体がダルい、ヤル気が出ない、イライラする、生理が重い…こんなふうに「なんとなく体調が悪い」と思っても、多くの女性は「きっとそのうち治るだろう」とやり過ごしてしまいがち。ところがこのようなプチ不調には、日本人女性の間で蔓延している「貧血」が大きく関係し、その裏側には重大な病気が隠れていることもあるのです。連載第3回目の今回は『貧血大国・日本』(光文社新書)の著者であり医師の山本佳奈(やまもと・かな)さんに、「本当はコワい貧血」の諸問題について話を聞きました。
「なんとなくダルい」の元凶は、貧血だった?
――貧血と病気の関係について、実際の医療現場で感じることはありますか?
山本佳奈さん(以下山本):外来の患者さんのなかには「なんとなく体調が悪い」と思っていろいろな病院をまわって検査をしたけれど原因がわからず、一番手軽にできる血液検査をしてみたら実は貧血が元凶だったということがよくあります。この場合は、鉄剤を飲むだけでコロッと元気になってしまうことも珍しくありません。
近年の研究では、真正の貧血患者だけでなく、体内の鉄が不足気味の“貧血予備軍”の人たちも倦怠感を感じやすいということもわかっています。原因不明の体調不良に悩んでいる人は、一度貧血を疑ってみるとよいかもしれないですね。
――なぜ鉄不足が貧血や不調を招くのでしょうか?
山本:日本で一番多い貧血の種類は、体内の鉄が不足する「鉄欠乏性貧血」だといわれています。鉄は、血液中で酸素の運搬を担う赤血球の中に含まれるヘモグロビンを構成するために必要な栄養素です。
鉄不足によってヘモグロビンの量が減少し、脳や筋肉を構成する組織や細胞に酸素が十分に行き渡らない状態では、体になにかしらの不都合が出てもおかしくありません。
貧血による終わりなき不調スパイラル
――具体的にはどんな症状があらわれるのか教えてください。
山本:たとえば脳が酸素不足になれば、頭痛、めまい、耳鳴り、ふらつきが起こりますし、心臓の筋肉が酸素不足になれば狭心症になります。また骨格筋が酸素不足になれば、疲労感や倦怠感、脱力感が生じます。
また人の体は酸素が不足することで、より多くの酸素や血液を送ろうと呼吸数や心拍数を増やします。貧血の代償として息切れや動悸などが起こり、終わりなき不調スパイラルに陥っていくというわけです。
昼間でも夜用ナプキンが手放せない人は要注意
――ほかに貧血と関係のある、気をつけるべき病気はありますか?
山本:とくに30代以降の女性で気をつけてほしいのは、子宮筋腫などの婦人科系の疾患ですね。子宮筋腫や子宮腺筋症は、過月経や出血を伴い貧血が生じやすくなります。
ダルさやめまいなど「ただの貧血症状でしょ」と片づけられがちな不調の裏側には、こうした大きな病気が隠れていることもあるので注意が必要です。
□疲れやすい。眠っても疲れがとれない
□階段で息切れする
□爪が弱くなり、割れる、へこむ
□顔色が悪いといわれる
□飲み物に入っている氷を食べてしまう
□生理の時の出血量が多い
□胃の切除の経験がある
□偏食ぎみ。肉を食べることが少ない
※医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック新宿・濱木珠恵医師による
(江川知里)