カウンセラー 石原加受子さんインタビュー

“察する女性”ほど追いつめられる カウンセラーに聞く、がんばる人の休み方

“察する女性”ほど追いつめられる カウンセラーに聞く、がんばる人の休み方

後輩もできて、責任が少しずつ重くなってくるアラサー世代。やりがいをもって仕事に臨んでいても、ときに疲れてしまうもの。「頑張り屋の人ほどうつうつとした気持ちを溜め込んで、手遅れになりやすい」と指摘するのが、心理カウンセラーの石原加受子(いしはら・かずこ)さん。

『逃げ出したくなったら読む本』(祥伝社)や『ヘトヘトに疲れる嫌な気持ちがなくなる本』(中経出版)など、これまでにも数多くの書籍を執筆している石原さんに、働く女性が陥りやすい精神の不調についてうかがいました。

「治療」ではなく「予防」のための心療内科

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——海外映画ではよく心療カウンセリングに通うシーンが描かれ、日常生活に浸透しているイメージがあります。日本ではカウンセリングというと、まだまだハードルが高いですよね。

石原加受子さん(以下、石原):そうですね。でも、心の病が重大化する前にカウンセリングに来ていただくのは、本当に大切なことなんですよ。状況が差し迫ってから対処するのか、問題がまだ小さい段階で対処するのかで、回復の早さも全然違ってきます。

「とにかく辞めたい」キャリア女子

——石原先生のところには、どんな悩みを抱えてカウンセリングを受けに来る女性が多いのでしょうか?

石原:「仕事に行くのがつらい」という方が非常に多いですね。朝起きるのがつらくなったり、職場に行くのがつらくなったり、会社を辞めたくなったり。

「辞めたい」と悩むところまで追い詰められると、「どうして辞めたくなったのか?」ということすら見えなくなっている場合が多いんですね。

人間関係が原因だったとしても、その相手が上司なのか、同僚なのか。あるいは仕事の内容や、部署の環境に問題があるのか……そういう具体的な理由が見えなくなるんです。

——「もう、とにかく辞めたい」っていう状態ですね。

石原:そういう状態の方たちの、悩みの原因を突きとめて解きほぐし、楽になるような行動の仕方や物事の捉え方をアドバイスするのが、私の仕事です。

仮病でもいいから丸1日休む

——仕事との向き合い方は、どのようにアドバイスされていますか?

石原:時には1日休んでみることを提案することもありますね。1日だけでも休んでみると、心境はまったく変わってくるものなんですよ。仮病でも何でもいいから休んで、「ああ、休んでよかった」と、心から思ってほしいのです。

——「休んでよかった」とは、どういうことですか?

石原:せっかく休んでも、「ああ、休むなんて私はダメな人間だ」ってつぶやいていたら、休んだことになりません。自分を責め続けたらものすごく疲れますよ。

会社に行くと、すべてが目まぐるしく動いています。けれども、自分を顧みることなく、周囲のペースに合わせようとしたり、相手のニーズに何がなんでも応えようとすれば、それができないとき、自分を責めてしまうでしょう。「休む」というのは、もっと自分にもどる一つの方法として、「自分のために休めてよかった」ということなのです。

まずは「自分中心」に考えるクセをつける

——とはいえ、自分を責めてしまう人が多いと思います。そんな人に、石原先生はどのようなカウンセリングをされているのでしょうか?

石原:まずは、「自分中心」の捉え方をするクセをつけてもらいます。自分の欲求や願いを、最優先で満たすこと。それはつまり、自分自身を愛したり、認めたりすることです。

——「自分中心」という考え方について、もう少し詳しく教えてもらえますか?

石原:例えば、今ここにお茶がありますよね。このお茶を「飲みたい」って思って飲めば、それは自分自身の欲求を満たすこと。何も悪くありません。ところが、相手のお茶まで奪って飲むのは、悪いことですよね。

多くの人は、そこがごちゃ混ぜになっているんですよ。人に迷惑をかけるかもしれないから……とうまく自分の欲求を満たせない人は、常に何かを我慢している状態です。

そういう、小さいことの蓄積によってライフスタイルは決まっていくんです。ちゃんと自分の日常に立ち現れてくる様々な欲求を適切に満たしながら生きられるのか否か。その違いで人生は、がらりと変わってきますよ。

「察する力」がある人ほど苦しむ

石原:みんな、言語化されていないことを“察そう”としすぎなんです。

例えばお友達が不機嫌そうな顔をしている。そう感じたなら、思い切って「何か怒ってるの?」って聞いてみればいいのです。それをせず、相手の気持ちを勝手に勘ぐって、「私のこと、どうせ嫌いなんだ」というふうに思考をどんどん広げていくと、とってもつらくなりますよね。それで、心が折れてしまう。

そういう時は、だいたい相手は不機嫌でもなければ、怒ってもいないんです。つまりあなたが「察したこと」なんて、何にもないんですよ。想像の中だけの「悪いこと」に振りまわされるなんてバカらしいでしょう。

自分自身の“頭の声”に惑わされないで

——とんだ取り越し苦労ですね。

石原:凹んでいるときって、妄想に囚われてしまっているから、自分がどんな顔をしているかもわからない。他人から見れば、怒っているように見えるかもしれないわけですね。相手も当然、そんなあなたの顔色を見て反応する。それに気づいていない人は、「何もしていないのにイヤな態度をとられた」などと思い込むわけです。

——発信源は自分なのに……。

石原:ええ。そのようなすれ違いが絶えず起こっています。一度迷い込むと、袋小路から抜け出すのは本当に大変なこと。まずは、今一度、頭で考えるよりも、「気持ち、自分の感情、欲求」に気づくレッスンから始めてほしいものです。

(黒田隆憲)
>>>後編に続く

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