「産んでも働くママになる」第4回 サイバーエージェント

「妊活コンシェル」が産みたい女性をサポート サイバーエージェントが考える会社が社員のためにすべきこと

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女子に人気の就職先としても知られるIT企業、サイバーエージェント。同社は「妊活コンシェル」と「妊活休暇」といった、女性の妊娠をサポートする制度が充実していることでも有名です。この2つは、女性支援制度「macalon(マカロン)パッケージ」に含まれるもの。

ママ社員をサポートする制度は増えてきたものの、妊活支援を前面に打ち出す企業は、まだほとんどありません。これらの制度が導入された背景には何があったのでしょうか? また実際にはどのように利用されているのでしょうか? 同制度の名づけ親でもある人事本部の田村有樹子(たむら・ゆきこ)さんに伺いました。

月1回のカウンセリングが受けられる

――「妊活コンシェル」とは、どんな制度ですか?

田村有樹子さん(以下、田村):「妊活コンシェル」は、妊活に興味がある社員や将来の妊娠に不安がある社員が、専門の女性保健師から月1回30分、個別にカウンセリングを受けられる制度です。女性社員だけでなく男性社員も受けることができ、パートナーが社外の方でもふたり揃って利用できます。カウンセリングの他にも、専門医による社内セミナーの開催やクリニックの紹介などを実施しています。

代表・藤田晋が考えること

――企業が妊活支援を打ち出すのは珍しいですね。この制度を導入した背景は?

田村:弊社の代表を務めている藤田晋は、性別に関係なく「優秀な社員に長く働いてほしい」と考えているんです。そのためには女性社員が妊娠・出産したあとも、ずっと活躍できる環境を会社側が整えるのは当然のこと。さらに「出産前から女性を末永くサポートする」と会社が宣言することで、優秀な女性社員が安心して働き続けられたらとこの制度を立ち上げました。

利用者の6割は独身の女性社員

――社員の利用状況はいかがですか?

田村:予想以上のニーズがありました。カウンセリングは月に3枠あり、毎月8割は必ず埋まります。立ち上げ当初は月6枠に増やした時期もありました。

――どんな人が利用しているのですか?

田村:利用者の6割は独身の女性社員です。次に多いのが、まだ子どものいない新婚社員。「今のところ予定はないけど、妊娠や出産のことを事前に知っておきたい」「いきなり産婦人科に行くのはハードルが高いので、相談してみたい」という声をよく聞きます。

男性社員が利用するケースも

――具体的には、どのような相談が多いのでしょうか?

田村:まだ子どもがいない社員からは、「将来的にどんな準備をしておいたらいい?」とか「キャリアとの両立を考えると、いつ産んだらいいのか?」といった、人生設計の相談が多いようです。他に、男性社員からは「妊活中のパートナーの心をどう支えればいいのか?」といった相談もありました。また、最近では、復帰したママ社員から「2人目がほしいけど、タイミングをどうしよう?」といった、第2子に関する相談も増えてきました。ママ社員への支援制度が一巡したんだな、と実感しています。

産婦人科に行くまでのワンクッションに

――実際にカウンセリングを受けた方々の反響はいかがですか?

田村:産婦人科に行く前のワンクッションとして、この制度が非常に役立ったという声が多数ありました。また、専任の保健師さんのアドバイスは的確だと好評です。相談回数に制限はないので、リピーターも多いんですよ。「カウンセリングを利用して妊娠しました!」という嬉しい報告も数件ありました。

女性社員の有給休暇はすべて「エフ休」で統一

――「妊活コンシェル」などの相談窓口を設けるだけでなく、実際に妊活のために休暇を取得できる「妊活休暇」も制度として導入されているんですよね。

田村:はい。この制度では、不妊治療中の女性社員が、治療のための通院などを目的に月1回まで特別休暇を取得できるんです。急な通院や体調の変化に考慮して、当日取得も可能です。

――不妊治療中に当日休暇が取得できるのはとてもありがたいですね。一方で、突然の欠勤で業務に支障をきたすようなことはありませんか? また、他の社員から理解は得られているんでしょうか?

田村:妊活でなくても、急に休まなければならない場合は誰にでもあります。社員みんながそのことを前提に仕事をしているので、「急に休まれて困る」といった声はありませんね。また、妊活はとてもデリケートな問題なので、なかには周囲に知られたくない社員もいます。そのため、当社では女性社員が取得する休暇は、すべて「エフ休(FemaleのFからとったもの)」と呼ぶことにして、利用用途がわからないように配慮しています。

「周囲に迷惑をかけている」と感じさせない

――それはありがたい配慮ですね。不妊治療が長引くと、「これ以上職場に迷惑をかけられない」と、会社を辞める人も多いと聞きます。仕事やキャリアを優先して出産をずるずる先送りにした結果、不妊治療をせざるをえなくなるというケースもあると思いますし。

田村:そうしたケースは今の社会ではよくあると思います。そういう社会的状況を踏まえて、会社は働く女性にきちんとした制度を提供する必要があると考えています。会社が不妊治療の応援を宣言することで、社員が抱えうる妙な迷いや罪悪感が払拭でき、逆に仕事に集中できるようになるのではないでしょうか。

制度を利用している社員からは、「会社に応援してもらっていると思うと、頑張れる」「周囲に治療と知られずに休みが取れるのでありがたい」という声を聞きます。実際に、この制度を利用して無事妊娠された方もいます。

取材を終えて

ひと昔前は「妊娠=退社」の流れが当然で、企業が女性の妊活を応援するようになるなんて夢にも思いませんでした。それは、10年前のサイバーエージェントも同じだったと、田村さんは言います。女性社員の活躍が増えていくなかで、優秀な女性社員に長く働いてもらおうと制度を整えてきて、今ようやくこの形になった、と。国の支援がニーズになかなか追いつかない状況で、企業が率先してこのような制度を確立してくれるのは非常に頼もしいことです。一企業の話で終わるのではなく、近い将来、産休や育休と同様に、妊活休暇が制度として当たり前のように導入される日がくるといいな、と思いました。

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女性が働く上で、産休や育休、復帰後の働きやすさは、避けて通れないテーマです。女性も男性も心地よく働くために、企業はどんな制度を準備して、これらの問題に向き合っているのか。ママライターがレポートします。

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