株式会社新閃力 社長・尾崎えり子さんインタビュー(後編)

メディアが報じる“ワーキングマザー像”は極端 女社長が明かす、仕事と育児の両立のリアル

メディアが報じる“ワーキングマザー像”は極端 女社長が明かす、仕事と育児の両立のリアル
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「女性の活躍」「ワーキングマザー」という言葉が日々メディアに踊っているが、そこで理想として語られる“パワフルで完璧な女性像”に違和感を覚える人は少なくないのではないだろうか。仕事、育児、家事を全て100%の力でこなすのは不可能なのに、「そういう人物を目指すべき」という圧力を感じる……という本音は、ネット上でもよく見られる。

「24時間で全部完璧にやるなんて無理です」と断言するのは、株式会社新閃力の代表取締役である尾崎えり子さんだ。新規事業や商品のプロデュース、子どもと企業をつなぐ職業体験の場を提供するNPO法人コヂカラ・ニッポン副代表、早稲田大学国際寮グローバル人材育成プログラム講師などさまざまな分野で活躍している。育児をしながらバリバリと働く尾崎さんだが、講演会に登壇する際は子育て中のラフな服装に身を包み、「家事をさぼってもいい」と等身大の言葉を伝えるという。

そんな尾崎さんへのインタビュー前編では、産休中の正直な思いや、「ママ向け」「子ども向け」といった商品やサービスは作り手側に“当事者”がいないとビジネスが軌道に乗らないという話など、仕事に対する考えを聞いた。後編では、ワーキングマザーにたいする思いや、「一億総活躍社会」の課題、社会で力を活かすための心構えを伺った。

【前編はこちら】フリーランスのママの仕事は“自己実現”と思われがち 32歳、女性社長の挑戦

起業したら、精神的にも肉体的にも余裕が生まれた

――子育てについては、「新閃力」を作られてから変化はありますか?

尾崎えり子さん(以下、尾崎):自分の家が拠点なので、通勤時間が基本的にはなく私としても、心の余裕がすごくできました。熱が出て迎えに来てくれと言われたときに往復3時間かかっていた会社員時代と違い、体力と時間と精神的な疲れから解放されました。都内に通っているときは、また熱を出したのか……とイライラしていましたが、今は「まあしょうがないか」みたいな(笑)。気持ちの余裕ができましたね。

――気持ちの余裕ができるとお子さんに対して、接し方なども変わってきますか?

尾崎:そうですね。会社にいた時は会社でしかできないことを全部やってから帰ろうと思うのですが、家だと基本的には18時から子供が寝るまではパソコンはいっさい触らないようにしています。子供を寝かしつけたあとに、自分の部屋に行って仕事ができるので「子供の時間はここで集中」みたいなことができるようになりました。

ワーキングマザーはメディアの取り上げ方が極端

――ママになってから理想の働き方ができるかというと、ハードルが高いものですよね。

尾崎:メディアが取り上げるワーキングマザーって極端な取り上げられ方が多いですよね。経済的に厳しい状況に置かれながら働いているか、家事も育児も仕事もバリバリこなしてキャリアを築いていくすごいキラキラしているママか。世の中の0.1%くらいのキャリア女性にスポットをあてると、「自分はやっぱりあんなにバリバリ働けない」ってなってしまうし、「とはいえこんな厳しい環境で自分が通用するわけない」と思ってしまう。それってママたちや若い女性たちの結婚出産の一歩を止めてるなと思うんです。99.9%はキラキラしてないけど、大変だけど、幸せです、というのをしっかり伝えないといけませんよね。

尾崎えり子さんインタビュー(後編)

尾崎えり子さん

なので、講演では私は子育て中の汚い服を着て、汚い家の画像を映しながら「私こんなんです」というのを正直に伝えています。24時間で全部完璧にやるなんて無理ですからと絶対に話します。完璧なんてないし、家事をさぼってもいい。厳しい環境ももちろんあるだろうけれどもそれをうまくやってける方法があるんです、幸せになれるんです、みたいな話をするようにしています。

――「女性の活躍」や「一億総活躍社会」といったところで、ワーキングマザーも増えていくことが予想されていると思いますが、課題感を社会全体に感じることがありますか?

尾崎:一億総活躍の文字にもありますが、「活かす」ことができるかどうかだと思います。私はママだけでなく子ども達ともビジネスをやっているので、「知識もなく、経験もない子どもがどうやって実益を生むのか?」と何度も聞かれますが、「どうせ子どもでしょ」と思った時点で何も引き出せません。「自分たちになくて子ども達が持っているものは何なのか?」「逆に自分たちが持っていて、子ども達が持っていないものは何なのか?」「それをどう組み合わせれば新しいモノができるのか?」を活かす側が真剣に考える必要があります。ママに対しても同じです。「所詮、ママでしょ」というスタンスで話を聞いても、何も活かせないと思います。国なり企業なり自治体なりの「どう活かすか?」というスタンスが非常に重要だと考えています。

社会が「活かしてくれる」わけじゃない

――「活かされる側」のママ達や子ども達はどういうことを意識すればよいですか?

尾崎:当然ですが、何もしなくても社会が「活かしてくれる」わけではありません。ママや子ども達も「自分の今やっていることが社会とどう接続しているのか?」「今の自分がどんなことができるのか?」をしっかりと考えていく必要があります。子育ても「いつかこの経験を社会で活かしたい」と思って10年行うのと、「私、子育てしかできない」と思って10年行うのとでは、すごい差がうまれます。子どもたちも「今の勉強を社会で活かすぞ!」と思って勉強する10年間と「こんな勉強大人になったら使わないじゃん」と思って勉強する10年間とでは、圧倒的な差が産まれます。常に「これって何かに活かせられるかな?」と考えることが大切だと思います。

――尾崎さんはキャリアウーマンとして母として、今後どのようなことにチャレンジしていきたいとお考えでしょうか?

尾崎:私、ザビエルになりたいと思っているんです。日本各地を回って子どもやママさんたちに、キャリアの考え方を広げて、選択肢を増やしていくような活動をしたいです。講演、セミナー、プロジェクトなんでもいいんですけど、全国に渡り歩いてしゃべりたいというのがありますね。そのために、今はモデルケースをたくさん作っています。専業主婦から起業したようなモデルケースや、キャリアウーマンから一回仕事を辞めた人のケース、東京から地方に移住してキャリアを継続しているケース様々な働き方を集めています。

そして、できたら、子どもと一緒に全国回るというのが夢ですね。「ほら!あれが教科書に載ってる前方後円墳です!!!」「あれが、阿蘇山です!!」とか子ども達と一緒に日本を周りながら生きた学びができればと思っています!

キュートな笑顔と、時おりみせる真剣な眼差しが印象的な尾崎さん。育児と仕事の葛藤を乗り越えながら、道なき道を独自の方法で突き進む姿からは、経営者としてビジネスパーソンとして、現実から逃げずに前を見据えて生きる不退転の覚悟が感じられた。

■関連リンク
「コペルニクスの学校」公式サイト

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