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9月29日から10月7日まで、パリではファッションウィークが開催され、約100ブランドによる2016年春夏コレクションが発表されました。
モデルがモデルをかついだショーが話題に
様々な有名デザイナーのショーの中でも、日本のネットでも大きな話題を呼んだのがリック・オウエンス。歩くモデルの前面、後面にもう1人のモデルが結び付けられ、2人が一体となった斬新なスタイルは多くの人の度肝を抜きました。
「女性を支える女性」をテーマにしたそうで、女性同士の結びつきや繋がり、新しい生命体の誕生など、デザイナーの表現したかったことを様々に解釈する人たちも多かったようでした。
「文化の盗用」=「白人による非白人の文化表現」
そんな中、海外ではヴァレンティノのコレクションに批判の声が相次いでいます。それは、テーマが「アフリカ」だったにも関わらず登場した黒人モデルは87人中8人で、90%以上が白人モデルだったという「人種差別」だとする声。そしてそれと相まって、ランウェイに登場した白人モデルたちの頭が、アフリカ発祥の編み込みのヘアスタイル“コーンロウ”だったことに対して「白人による文化の盗用だ」とする声です。
文化の盗用とは、「白人が非白人の文化を借りてくる」ような表現がなされた時に指摘されることで、海外ではセンシティブな話題としてたびたび問題視されています。白人が差別の意識なく気ままに非白人の文化をまとったり脱ぎ捨てたりすること、そして様々な背景を持つ文化が単なるファッション・アイテムとして集約されてしまうことが懸念されているのです。
「人種差別の風刺では?」といった批判の声が相次ぐ
ヴァレンティノ側は、「原始的で気高く、堂々としたイメージは野性的なアフリカの部族にインスパイアされた。今回のショーは時間の始まりと原始的な自然の本質への旅である」という説明をしています。
しかし海外のネットユーザーからは「植民地の人種差別を風刺しているってことだよね」「『アフリカ』を表現するのに白人モデル……。もはや冗談にしか思えない」「黒人モデルが不足していたことは考慮されても、コーンロウが最もダメな点だ」「ちゃんと説明してほしい」といった批判の声は止んでいないのが現状のようです。
日本人も今後は「文化の盗用」への意識が求められることも
昨年は、日本でも人気を博すオーストラリア出身モデル、ミランダ―・カーが『VOGUE JAPAN』で披露した芸者姿が、「文化の盗用」だと海外の一部では批判がありました。先日はニューヨークのシアターカンパニーが12月に公演予定だった、日本っぽさを強調したメイクで日本っぽいキャラクターを白人俳優たちが演じる喜劇「ザ・ミカド(The Mikado)」に対してアメリカに住むアジア系コミュニティから抗議の声が相次ぎ、公演中止になるという事態も起きました。
参考記事:大炎上した日本風オペラ「ザ・ミカド」はなぜ怒りを買ったのか(外部リンク)
日本に住んでいると、上記のような出来事の深刻さは正直、理解しにくいという人が多いかもしれません。しかし、自身への鈍感さは他者への鈍感さにつながってしまうこともあります。こうした人種間のトピックに注目することは、議論されている移民問題を考える際だけでなく、周辺にいる外国人とのコミュニケーションにおいてもとても大切になってくるでしょう。
参考記事:/The Huffington Post/ESSENCE/METRO