シングルマザーのためのシェアハウスが話題になっている。今回、訪ねたのは、「シングルマザーの、シングルマザーによる、シングルマザーのためのシェアハウス」である、コドナハウスだ。運営者の潟沼恵さんは、ご自身もシングルでの子育ての経験者。経験を生かし、シェアハウスを設立するまでの経緯を語ってもらった。
仕事をがんばればがんばるほど、子どもとの時間が失われる
――潟沼さんが、ここを運営しようと思ったきっかけは?
潟沼恵さん(以下、潟沼):私自身が4年前に離婚したんです。当時、16歳と14歳の子を抱えて、とにかく仕事をしなければいけない。夫が自営業で、私も一緒に仕事をしていたものですから、離婚と同時に住むところも仕事も失ってしまったんです。
――うわ、大変でしたね。
潟沼:幸い、仕事も住居も見つかったんですが、そこからが大変でした。仕事は残業、休日出勤当たり前という会社で。がんばればがんばるほど、子どもと過ごす時間がなくなっていく。あげく、働いて収入が少し増えただけで、児童扶養手当も打ち切られてしまって、ますますがんばって働かなければいけない状態。
だけど、家の中を子どもたちだけにしておくのって不安だし心配だし。案の定、子どもたちがやさぐれ始めたんですよね(笑)。まあ、思春期だということもあるけど、やはり子どもたちと話す時間がとれなかったことが大きい。私のようなシングルマザーはたくさんいるはずだと考えて、シェアハウスを作りたいと思ったんです。
――仕事をしながら準備を進めたんですね。
潟沼:転職もして、2年前から準備にとりかかりました。休みの日などに、戸建て賃貸住宅を探しては、「シングルマザーのためのシェアハウスを作りたい」と大家さんにかけあって。でも99パーセント、ダメでした。不特定多数の人が出入りすることに懸念があるんでしょうね。
――大家としてはそうでしょうけど……。でも潟沼さんはあきらめなかったんですよね。
潟沼:ええ、どうしても作りたいと思ったから。そうしたら、ようやくここが見つかったんです。大家さんが理解ある人で、どうぞ使ってくださいと。とてもきれいで使い勝手のいい家なので、私がしたのは、各部屋に鍵をつける程度ですみました。
――4LDKですよね。LDKは共用で、4世帯入れる。
潟沼:そうです。1年前に始めたんですが、最初はどうやって募集したらいいかもわからず、苦労しました。シェアハウスは、普通の不動産屋では取り扱ってくれないんですよ。ネットのポータルサイトで扱ってもらうことになって、ようやく少しずつ認知されるようになってきています。
15歳以下の子をもつ母親なら入居可能
――入居にあたっては、けっこう厳しい条件があるんですか?
潟沼:いえ、特に(笑)。会って話して、なんとなく通じるものがありますから。一応、いろいろ決めごとも作ってはいるんですが、それも臨機応変にそのときに応じて対処していきましょうということになっています。
――トラブルとか揉めごととかありました?
潟沼:それが、一度もないんです。若干、人が入れ替わって、今はこの夏に赤ちゃんを産んだ女性と、シングルマザーとお子さんひとりが2世帯、あと1部屋も年内に埋まる予定です。でも今までに揉めたとかトラブったとかはまったくないですね。みんな子どもの年齢は違っても、状況が似ているから、お互いに譲り合ったり声をかけあったりして、うまく暮らしているようです。
――キッチンやお風呂はひとつですよね。誰がどういう順番で使うとか、決まりはあるのでしょうか。
潟沼:決めてないんです。お母さんが仕事から帰る時間帯にもよりますしね。ここは最大で4世帯だから、そのあたりは話し合えば調整できるんですよ。もっと大きい家だとむずかしいかもしれない。
週に2回のシッターサービスも
――夕食を出してくれることもあるんですか?
潟沼:ええ。シッターサービスといって、週2回、希望する人には夕食を作って、子どものめんどうもみます。私と保育士さんでサービスしています。その日は、お母さんは夜、残業してもいいし、同僚と飲みに行っても友だちと夕飯を食べてもいい。デートしてきてもらってもかまいません。たまにはお母さんが気を抜く時間も必要でしょう?
――そうすれば、子どもがひとりで食事をすることも減るわけですよね。
潟沼:シッターサービスの日は、必ず大人がいます。ふだんも、誰かしらリビングにいる時間がけっこうあるんですよ。今は産休の方がいるから、他の子が学校から帰ってきたときも「お帰り」と声をかけてくれる。シングルマザー世帯は、どうしても母と子の家庭生活が閉鎖的になりがちなんです。ここには、いろいろな価値観を持った大人が出入りするから、それもいいことだと思います。
それにここは住宅街で、ご近所の方たちが全然偏見なく気にかけてくれるんですよ。裏に民生委員の方が住んでいて、以前、ある子が熱を出したとき、どうにもならなくて民生委員の方に助けを求めたんです。そうしたらすぐ来てくれて、その子のめんどうをみてくれ、温かいうどんまで作ってくれた。この土地だからこそ、うまくいっているということもあるかもしれません。
【後編はこちら】シングルマザー専用シェアハウス 入居者親子の声を聞く
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(亀山早苗)