないかなと思います。実際、育休を比較的、女性が取りやすく、男性が取りにくいのも「育児は女性がした方が自然だ」という空気感が社会にあるからなんだろうなと思います。

妻に「育休を取って!」と言われたら?

――では、妻が産後すぐの職場復帰を希望していて、かつ保育園に入れなかったとき、「あなたが育休取って」と言われたら、どうされますか?

Sさん:うちの会社は育休が取りやすいと言われているので、休めるだけ休もうと思っています。僕はエンジニアという仕事柄、家でも作業できますし、ブランクができない分復帰しやすいのはメリットだと思います。

Oさん:それはいいですね。僕の会社はお偉方がみなさんお年を召された方たちばかりということもあってか、男性の育休に寛容ではありません。正直、なぜ育休を取りたいかを説明するのにコミュニケーション・コストがかかりそうだな、という気はしますね。例えば「最近、男性も育休を取ることが重要とされていて……」と社会的な背景を踏まえて話したとしても、「それはそれだけど、うちはうちだから」って言われそう。本気で育休を取ろうと思ったら、「妻が病弱で……」と嘘をつくなどして、上司がぐうの音も出ないような“やむをえない理由”を作る必要があるかな。

Kさん:それは大変ですね。僕の会社は男性も育休を取りやすいので、自分でも取ってやろうと思っています。普段の職場の雰囲気からも、育児に対する理解が深いなと感じています。実際に男性社員が「子どもを保育園に送るので出社遅れます」と連絡してくるのって、わりと普通です。

Oさん:すごくいいですね。うちの会社は、体調不良以外の理由で出社が遅れるというケースはまずないです。

男性育休座談会

育休制度があっても、取得するに社内営業が必要

Kさん:ただ、男性がもし育休を取るとなったら、前提として「人望」が大事な気がしています。それは、人間力というか、ちゃんと仕事を差配する力、いろいろ言われても「休みます!」と言いきる土壇場力、それから根回し力とか……いろんな力を含んでますね。男性の方が育休取得のためにやらなきゃいけない社内営業のハードルが高いかもしれません。

Oさん:それ、わかります。制度はあっても実際に利用するにはパワーが必要なのかもしれませんね。いずれにしても、大義名分に加えて、ある程度準備が要りますよね。

Kさん:そうですよね。僕の場合、以前某家電メーカーに勤めていたんですけど、比較的育児を応援している会社でした。ただ、男性でも育休取れるって言っているけれども、取っている人はそんなに見かけないって印象でしたね。でも、今の会社は男性の育休取得を推奨しようという雰囲気が全体的にあるので、育休を取ろうと現実的に思えるようになりましたね。たとえば、奥さんが週1回習い事に行きたいからということであれば、「その日は自分が育児をやってるから、行ってきな」と言えたら、奥さんのガス抜きにもなるしいいかな、と。

できれば長期育休でじっくり子どもと関わりたい

Oさん:もし育休が取れればの話ですけど、僕は長期で取りたいですね。ある程度の期間を取って、苦労とか楽しさとか、育児の醍醐味を味わいたいです。育児に関わる期間は、やはり半年くらいは欲しいかなっていうのが本音ですね。

Kさん:言われてみればそうですね。ただ、夫婦ふたりで取る必要が果たしてあるのかは疑問ですよね。もし奥さんがまったく育児に関心がなくて、自分だけが子どもの面倒をみるというケースを想定すれば別ですけど。奥さんがメインで育児をするのであれば、ふたりも必要だっけ?という気もします。自分の育児欲をいったん脇に置いておくとすれば、肝心なのはポイントポイントで奥さんを助けてあげることなのかなという気がしています。

育休経験はキャリアにもプラスになる?

――では、キャリアの面から考えて、育休はブランクだと思いますか?

Sさん:「今やっている仕事の延長線上にあるキャリア」という意味では、育休は妨げになるかもしれません。でも、育児にどっぷり浸かることによって、価値観が変わり、別のことをやってみようかな、復帰した時に違う価値観で仕事ができるかな、と期待の方が大きいですね。これはエンジニアという技術職なので、あるレベルまで達したらあとはキャリアにあまり差がつかないということもあるかもしれません。

Oさん:確かに当面はかなりのブランクだと思いますが、僕の働くWEBメディア業界は、基本的なスキルが備わればあとはセンスなので、何年も継続してキャリアを積まなきゃいけないわけではないんです。それこそSさんと同じように育休で価値観が変わって、違うメディアに転職してみようという気にもなるかもしれません。あと、メディア業界にいるからかもしれませんが、企画を考える幅も広がると思うんです。自分のキャリアを総合的に考えると、育休を取るのは決してマイナスではないと思いますね。

Sさん:育休を取ったとしても取らなかったとしても、すぐ管理職なれるわけではないので、育休でできるだけたくさん子どもに接してから会社に戻りたいです。あと、育休中にスキルを伸ばして、「腕は鈍ってないですよ」とアピールできる状態になっていればいいんじゃないかなって考えています。

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