ケアプロ株式会社・在宅医療事業部長インタビュー

5年後に約30万人が看取る場所をなくす 政府が推進する、訪問看護の役割とは

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5年後に約30万人が看取る場所をなくす 政府が推進する、訪問看護の役割とは

「看取難民」という言葉を聞いたことがあるだろうか。後期高齢者の増加と病院や介護施設の減少により、看取る場所がない、つまり死に場所がない人のことを指す。超高齢化が進む日本では、2020年には看取難民は約30万人と試算されており、その先もますます増えていくことが予想されている。

予防医療事業と在宅医療事業を展開するケアプロ株式会社は、12日から21日まで訪問看護の写真展を開催している。自宅にいながら病院と同じ医療行為が受けられる訪問看護は、その存在を知っていて、かつ、サービスを利用しているという人はまだまだ少ないのが現状。今回の写真展では、病院や介護施設ではなく、慣れ親しんだ自宅で治療をすることで患者本人や家族に安心と喜びが広がっていることや訪問看護のリアルを伝えることが目的だ。そんな訪問看護の現状や今後若い世代が考えていくべき問題について、ケアプロ株式会社の在宅医療事業部長である岩本大希さんにお話を伺った。

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Copyright:Carepro.Inc & studioAFTERMODE.

500円のセルフ検査サービスを行ってきた

――ケアプロさんは、2011年の震災後に在宅医療事業である訪問看護を始められたそうですね。それより前から展開されている予防医療事業について教えてください。

岩本大希さん(以下、岩本):もともとは、日本初の「ワンコイン検診(旧称、現在はセルフ健康チェックサービス)」サービスを行ってきました。駅ナカやパチンコ屋などの生活の導線上に店舗を構え、1項目500円から手軽に自分の健康状態が把握できる検査サービスです。日本は先進国であるにも関わらず、自営業やフリーランス、専業主婦など多くの方々が検診を受けていないという現状があります。入院レベルになるまで重症であることに気が付かなかった、高額な医療費を支払って治療していかなくてはならなくなった、となる前の段階でせき止めることが目的です。今は30万人以上の方々にサービス提供をさせていただいています。

――そこから訪問看護を始められたきっかけは?

岩本:東日本大震災が起きた後、私たちのサービスが避難所や仮設住宅で利用できないかと考え、3月下旬に現地入りをしました。しかしそのような場所ではたくさんの人たちが緊急を要して集められているので、もともと薬を飲んでいたり通院していたりなど様々な事情があったとしても誰がどのような健康状態なのかがすぐにはわかりません。そこで一斉に検査を行い、項目に引っかかった方々と地元の事業所や看護師さんたちとを繋げ、仮設住宅でも医療行為が受けられるようにしました。ただ、事業所も被災していましたし絶対的に看護師が足りていない中だったので、「仮設住宅で高齢者孤独死」といった例は少なくありませんでした。

これからは在宅医療がますます求められる

――被災地を通して仮設住宅や避難所において在宅医療は非常に大切だと感じたのですね。

岩本:そうですね。ただ、被災地から東京に戻ってみると状況が大して変わらないことに気が付いたことが大きかったです。独居世帯や子どもが遠くに暮らしている高齢者夫婦などで「実は病気なんだけど誰にも頼れない」という方は非常に多い。日本全体で見ても、看取りではなく警察が入ってから見つかる“孤独死”が年間20万人以上で、今後もますます増えていくことが見込まれています。これは今すぐどうにかしないとまずいということで、24時間365日対応で在宅医療が受けられるための訪問看護を事業としてやっていこうとなりました。

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Copyright:Carepro.Inc & studioAFTERMODE.

