『スター・ウォーズ』新ヒロインはなぜ男の手を振り払ったのか? フェミニズムの観点から見る最新作

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『スター・ウォーズ』新ヒロインはなぜ男の手を振り払ったのか? フェミニズムの観点から見る最新作

映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が、12/18に公開されてから1ヶ月あまり。日本でも興行収入100億円達成が目前に。観客動員数も600万人を超えました(1/31現在)。そろそろネタバレも大丈夫ということで、今回はこのヒット作と最近のハリウッド大作事情をフェミニズムの観点から見てみたいと思います。

「女はジェダイになれない」というジェンダー・バイアスを転換した

「スター・ウォーズ」新3部作の第1弾となったこのエピソード7。主人公が、エピソード1~3のアナキン、エピソード4~6のルークに替わり、女性のジェダイ、レイ(デイジー・リドリー)になったことは、大きな変化でした。これまでも、ヒロインとしてアミダラ女王やレイア姫は出てきたし、彼女たちは自ら銃を取って戦う強い女性ではあったけれど、あくまで英国のような「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」的価値観の下、男性たちに守られる存在。

同時に、主人公にとっては恋愛対象でもありました。ところが、本作のレイは主役にふさわしく強い能力を秘め、これまで(人間体では)男性しか手にしなかったライトセーバーを使って戦います。「女はジェダイになれない」という旧シリーズのジェンダー・バイアス(男女役割意識)をくるっと180度転換した画期的な設定です。

「私の手をにぎるのを止めて!」というセリフの示すもの

レイは、暗黒面に落ちたカイロ・レンと対面し、その強力なフォースをぶつけられても、歯を食いしばって彼の顔を睨み返す。その性別を超えた精神力が見事に表現されていました。ユニセックスな衣装を身にまとうレイは、アミダラのような背中が大きく開いたドレスは着ないし、レイア姫のようにほとんど裸同然のビキニ姿になったりもしないでしょう。

さらに、彼女が脱走兵のフィンと一緒に爆撃から逃げる場面、フィンがレイの手を引っ張って走り出すと、レイは「私の手をにぎるのを止めて!」と強く反発します。しかも、逆に「私についてきて」とフィンに対しリーダーシップを取ります。「女性は守られる存在ではない。男性と対等かそれ以上なのだ」というメッセージを放つ、フェミニズムの教科書から抜き出してきたような分かりやすいセリフが交わされています。

筆頭プロデューサーの女性の意向

主人公を女性にするということ、そして男女平等を主張するセリフには、映画の製作者であるキャスリーン・ケネディの意向が反映されているようです。筆頭プロデューサーであり、製作会社ルーカスフィルムの社長でもある彼女は、公開前、日本のマスコミに向けて、以下のようなコメントを発表していました。

「過去にはなかった新しいテーマ。それが『女性』です。『フォースの覚醒』では、3人の力強い女性キャラクターが初登場します。彼女たちは物語が続くにつれてますます活躍の場を広げ、物語の中で大きな役割を担うことになります」(3人の女性とは、レイと敵方のキャプテン・ファズマ、そして伝説の女海賊マズ・カナタのこと)。

新3部作はキャスリーンのもの

エピソード7では監督を務めるJ.J.エイブラムスばかりが注目されていましたが、そのエイブラムスを監督に雇ったのは、他ならぬキャスリーン。そして、次のエピソード8では『LOOPER/ルーパー』のライアン・ジョンソン、エピソード9では『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレヴォロウに監督が代わることが発表されました。つまり、この新3部作はエイブラムスでも、このシリーズを生み出したジョージ・ルーカスのものでもない、キャスリーン・ケネディのものなのです。

公開前、最初のプロモーションとして彼女とデイジー・リドリーが2人で来日したときから、それははっきり示されていました。その背景として、2012年、ルーカスフィルムがディズニーに買収されるのと同時に、キャスリーンがその社長に就任し、同社に眠る金脈を掘り起こすように新3部作の製作が決定したことなどを考えても、彼女が最も強い権限を握っていることは明らかです。

ストーリーチーム8人のうち6人が女性

スティーブン・スピルバーグのビジネスパートナーでもあるキャスリーンは、ハリウッドで最も成功した女性。社長としては若い62歳で、あと10年はトップに立ち続けられるでしょう。彼女は、米フォーチュン誌主催の「Most Powerful Women Summit 2015」というイベントではこう語っています。(出典:動画

「いまやルーカスフィルムの重役の50%以上は女性。(『スター・ウォーズ』の物語を作る)私のストーリー・チームでも8人のうち女性が6人。女性の方が多いという事実は、映画で語るべきストーリーに大きな違いをもたらしてきたと思う」

男性に復讐する女性を描く『マッドマックス』もアカデミー賞にノミネート

ちなみに、2/29に授賞式が開催される第88回アカデミー賞の作品賞には、男性に復讐する女性を描く『マッドマックス 怒りのデス・ロード』がノミネートされました。これもアクションとしては珍しく候補となったのは、映画の高い完成度に加えてフェミニズムの要素が入っているからだと言われています。作品の評価としても、映画の興行的にも成功を収められるとなれば、右にならえの傾向が強いハリウッドのこと。今後は戦う女性を主役にした“フェミニンな”アクション大作が、量産されることになりそうです。

■公開情報
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
全国公開中
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
画像:(C) 2015Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

(小田慶子)

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