「ちゃぶ台返し女子アクション」レポート

“ちゃぶ台返し女子”が提言!「女性が自分のために生きるのはワガママではない」

“ちゃぶ台返し女子”が提言!「女性が自分のために生きるのはワガママではない」

2月28日、東京・表参道で男女約50人が参加したパレードが行われた。思い思いの格好をした参加者の持つプラカードには、「Noと言える私」「そのままのワタシは価値がある」「自分のために生きる」の文字。横断歩道を渡りながら、笑顔でハイタッチを繰り返すこのイベントは「ガールズ・パワー・パレード」。主催は、社会派アートグループ「明日少女隊」と女性グループ「ちゃぶ台返し女子アクション」だ。どのようなきっかけでこのパレードが行われたのか、こめられた思いを参加者らに取材した。

「ちゃぶ台返し女子アクション」は、「自分らしく生きたい」と考える女性たちが疑問に感じたことを話し合い、最後に「ちゃぶ台をひっくり返す」アクション。たとえば、「『あいつ、劣化したよな』劣化って何?」「子育てしたかったら、やりがいのない仕事しかないの?」といった、日常の中で抑圧されやすい疑問や憤り。これを吐き出して共有する。5~10人ほどが集まり、不定期に開催している。今後は託児所を増やすように働きかけるなど、具体的なアクションにも力を入れていく。

「明日少女隊」は、「第4世代若手フェミニスト」による匿名のアーティスト集団。アーティストの性別や年齢、氏名などはすべて非公表で、インターネットを中心に活動している。『ViVi』に掲載された「プロ彼女」特集に疑問を投げかける「なれるものなら“Happy彼女”」や、「あらゆる人の人権」に配慮したCMを表彰する「世界フェミCM大賞2015」など、継続的に問題提起を行っている。

自分のために生きるのはわがままじゃない

パレードの様子

共同開催のきっかけは昨年末。「ちゃぶ台返し女子アクション」が、パブリックなアートイベントをできないかと思索していた頃、縁あって「明日少女隊」とつながった。東京を拠点とし、女性同士のリアルなつながりを構築している「ちゃぶ台返し女子アクション」が人集めやPR、ファンディングを担当。「明日少女隊」がデザインやパフォーマンスの演出を担当するという、お互いの得意分野を活かしたイベントとなった。

プラカードの言葉は、「ちゃぶ台返し女子アクション」が65人の女性を対象に行ったインタビューを両グループが分析して決めたという。

NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンの代表理事で、「ちゃぶ台返しアクション」の共同発起人の1人である鎌田華乃子さんは言う。

「インタビューから感じたのは、日本は子どもを産むと100%母にならなければというプレッシャーがあるということ。そしてそれに疑問を感じる女性が日本にもいるということ」

鎌田さんは大学卒業後、外資系商社やコンサルティング会社に11年間勤務。その後、行政学を学ぶために33歳から1年間ハーバード大学に留学した。

「私も留学するまでは出産後に100%母になることを『仕方ない』と感じていました。でも留学して、いろいろな国の女性と出会って違う価値観があることを知りました。留学先には夫や子どもを連れてきている人もいたし、母国に子どもを置いてきている人もいたんです。なんなのだろう、この日本との違いは、って」

鎌田さんが訴えたかったのは「自分のために生きるのはわがままじゃない」こと。また、「女性が輝く社会」をスローガンに掲げる政治に対しては、「女性はすでに輝いている」と言いたいという。

「飛び入りの参加者もいました。私たちにはパワーがあると声に出して言うことがとても楽しかった。今後、日本でもこういった活動が一般的になれば」とも。

「こうあるべき」が強い日本

「海外の友達と比べると、日本の女性は遠慮して生きている気がする」と話すのは、「ちゃぶ台返し女子アクション」を鎌田さんと一緒に起ち上げた共同発起人の大澤祥子さん。小学校の6年間をアメリカで暮らしていた。

「中学受験を機に帰国したとき、日本は『こうあるべき』が強いなと感じました。たとえば、『女子高生ならこういう格好じゃないと変』とか、『ジャニーズの嵐を知らないのはおかしい』とか。いい大学へ行っていい会社に入るのが正規レールでそこを外れられない。いろんな生き方があって自分がやりたいことをやるのは自信につながるという感覚が薄いのかなって」

