浮気が発覚しても、カウンセリングを丁寧に行うことで、7割の夫婦は修復できる―—そう話すのは、年間15,000件以上もの相談を受ける探偵社「株式会社MR」の創業者・宗万真弓さんだ。同社は探偵業界ではじめて認定カウンセラー制度を導入し、約13年間、浮気調査とともに、クライアントの本音にじっくりと耳を傾けてきた。そのなかでわかったカウンセリングの重要性や復縁の可能性、またそもそも浮気はなぜバレるのかなどを伺った。
証拠をとるだけでは夫婦問題は解決しない
――探偵事務所を開いた当初から、カウンセリングを重視した浮気調査を行っていたんですか?
宗万真弓さん(以下:宗万):従来の探偵社は、浮気の調査の結果を郵送で送るようなドライな対応がほとんどでしたが、クライアント様と接するなかで、「浮気の証拠をとるだけでは、根本的な夫婦問題は解決しない」とわかりました。また、お話を伺うとパートナーとやり直したいという方が大半で、一緒に浮気問題を解決したいとの思いから、カウンセリングを始めたんです。13年前から無料サービスとして行っています。
――浮気調査の相談に来るのは、どんな方が多いのでしょう?
宗万:開始当初は9割が女性でしたが、今では女性:男性の比率が6:4にまでなりました。女性が社会進出するなかで夫婦の形が変わってきたことが要因かもしれません。また、2014年に女性の不倫をテーマにしたドラマ『昼顔』が流行ってから、男性からのご相談が増えた印象があります。平均年齢は48歳前後。20代から高齢だと70代の方までいらっしゃいます。
証拠を突きつけて愛人を説得すると7割が別れる
――7割の夫婦を修復させるというカウンセリングの内容について教えてください。まず、浮気調査の依頼を受ける段階で、いろいろとお話を聞くわけですよね?
宗万:はい、まずはパートナーとの現在の関係性を伺います。なかには、すでにご主人から離婚を言い渡されている女性も多いんです。男性が離婚を迫る場合は、ほぼ浮気をしています。それからパートナーの行動パターンを聞いて、浮気調査を開始するという流れです。
――実際に相手が浮気をしていることが発覚したら、どんなお話をされるんでしょうか?
宗万:やり直したいと思っている方には、「夫婦関係を変えなければ根本的な解決はしない」という前提をお伝えしたうえで、「パートナーと愛人をきちんと別れさせて謝罪をしてもらいましょう」と話します。謝ってもらえないと、相手を許せないので。
――浮気相手と別れさせるには、パートナーに証拠を突きつけて「浮気をやめて」と話す、ということですか?
宗万:いえ、まずは愛人に証拠を突きつけて、1対1で浮気をやめるよう話すのがセオリーです。証拠を見せて愛人を説得すると、7割は別れます。
――なるほど。愛人と別れさせたあとは、どうするんですか。
宗万:その後は、自分も変わらなければいけません。裏切られてつらいお気持ちはわかりますが、これまでの生活を振り返ってみると、奥様が子供ばかりに目を向けてご主人をないがしろにしていたなど、なにかしら自分側にも原因があることが多いんです。
――自分自身を見つめ直してもらって、改善ポイントをアドバイスすることで、関係性が修復すると。
宗万:最終的に夫婦関係を変えてやり直すか、離婚するかを決めるのはご本人なので、こちらから「こうしなさい」と指示するわけではありませんが、冷静さを取り戻してベストな選択ができるよう、じっくりとお話を伺っています。ご自身の心と向き合ってもらったうえで、パートナーがなぜそのような行為をしたのかを一緒に考えていくんです。心の整理ができると、これから自分がどう生きていくのかという根本的な部分を冷静に捉えられるようになります。その結果、7割ほどの方が修復の方向に向かっていきます。
すぐに離婚する前に3年間、冷静に考えてもらう
――一方で離婚を希望する方もいると思いますが、そういった人には、どんなアドバイスをされるんでしょうか?
宗万:証拠があれば離婚はいつでもできるので、いったん3年間がんばってみましょうと言います。証拠をとってから慰謝料が請求できる有効期限が3年間だからです。浮気が発覚したときが感情的に一番つらいときなので、そこで決断するのではなくて、冷静になってやり直しができるか、子供がいるなら別れてひとりで育てていけるのかを考えてみましょう、と。
――3年間の間、何度もカウンセリングを受ける場合もあるんですか?
宗万:無料カウンセリングの期間が調査報告後1ヶ月間のみなのですが、その間に考えが固まっている場合がほとんどですね。
――カウンセリングを受けて冷静になると、「やり直してみよう」と考えが変わることも多いのですか。
宗万:最近はそういう方が増えた気がします。とくに男性。以前は、奥さんが浮気したら「絶対に離婚する」っていう方が多かったんですけどね。離婚するにしても、やはり一度愛人と別れさせたいという気持ちがあるので、大抵の方は別れさせる努力はするんです。きちんと別れて謝ってもらえると、やり直してみようという考えが生まれるんだと思います。
奥さんよりも見劣りする女と浮気する理由
――そもそも、パートナーが浮気しているかも……と気づくキッカケは、どんなことなんでしょう?
