山崎万里子さん「高齢出産のリアル・育児に活かせた仕事のノウハウ」トーク(前編)

出産時の苦しみが“お腹チクチク”程度に 自分で痛みを調整できる和痛分娩の利点

出産時の苦しみが“お腹チクチク”程度に 自分で痛みを調整できる和痛分娩の利点

子どもを産みたいのに、「もういい歳だから」となかなか産めない。そんな高齢出産のハードルを打破すべく、株式会社リプロエージェントが主催する「働く女性が世界一受けたい授業」の中で、山崎万里子さんによる「高齢出産のリアル・育児に活かせた仕事のノウハウ」と題したトークイベントが行われました。

山崎さんは、株式会社ユナイテッドアローズで最年少・女性初の執行役員を務めるバリバリのキャリアウーマン。現在は42歳で、2015年の8月に男の子を出産しています。36歳で結婚してからというもの、「子どもを持たない主義」だと思われていたという山崎さんが子どもを産みたいと思ったきっかけから、妊活、出産、仕事と育児の両立に至るまで、赤裸々に語りました。

なぜ高齢出産を決意したのか

山崎万里子さん(以下、山崎):私は結婚から出産まで5年の空白期間があるので、周囲から「子どもがほしいけれどなかなか授からない夫婦」あるいは「子どもを持たないと決めた夫婦」だと思われていました。実際、実家の両親に妊娠を報告した時「うちの娘は仕事にしか興味がないんだと思ってた」と、ひどくびっくりされましたね(笑)。

むしろ私よりも主人の方が、6歳年上の妻の高齢出産について深く考えていたくらいで。私ももちろん、結婚当時は出産について考えることがあったのですが、結婚といってもほとんど籍を入れただけでしたし、何ひとつ生活を変えていなかったんですよ。

そんな私が子供を持ちたいと思ったきっかけは、組織をマネジメントしていく中で、重い病気を抱えた部下を担当したことです。産業医の先生との定期的な面談をして、病状やどのように仕事と治療を両立していくかを相談する機会があるんですが、そこで驚いたのが、職場で働いている様子と先生の語る病状が食い違っていることでした。職場ではイキイキと輝いているのに、病状は深刻だったりしました。仕事は「達成感」だけではなくて、人に「生きる力」ももたらすんだなと痛感しました。

一方、私自身には人生を棚卸した時に「莫大な仕事の達成感」しか残っていませんでした。「24時間いつでも働きます」というのではなくて、人間としての魅力や、女性としての経験があふれるようなリーダーになりたいと思ったんです。これが、高齢出産を決意した原体験ですね。

出生前診断や検査結果に振り回され、70万円の出費

山崎:妊活に向けて動き出したのは、40歳の時「子どもがほしい」と夫に打ち明けてから。産婦人科に通って葉酸を飲み、タイミングをうかがう日々でした。アラフォーということで、先生からは「半年やってみて、ダメだったら高度医療に移りましょう」と指示を受けていたのですが、幸いなことに自然と子どもを授かることができました。

私は妊娠後、普段通う病院と出産する病院を2つ、使い分けていました。高齢ゆえ「出産後の母体がどうなるか分からない」「子どもが元気に生まれてくるか分からない」という理由で、総合病院での出産を勧められたんです。そこで、山王病院で出産することにしました。

ただ、山王病院はものすごく待ち時間が長い。普段の検診は血圧を測ったりエコー検査をしたりするくらいなので「山王病院でなくてもOKなのでは?」と考え、主な検査以外は、近所の産婦人科に通うことにしたんです。効率的ではあったんですが、実は、大きな落とし穴がありました。

高齢出産における一番のリスクは、端的に言えば「染色体異常」と「流産の可能性」です。たとえば、ダウン症の発生率は20歳で1667分の1だと言われています。これが40歳になると106分の1、45歳で21分の1。私は必ず出生前診断を受けると決めていました。

妊娠3ヶ月くらいの頃、まず始めに山王病院でNIPT(新型出生前診断)を受けたんです。これは確率の問題ではなく、染色体異常のリスクが○か×かではっきり分かります。それでは「染色体異常はない」と結果が出てほっと胸を撫で下ろしたんですが、いつも通っている近所の産婦人科で、「クワトロテスト」を受けた時に染色体異常の発生率が26分の1と出たんです。

山王病院の先生からは「より確度の高いNIPTで『染色体異常はない』と出ているのだから安心していい」と言われる一方で、近所の産婦人科の先生からは「最新の検査はうさんくさい。羊水検査を受けなさい」と言われ、翻弄されました。最終的に羊水検査を受けて、「問題なし」だったのですが、トータルで70万円くらいかかりましたね。

出生前診断の結果いかんで、今度どう行動すべきかをあらかじめ決めておいた方がいいと思います。

おすすめは「和痛分娩」と「立ち会い出産」

山崎:私は和痛分娩で出産したんですが、これは本当におすすめです。和痛分娩とは、促進剤で陣痛を起こしながら麻酔で痛みをとっていく方法ですね。

無痛分娩ですと、全く痛みがない分母体に大きな負担がかかります。和痛にすると、もちろん痛みはあるんですが、「お腹がちくちくする」程度なので、十分耐えられるんですよ。それに先生と相談しながら痛みをコントロールできるので、「もう少し麻酔を強くしてください」「麻酔を抜いてください」などとお願いしながら、分娩に臨みました。

ありがたいことに安産で、麻酔をセットしてから実質2時間くらいで生まれかけたため、家族に慌てて電話をしました(笑)。それでも間に合わなさそうだったので、分娩の途中で麻酔と陣痛促進剤の投与を止めてもらったんです。

そうしたら、いきなり自然分娩の陣痛が襲いかかって来て。たった20分くらいだったんですが、金属バットで腰を殴られたような痛みだったんですよ。痛みに強い私でも、「お産が進んでいいので、麻酔を入れてください!」と懇願したほどです。それぐらい痛くて痛くて。直前までスマホ片手に「今、りきんでるよ(笑)」とか、「あの会議、どうなった?」とか友人や会社に連絡をとってたんですけど、本当に言葉にならなかったですね。自然分娩で14時間かけて出産した友人がいるんですが、「本当にすごいな」と思いました。

私は立ち会い出産だったんですが、立ち会いで心底よかったと感じました。なぜかというと、男性の目の前で出産というすさまじい光景が繰り広げられているわけです。一言でいうと、「女性には敵わない」というマインドセットができるのともう一つ、夫から父親にかわります。
和痛分娩であれば比較的冷静に子どもを産むことができますし、この「お産だったら何回やってもいいな」と思いました。

【後編はこちら】仕事ができる女性ほど、赤ちゃんをコントロールしたくなる 産後うつを防ぐには

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