ウートピ短歌、初回結果発表!
ウートピ読者のみなさま、はじめまして。
この企画を知ってページを訪問してくださったみなさま、こんにちは。
加藤千恵です。どうぞよろしくお願いします。
普段、文章を書く仕事をしているくせに、自己紹介が苦手です。
好きなものも嫌いなものも多すぎて、一回の原稿内ではとてもおさまりきりそうにないので、少しずつ書かせていただければと思います。
とりあえず初回の今回は何を書くか迷ったのですが、麻雀で好きな役満は天和です。あがったことはありません。
わたしの職業は、歌人・小説家です。
歌人というと、あまり馴染みがない職業かもしれませんし、電話口で伝えたなら、聞き返されてしまう予感があります。(確かめてはいませんが)
歌人の歌は、短歌を意味します。
短歌は意外と難しくない
短歌。
多くの方は、特に触れることのなく過ごしてしまうかと思うのですが、もしかすると学校の授業で作られたという方もいらっしゃるかもしれません。
でも意外とおもしろいものだし、おそらくみなさまが考えているよりも、難しくないと思います。
まずは初回ですので、短歌のルールについて書かせていただきます。
短歌のルールとは、「5・7・5・7・7」の31音の形になっていること。
それだけです。それだけ?と思われるかもしれませんが、それだけです。
季語、枕詞は不要です
よく誤解されるのですが、季語もいりませんし、枕詞なども不要です。
もちろん使っても構いませんが、ないほうが主流かと思います。
ちなみに、5文字と7文字の言葉だけで構成されている必要もなくて、12文字になっていたり、言葉の切れ目が句の真ん中に来たりしていても大丈夫です。
でも最初のうちは、31音に慣れるという意味でも、1句(1ブロック、のことです。短歌自体は1つを1首と数えます)ごとに意味が切れているほうが、
作りやすいかもしれません。
初回テーマは「自由な夜」
さて、今回、「自由な夜」というテーマで短歌を募集していたのですが、たくさんの投稿をいただき、大変ありがたく思っています!
いきなりのクオリティの高さに、嬉しさと驚き、そしてわたしが何か言うなんて蛇足になってしまうのでは……、とびびる気持ちが生まれたのを告白しておきます。
それでは、投稿作品の一部をご紹介させていただければと思います。
投稿作品をご紹介
飛び出して夜の空気と抱き合っていいよ大人だからできるんだ(なべとびすこ)
☆夜の空気と抱き合う、という表現がおもしろいです。読み手によって、想像される具体的な行動が異なりそう。
永遠に落ちていく星 池袋ドン・キホーテに見つけたんだよ(安茂蔦子)
☆それが何であるのか、思わず探してしまいそうになる魅力的な言葉。個人的には、元・池袋住人としても(去年まで住んでました)グッときました。
ひとりでも生きていけると気がついてしまった夜に飲み干すコーラ(ネネネ)
☆気がついてしまった、という言い回しで孤独や寂しさを滲ませながらも、コーラという着地点により、テーマである自由さも浮かんできます。
聞いちゃえば終わってしまう気もするし冬の味する煙草を吸って(中川徹哉)
☆過剰になりすぎず、暗喩が効いていると思いました。夜にそのまま溶けていくような短歌。
多摩川で花火をしたね制服がまたたくような夏の終わりに(藤本玲未)
☆制服がまたたくような、にやられました!経験はないのに、自分の記憶のように情景がよみがえります。
評判のラーメン一緒に食べようよ君との夜がなくなる前に(No.4560)
☆前半のカジュアルさと、後半のシリアスさの落差が、見事にきまっていると思います。不意に笑顔が真顔になるような。
両親が帰って来ない夜だからママの口紅引いて待ってる(古井咲花)
☆海外ドラマの1シーンを思わせるような1首だと感じましたが、読み手によっては受け止め方が異なりそうで、そこもおもしろいですね。
風邪ひいたわたしの横で本を読むあなたがいると世界が変わる(まり)
☆何気ない日常の光景からつながる下2句、そのまま何かのコピーになりそうなキャッチ—さがありますね。
とりあえず生選んじゃう僕たちに自由とかハードル高いって(まなみ荘)
☆さらりと詠まれたようでいて、「なま」が、生まれる、という読みにつながってくるという、深い短歌だと感じました。
甘噛みのようにビーサン踏んづけて夜の道路でする・しないって(伊藤紺)
☆二人の掛け合いなのか、あるいは一人の胸中の逡巡なのか。歌の持つ強い物語性に惹かれます。
真夜中の天気予報で流れてるBGMをただ聴いている(西淳子)
☆天気予報なのに見てすらいないなんて、確かに自由でもあると同時に、短歌内の主人公が持つ投げやりさが深く伝わる行為だと思いました。
今回紹介しきれなかった中にも、おもしろいものや、気になったものが、本当にたくさんありました。選ばれなかったからといって気にいらなかったというわけではないので、
これからもどうぞ引きつづき投稿していただけると嬉しいです。
もちろん紹介させていただいた方も、また新たな短歌をぜひ。
この連載を支えていくのは、画面の前のあなたたちです!(←とある番組風に)
そして最後に毎回、テーマに沿って、
自作短歌を一首発表させていただきます。
ではでは、これからどうぞよろしくお願いします!
忘れたくなかった夜や忘れられなかった夜が星座みたいに(加藤千恵)
(イラスト=オカヤイヅミ)