『芸人の嫁になりました。』著者・カキウチユウコさんインタビュー(後編)

バレンタインには全身にチョコレート!? 『芸人の嫁になりました。』の著者に聞く、芸人の嫁としての苦労とは?

バレンタインには全身にチョコレート!?  『芸人の嫁になりました。』の著者に聞く、芸人の嫁としての苦労とは?

著者・カキウチユウコさん3

売れないマンガ家と、売れないお笑い芸人の結婚生活をつづったコミックエッセイ『芸人の嫁になりました。』(サンマーク出版)。著者のカキウチユウコさんに、気になる結婚生活の実情をお聞きしました。

>>>【前編はコチラ】芸人の月収は? 浮気は心配じゃない? 『芸人の嫁になりました。』の著者に聞く「芸人との結婚」の実情とは

生活をネタとして切り売りされ、会話やサプライズにもダメだし

―― 一般家庭にはない、芸人の嫁としての苦労はありますか?

カキウチユウコ(以下、カキウチ):生活をネタとして切り売りされる、ということはあります。例えば、事務所の先輩たちに「童貞卒業記念に、彼女との初夜を官能小説風にレポートして」と言われたり。最初は戸惑いましたけど、今はもう慣れました。私のほうも、彼のことをマンガのネタにしているのでお互いさまですね。芸人さんとの結婚生活は、マンガ家としておいしいことだらけです(笑)。

結婚して一緒に生活するようになってうんざりしたのは、何でもかんでもヤジを入れること。芸人の会話の基本はバトルトークだから、テレビを見ていてもヤジるし、私との会話もすぐ否定してくるし、これは正直かなりムカつきます(笑)。でも、普通のトークが習慣化して、外でのトークがつまらなくなったと思われるのはイヤなのでこれも葛藤ですね。

あと、こないだバレンタインデーにサプライズをしようと、全身にチョコレートをデコレーションして彼の帰りを待っていたんです。そしたら「フリが甘いよ!」とまさかのダメ出し! 「帰宅前にメールで、それらしきメッセージを1本送ってくれなきゃリアクションも取れないだろ」って。こんな感じで、笑いに厳しい家庭です。

――でも、普段からサプライズがある家庭は素敵だと思います。旦那さんもサプライズすることはあるのでしょうか?

カキウチ:彼は根っからのサプライズ好きで、これまでもさんざん驚かされてきました。親戚に結婚を報告する食事会のときさえサプライズがあり、段取りにない「夫婦漫才」をやらされました。しかも、彼は全身タイツで、私はマジックショーのアシスタントみたいなチャイナドレス(笑)。彼は、こんなときまでとにかくウケたいんです。

うれしかったサプライズは、付き合っている当時の誕生日プレゼントですね。彼から「赤井ちゃんていう、会わせたい友人がいるから○○駅に来てよ」と隣駅まで呼び出されました。着くと彼しかいなくて「赤井ちゃんは?」と聞いたら、「これ!」と言って彼が赤い自転車をくれたんです。私が以前、自転車がほしいと言っていたことと、父親が赤い自転車に乗っていたという思い出話をしたことを覚えていてくれて。

こういう、何気ない話を覚えていてくれるサプライズは本当にうれしいですよね。ただ、私達はお互いサプライズが好き過ぎて、いかに相手を驚かせるかの勝負になっていますが。皆さんも、もしサプライズするなら、相手が本当にほしいものがおすすめです(笑)。

著者・カキウチユウコさん4

涙ながらに苦労を語るカキウチさん(※著書の販売促進のため、出版社が用意したかぶりものです)

夢を目指す苦労を分かち合える仲

――付き合って1か月半でプロポーズ、8か月目で入籍。かなりのスピード婚ですよね。

カキウチ:それでも、本当に一緒にいるのが楽しくて、この毎日をキープしたい、それなら結婚もありだと決断しました。

収入面のこと以上に迷ったのは、お互い夢を語り合って仲良くなったので、「結婚することで芸人としての夢がダメになってしまったらどうしよう」という葛藤はありました。特に彼は“童貞”がひとつの持ちネタだったので、付き合ったり、ましてや結婚して、今よりおもしろくなくなったら申し訳ないですよね。

でも、「こないだまで童貞だった芸人さんとすぐ結婚っておもしろい」という気持ちもあって。彼のほうも、そういう考えはあったと思います。私もマンガ家で彼も芸人なので、ネタになると思ったら好奇心が勝ってしまうんです(笑)。

――憧れはあるけど、やはり苦労が耐えない「芸人の嫁」。それでも彼に惹かれた理由はなんですか?

カキウチ:彼と最初に出会ったとき、見た目もボロボロだし、すごく変で怪しい人だなと思っていたんですが、少し話したらすぐ打ち解けて急速に仲良くなりました。芸人としても、ラジオやライブを見て絶対に売れると心から思って応援し続けています。

私もマンガ家を目指していたけど全然売れなくて、彼もがんばって芸人を続けていて、土台が似ていたんです。私の夢を応援してくれる友達はいましたが、やっぱり表現している当事者にしか分からない苦労や心境があって、本音では話せませんでした。それを全て分かってくれて、彼は私にとってかけがえのない存在になりました。友人としての関係が崩れることを恐れて、男女の仲になることも悩んだくらいです。

『芸人の嫁になりました。』が出来上がって、本を持って彼と一緒に芸人さんたちに挨拶に行ったときにも、芸人さんたちは本当に温かい言葉を掛けてくれました。芸人さんは努力と苦労を知っている人たちだから、努力している人に対しての思いやりが深いんです。金銭面は不安定で、浮気の心配もあるかもしれませんが、芸人さんはすばらしい心を持った人たちだと思います。

それぞれの夢を応援しあっているカキウチさん夫婦。お互いに「何か苦労があっても、すべてネタにしてやる!」という根性が備わっているところが印象的でした。彼を信じて応援し、逆境もおもしろがれる強い女性は、芸人の嫁としてだけでなく、あらゆる男性にとって心強い嫁ではないでしょうか。この夫婦から見習う点は多そうですね。

●カキウチユウコ
1980年東京生まれ。高校卒業と同時にイラスト・マンガの持ち込みを始める。2007年9月、とのいえちお名義『となりのホストくん』(幻冬舎)でマンガ家デビュー。2010年3月より、アメーバブログ「芸人と結婚しました!」を開設。2013年12月、2冊目の単行本『芸人の嫁になりました。』(サンマーク出版)発売。

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

バレンタインには全身にチョコレート!?  『芸人の嫁になりました。』の著者に聞く、芸人の嫁としての苦労とは?

関連する記事

編集部オススメ

2022年は3年ぶりの行動制限のない年末。久しぶりに親や家族に会ったときにふと「親の介護」が頭をよぎる人もいるのでは? たとえ介護が終わっても、私たちの日常は続くから--。介護について考えることは親と自分との関係性や距離感についても考えること。人生100年時代と言われる今だからこそ、介護について考えてみませんか? これまでウートピで掲載した介護に関する記事も特集します。

記事ランキング