――病院にかかるわけでもなく介護施設に入るわけでもなく、自宅での孤独死が今後増えていく原因は何なのでしょうか。

岩本:2002年に医療経済研究機構が発表した死亡場所の内訳に関する調査では、13.8%が自宅、2.4%がナーシングホーム・ ケア付き住宅(いわゆる介護施設)、残りの約8割は病院となっています。しかし今後団塊世代が一気に後期高齢者となり、病院のベッドや介護施設が比例して増えるかというとそうではなく、確実に多くの人達があぶれてしまうことが分かっています。これが「看取難民」と言われている人たちです。そのため、政府は終末期においては在宅医療の方が圧倒的に医療費が安いこともあり、社会保障費的にも物理的にも推し進めているのが現状です。

訪問看護とは、その人らしい生活を手助けする医療行為

――訪問看護で受けられる医療ケアはどのようなものなのでしょう。

岩本:病院における手術や集中治療以外のことは、ほとんど受けられると思っていただいて大丈夫です。もちろん、病気を治療することがメインの病院と、自分の生活の場で療養する家とでは役割は違います。訪問看護では事前に、どのような頻度で看護師が訪問していくのか、どの程度なら病院で積極的な治療をしていくべきなのか、家族がどのようなサポートをできるのか、どんな食事を作っていけばいいのか、終末期であれば最期は家で過ごしたいというご本人の意向をどのようにくみ取っていくかなど、詳しく相談していきます。家で生活していきながら治療していくわけですから、患者さんのセルフケアをサポートし、ご家族にもしていただきたいケアなどもお教えします。病気を治す/治さないという考えではなく、その人のクオリティオブライフを手助けして一緒に考えていくような医療行為が目的です。「家の方が良いんですよ」「病院ではダメですよ」といったことを言いたいのではなく、訪問看護が当たり前のように選択肢の1つとなっていってほしいと思っています。

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Copyright:Carepro.Inc & studioAFTERMODE.

――訪問看護を受けられた患者さんやご家族はどのような反応をされていますか。

岩本:やっぱり慣れ親しんだ家にいられるということと、治療をしていきながらも生活をしていく自助努力が求められますから、生きていくことに対して精神的にポジティブになる方は多いです。ご家族も一緒にいられる喜びもありますし、病院にかかるよりも治療費が安いので安心感も強いと思います。

訪問看護の現場では、看護師として心震える場面に出くわすことがとても多いです。もちろん、真剣でシリアスなこともたくさんあります。そうしたことを事実として知ってもらうことが今回の写真展開催の目的でもあります。訪問看護は、若い世代にとっても実は身近なことだし、いつかは自分にも起こり得ること。なんとなくよくわからないと人に、訪問看護のイメージを写真でリアルに伝えることができるのではないかと思います。

訪問看護師は、日本でまだ4万人しかいない

――病院で勤務する看護師と訪問看護師で、何か異なる資格やケアの仕方はあるのですか。

岩本:どちらも看護師免許があればできます。もちろん役割や求められることは少しずつ違ってきますが、働く場所が病院か、患者さんのご自宅かということだけが違いです。

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Copyright:Carepro.Inc & studioAFTERMODE.

――看護師不足の問題についてはどうでしょう。

岩本:訪問看護師については、現在まだ日本で約4万人しかいないということと、平均年齢が約48歳と高齢化していることが問題です。実は私も看護師として現場にいたのでわかりますが、看護師の業界では、「在宅医療はベテランしかやってはいけない」「普通の看護師はまず病院で勤務する」といった固定概念が蔓延していました。もちろんそんなことはないのですが、なんとなく訪問看護を遠巻きに見てしまうが故のただのイメージです。若い人にもできる仕事だし、むしろ若い人にこれからどんどん介入してもらわないとこの先今の訪問看護師が引退して数がもっと減ってしまいます。なので、私たちは大学と提携したり新卒・新人訪問看護師応援サイトを立ち上げたりして、より若手が活躍できる場を作っているんです。

■関連リンク
株式会社ケアプロ

■イベント情報
同社主催の「訪問看護」をテーマとした写真展が、12月21日まで「四ツ谷ひろば CCAAアートプラザ ランプ坂ギャラリー」にて開催中。入場無料。
詳細はこちら

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