2014年に大学を卒業し、経営コンサルとして働き始めたが社会に出てみて気付いたジェンダー差もあるという。

「やっぱり女性の管理職は少ない。でも、価値観に縛られて苦労しているのは女性だけではなく男性もそう。女性だけではなく、男性も生きやすい社会になればいいと思います」

「キャリアも家族も持てる」と言われてきたのに

現代の家族や女性学、ジェンダーなどをテーマにとするアーティストのクラークソン瑠璃さんも参加者の一人。大学卒業後に化粧品のマーケティングPRとして働き始めたが、出産後に「働きづらさ」を痛感したという。

「子どものころから『あなたの世代の女性はキャリアも家族も持てる』って言われて鼓舞されてきたのに、こんなはずじゃなかったって思いました」

その後、夫の転勤に伴い香港へ。現地で制作をはじめ、帰国後にアーティスト活動をスタートした。30歳の頃だった。

「たとえば香港だと、少し余裕のある家庭はメイドさんに子育ても家事もある程度任せている。それだけではないけれど、日本は『母』という言葉の重みが強い。『ママだからこうしないといけない』という強迫観念が強いように思います」

香港から帰国し、フェミニストアーティストとして活動するようになったが、周囲の同年代でテーマを同じくするアーティストがいなかった。フェミニズムに抵抗がある人も多いと感じていた頃に、明日少女隊や「ゆる・ふぇみカフェ」といった活動を知り、国内でフェミニズムに関心のある人とつながるようになった。

「私は個人的な体験を作品にするうちにフェミニズムに関心を持つようになりました。『女性アーティスト』という言葉自体が社会の偏りを表しているし、フェミニストアートとくくられることでメリットもデメリットもあるけれど、フェミニズムに関心を持つ仲間が増えていけば明るい未来が見えるのかなと思います」

自己責任論の強さが、諸問題を見えづらくしている

匿名で活動している「明日少女隊」のメンバー2人にも話を聞いた。

「大学生のときに疑問に思うことがあった。教授が『女性にしては頑張った』という言い方をしたり、入学式でも壇上にいるのが全員男性だったり」(Aさん)

「アメリカの場合、ボーっとしていてもフェミニズムに出会う。子どもでもセクハラがどういうことかという教育があります。アメリカにも問題は多々あるけれど、少なくとも『女性が不利な立場にいる』という構造についての共通認識がある。人種差別問題があるので、問題の背景には社会的な構造があるという考え方が周知されていて、女性差別についてもその認知を置き換えて考えやすいのだと思います。日本ではそこの理解が薄いですね。CSRのコンサルタントが『日本の会社に人権問題はありません』と言っていたのを聞いたことがあります。びっくりしてしまう」(Bさん)

「フェミニズムのスローガンは『個人的なことは政治的なこと』ですが、今は自己責任論が、政治や社会の問題を覆い隠してしまっている」(Aさん)

確かに、つい最近で言えば保育園が足らないという訴えに対して「わかっていて出産したのだろう」「自分の努力でなんとかしろ」という声さえあった。今後については、こんな声も。

「女性は選ぶセンスがあると思う。それは買い物や家事などで、自分や身近な人のために、日常的に選ぶ場面があるから。でも、選ぶそのセンスを、自分のニーズを政治に反映させるために活かす機会が少ないと思います。そういう場所をつくっていきたい」(Bさん)

場所づくりの一環として、5月22日に上智大学の四谷キャンパスで子育て世代のための選挙イベントを企画中という(詳細は明日少女隊のHPで発表する)。

「どんな方法で訴えていくのか、楽しそうにするのか、もやもやするのか、怒るのか。それは人それぞれのチャンネルで、たくさんあっていいと思います。得意な方法を選んで、みんなで一緒にやっていく。前の世代をリスペクトしつつ、次の世代をつくっていきたいですね」(Aさん)

保育園問題やマタハラ、管理職比率の低さなど、女性の働き方や生き方を考える上での課題は多い。男女雇用機会均等法は1986年より施行され、現代の20代、30代は子どもの頃から「今は男女平等な社会」と教えられてきた。しかし、日本のジェンダーギャップ指数は101位(2015年)。この数字は何を意味するのか。女性からはどんなアクションが起こせるのか。未来のためにそれぞれの発信・行動が求められている。

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