“ブロガー議員”こと都議会議員・おときた駿氏へのインタビュー後編。
しばしばメディアで取り上げられる政治家の“不適切発言”。民間の企業で7年間ビジネス経験を積み、政界デビューしたおときた駿氏は、「政界の常識は社会の非常識、オジサン議員たちは全く反省していません」と一般社会と政界の価値観の乖離を指摘する。
おときた氏が自身のブログで取り上げ大きな話題になった“セクハラ野次事件”や、今後の政治のあるべき姿について伺った。
【前編はこちら】おときた議員が語る“7歳の娘の父になる決断” 「家族を幸せにできない人間に政治はできない」
“歴史単位で”モテたいから政治家になった
――おときたさんは、大学を出て外資系の会社にお勤めだったんですよね。
おときた駿(以下おときた):ええ、でも学生時代から政治家になりたいと思っていました。目的はただひとつ、女のコにモテたいがため(笑)。女性の社会進出と言われていますが、今の資本主義は男が作ったものだから、結局、女性仕様になってないんですね。だから早く女性首相が出てこないと、本当に女性が活躍する社会にはならない。僕は、そこまでのつなぎで首相になる。そして、おときたが首相になったからこそ、次に女性首相が出てきたんだよね、と言われるようにする。そうすれば歴史単位で女性にモテるんじゃないか、と……。
オジサン政治が社会をだめにする
――壮大な(笑)。でも実際、都議会も国会も男性社会ですよね。
おときた:都議会議員になってびっくりしましたよ。一般の常識は政界の非常識、政界の常識は一般の非常識。民間会社の比じゃないくらい、オジサン社会です。年功序列だし、当選回数が多いほどエライってことになって妖怪みたいな人がたくさんいる。セクハラ野次だって、ここでは常識。みんなに叩かれたから謝ったけど、反省なんてしていないと思いますよ。悪いって思ってないから。票にならないことに関しては、まったく意識が変わらないんです。
おときた議員ブログ記事:女性議員に対して「早く結婚しろ!」「子どもは産めないのかっ!」と野次を飛ばす、最低最悪の議会へ
※東京都議会セクハラ野次問題:2014年6月18日の東京都議会本会議にて、みんなの党会派議員の塩村文夏さんが、妊娠や出産に関連する女性への支援策について質問していた際に、議会から「自分が早く結婚したらいいじゃないか」「産めないのか」といったセクシャルハラスメント的なやじを受けたことに端を発した騒動。おときた議員はブログで詳細を発表、議論を呼んだ。
――だからいつまでたっても、選択制夫婦別姓さえ通らない。
おときた:ええ。「別姓にすると離婚が増える」とか言ってますからね。ステップファミリーについても理解がないし、そもそも、ひとり親家庭への支援が足りないのは、「離婚したのがいけない」とどこかで思っている人が多いからじゃないでしょうか。新しい家族のあり方を議員が受け入れようとしないから、そういう方面での政策が進まないんですよ。
政治家は情報をオープンにすることを嫌っている
――現実と政治家との乖離は大きいですね。だから若い人たちが、政治に興味を失っていく。
おときた:政治家って、みんなそれぞれ大名なんですよ。だから、人の話を聞かない。お互いが譲り合わないから、それぞれの意見を聞いて、肝心なところを先送りして妙な折衷案ができあがる。その繰り返しだったんだと思います。
――そんな中で、おときたさんは熱心に情報公開をされていますね。
おときた:政治家って、基本的に情報をオープンにすることが嫌いみたいですよ(笑)。都議会にしても、オープンにするって言いながら、いつどこで会議をやると言わない。都民が興味をもって傍聴に来たら困るんでしょうか。興味をもってもらわなくてもいいというか、むしろ興味をもたれないほうがいいと思っているように、僕には感じられる。そういうことと闘っていきたいんです。
――そこに若い人が共感している……。
おときた:少しでも興味をもってくれたらありがたいです。でも、イベントを打ったりもしているんですが、票につながるかどうかはわからない。ジレンマはありますね。オジサンたちは票になるかならないかばかりで動くと僕自身も批判はするけど、実際、票を得られなければ、選挙に当選しなければやりたいことはできないわけです。自分自身の信念をもって、周りに流されずに、それでも票を得ていくというのは、実はむずかしいことだと思います。
でも40代で首相になるつもりでいますよ。
決断は失うことじゃない
――おときたさんは、非常に自分自身の人生がクリアに見えている感じがします。読者のアラサー女性たちに向けて一言、お願いできますか?
おときた:決断が大事だと僕は思っているんです。検討して決断する。そうしたら、その決断を、あとでよかったと思えるように努力する。人生、その繰り返しじゃないでしょうか。いつまでもずるずる迷っているのが、いちばんよくないような気がします。
たとえば、30歳で、一生独身でいる、だから仕事をがんばると決めて努力した人と、結婚したいけどどうしようかなあと迷いながらきてしまった人と、10年後、きっと差が出てしまうと思うんです。一生独身でいると決めても、別に途中で結婚したっていい。そのときはそのときで、また決断すればいい。つまり、なにごとも「決めて」生きてきたかどうかは大きいと思います。
――何かを決断すると、それ以外の選択肢がなくなるような気がしてしまうのかもしれません。
おときた:決断はゴールじゃなくて、スタートなんですよ。だから、決断すればオプションの数も増えていく。決断しない限り、ずっと中途半端が続いていくだけだと思う。
――決断するときの基準みたいなものはありますか?
おときた:僕はいろいろ知識を積んだり、人の話を聞いたりしますね。しかも、自分とは違う意見を聞く。自分だけで考えていても、決断の基準は見えてきません。
――今回の結婚の決断が早かったのも、そこに通じるものがありますね。彼女とはケンカすることもあります?
おときた:ありますよ。彼女は区会議員ですから、江東区から離れられない。僕は都議ですから都内にいればいいんですが、それでも北区選出なので地元は大事にしたい。そこで今のところは別居生活というか二重生活みたいになっているんですね。彼女は「週に一回くらい帰ってくれれば」と言うから、そのつもりでいたら、「どうしてもっと帰ってこないの」って。あれ、言葉って額面通りに受け取っちゃいけないんだ、と学びました(笑)。
子育ての展望
――これから、ご自身のお子さんもほしいですか?
おときた:もちろん、それも視野に入れています。で、3人目は、特別養子縁組をするとかね。それも別に日本人の子じゃなくてもいいですよね。そういう多様性のある家族が増えていけば、この国も少しは変わっていくんじゃないかと思うんです。
自分の気持ちや現在の状況を的確な言葉で、わかりやすく話してくれたおときたさん。「政治は言葉だ」というが、10年以上、トップブロガーとしてやってきた経験、人の話を親身に聞く姿勢が、豊かな言葉を紡ぎ出す要因となっているのかもしれない。
新しいタイプの政治家として、この人の中にある多様で揺るがない価値観が、これからの東京と日本にどんな影響を及ぼしていくのだろう。
(亀山早苗)