臨床心理士・濱田智崇さんインタビュー(後編)

熱々のフライパンで火傷させられる…女性からのDVを、男性が打ち明けない理由

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る
熱々のフライパンで火傷させられる…女性からのDVを、男性が打ち明けない理由

電話相談「『男』悩みのホットライン」の代表で臨床心理士の濱田智崇さんへのインタビュー後編。

前編では、DV加害者の「自分の感情を軽視してしまう」などの特徴や、男性が自らの悩みを自覚しにくいよう社会的に教育されている部分があるなどの問題点を聞いた。後編では、女性からのDVに悩む男性の話や、本当の意味での男女平等を伺う。

【前編はこちら】DV加害者は、なぜ暴力を振るってしまう? 男性が陥りがちな思考を臨床心理士が解説

男性の“解放”が許されない社会になっている

――男性の生きづらさは、ホットライン開設当時の1995年から現在まででどのように変化していると思われますか。

濱田智崇さん(以下、濱田):ずーっと景気が悪いですよね。経済的にしんどくなるっていうことが、どんどん男性を追い詰めています。もともと90年代では、男性が「こうでなければならない」とか、自分自身に無意識にプレッシャーを掛けてしまっていて、それに気付いて生きづらさから解放されましょうって活動していました。

今も男らしさに縛られないことで生きづらさから解放されようというのがベースにありますが、「こうでなければならない」ところからくるしんどさに気付いてしまった男性たちが、そこから解放されようと思っても許されない状況になっています。働いていても長時間労働で搾取され、がしがし働いて頑張ろうってことから解放されようって思っても、なかなか現実の状況が許してくれない。追い詰められていて、ますます生きづらくなっているという感じがしますね。まだ90年代は「男らしさの鎧を脱げば幸せになれるよ」っていう希望があったんですけれど、今は脱がせてもらえない閉塞感がありますね。男らしさの鎧に気が付いた男性が、必ずしも幸せになっていない。

例えば現在よく言われるイクメンについても、イクメンにはパタハラという問題がある。保育園に子どもを迎えに行くから早退させてほしいと上司に言ったら、叱責を受けるというような。イクメンになりたいけれどなれない状況があって、自分を責める人もいますね。

「男性も相談していい」雰囲気にもなってきた

濱田:また、正社員にならなければならないっていうプレッシャーがますます強くなっているように思います。大学で学生を見ていて思うのだけど、女性を食べさせていくためにはそれなりの企業に入らなければならないと思っているようです。非正規の雇用が増えたからといって、働き方が自由になったと喜べない、みんなが自由に働けるというよりも、みんなが食えなくなっている状況があります。結局、正社員っていうステージがあれば、つらくてもそこから降りにくい状況です。

一方で「男性も相談していいんだ」という雰囲気が少しずつ浸透してきています。きっかけとしては2001年のDV防止法があるんですけど、男性の加害者にも行政が対応しなくてはいけなくなったので、全国の主な都道府県には男性のための相談窓口ができ始めています。少しずつ生きづらさを抱えた男性の受け皿はできつつあるんですが、男性が楽に生きられるようになったかというと、そうではなくてなかなかしんどいものがあります。

女性からDVを受けても、打ち明けられない

――女性からのDVもあるようなのですが、相談を受けられた中で女性がパートナーにやりがちなDVにはどのようなものがありますか。

濱田:言葉の暴力が非常に多いですね。口喧嘩では男性は勝てない、言い返すことができずに傷ついています。男性は甲斐性無しなど、経済的なことでバカにされると非常に傷つくんです。

それから意外と身体的な暴力もあって、傷だらけで相談に来たりとか、熱々のフライパンでやけどさせられたりとか、そういう激しい身体的暴力もあります。でも男性がDVだと認識してない場合があるのです。暴力を振るわれても、自分は我慢しなきゃいけないんだという形で表に出ないことが多いです。今少しずつDVの被害者の男性って明らかになりつつあるんですけど、氷山の一角だと思っています。それに自分が暴力の被害者になるってこと自体、男性のプライドが許さないので人には言えない。自分さえ我慢すればと思ってしまうのではないでしょうか。

――家族やパートナーで苦しんでいる男性がいたら、身近にいる女性には何ができますか。

濱田:話を聞いてあげることですかね。でも、男性は自分が受けた被害は女性に対して言いづらいので、無理に何があったのかって聞くのではなく、本人がぽろっと言ったことをそのまま受けとめてあげるのが良いのではないかと思います。

解決策を示すのではなく、弱みを見せて誰かに相談すること自体にメリットがあると感じてもらうことが大事なんで。少しずつ、ぽろぽろっと出てくる言葉を受けとめてあげて、男性が楽になれば、それが良い体験になるんです。

真の意味での平等は「性的な縛り」をなくすこと

――男性を生きづらさから解放されるような社会ってどんな社会だと思われますか。

濱田:本当の意味で平等になればいいと思います。女性と仕事をシェアできる、どっちかがどっちかの役割をやらないといけないという縛りからできるだけ解き放たれるような社会が必要だと思うんですね。例えば「正社員にならないといけない」ということは、男性自身でプレッシャーを掛けているということもあるのですが、女性からの期待も強く感じます。イクメンや女性の社会進出も、男性の労働時間を短くして、仕事をシェアするみたいなことができていかないと難しいと思います。

■関連リンク
カウンセリングオフィス天満橋

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

熱々のフライパンで火傷させられる…女性からのDVを、男性が打ち明けない理由

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング
人が回答しています