宗万:ほとんどが相手の携帯を見て気づきます。女性は勘が鋭いので、ご主人の行動の変化がきっかけになることも。男性側が浮気された場合は、奥さんの下着が変わった、美容整形に行くようになったなどの理由が挙げられます。浮気の相手は、職場関係がダントツで多いですね。絶対にバレてはいけないというスリルによって、気持ちが燃え上がるようです。
――カウンセリングされるなかで、浮気に走る一番の原因は何だと思われますか。
宗万:男性が浮気する場合は、ほとんどセックスレスが原因。大抵は子供ができてホルモンバランスが変わったことで、奥さんが生理的にご主人を受け入れられなくなって、ご主人が寂しくなって浮気するという。あとは、仕事で人間関係がうまくいかずストレスが溜まっているとか。
男性の浮気相手って、たいてい奥さんより見劣りするんです。でも、モテない女性のほうが男に尽くすから、癒やしを求めてそういう相手を選ぶのかもしれませんね。
不貞行為の定義は「継続的な肉体関係」があること
――浮気の証拠を押さえるために、どんな調査を行っているんでしょうか?
宗万:法律で不貞行為とみなされるには、「継続的な肉体関係」がなくてはダメなんです。芸能記者のように一日中車のなかで張り込んで、決定的な瞬間を撮らなければいけません。2人が手をつないでいたとか、キスしていたとかぐらいでは、不貞とみなされないんです。
一番いいのは、2人でラブホテルに出入りするときの両方を押さえること。ビジネスホテルだと言い逃れがしやすいので、入口から一緒に入っただけじゃダメ。同じ部屋のドアから2人が一緒に入るところまで撮ります。
――そんなに厳しいんですね。
宗万:離婚の理由にするためには、それなりの証拠が必要で、1回だけだと「たった一度の過ちだから」と立証できないこともあるんです。裁判で慰謝料を請求する際に、確固たる証拠があればより良い条件でとれることがあるので、絶対言い逃れができないように最低2回は現場を押さえたほうがいいですね。
――少し前にLINEでのやりとりが流出したことをきっかけに、芸能人の不倫騒動が巻き起こりました。愛人とのLINEやメールのやり取りは、不貞行為の証拠になるんでしょうか?
宗万:やり取りのなかで「肉体関係があった」とか「浮気をした」とか、確かな言葉があれば証拠になりますが、それ以外の言葉だと「単なる言葉遊びだよ」「ジョークだ」など言い逃れができてしまいます。仮に「合体」など隠語を使っていてもセーフ。基本的に、第三者が見て明らかに2人が肉体関係にあるということを立証できないと、裁判では勝てないんです。相手の裸の写真が、携帯に保存されていたとしても、それだけでは証拠になりません。
「浮気してるかも」と思っても相手を問い詰めてはダメ
――浮気を立証する難しさがわかりました。そもそも浮気疑惑が立たないことが一番だと思いますが、どんなタイプが一途だと考えられますか?
宗万:熱中する趣味を持つタイプの男性は、浮気しないと思います。逆に、エネルギーが有り余っている人は浮気しますよね。テンションが高くて気持ちがポジティブな人とか、ナルシストっぽいタイプも浮気しやすい。
――たとえば、彼氏や旦那さんが「浮気しているかも」と思ったときは、まず何をしたらいいでしょうか?
宗万:行動パターンをチェックし、記録しておいてください。外出から帰って来たときにどんな様子だったかなど、できるだけくわしく残しておくと、もし裁判になった場合に証拠として使えます。
――本人に直接「浮気してるでしょ?」と、問い詰めるのはいけないんですか?
宗万:関係がこじれてしまうので、絶対に問い詰めてはダメです。相手に言い逃れをされて、自分がつらい思いをするだけで終わってしまうこともあります。問い詰めるのではなく、少しだけ優しく接してみるなど自分自身をちょっと変えてみるといいかもしれません。
―それでも解決しない場合は、証拠を掴んだうえで冷静に話し合うのが一番でしょうか。
宗万:浮気相手ときちんと別れさせなければ、絶対やり直しはできません。まず浮気相手がどんな人なのかを知ること。そこからはケースバイケースですが、既婚者の場合は相手の女性と向き合って、浮気にいたった経緯や本気で付き合っていく気があるのかなどを聞いて、一度冷静にさせると大抵別れます。それでも2人が別れないと言うなら、もう「どうぞ」と言うしかないですね。
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