女子プロレスラー・朱崇花さんインタビュー

「女子として戦うことに意味がある」 性同一性障害の女子プロレスラー、16歳の決意

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「女子として戦うことに意味がある」 性同一性障害の女子プロレスラー、16歳の決意
朱崇花さん

朱崇花さん

生まれ持った体は男性、心の中は女性という性同一性障害の診断を受け、今年の8月9日に後楽園ホールで女子プロレスラーとしてデビューした高校生がいる。16歳の朱崇花(あすか)さんだ。格闘家の父を持ち、幼い頃から格闘技に親しんできた彼女は、一方で自分の性に疑問を持ち続けてきたという。診断を受けてから、わずか約1年で女子プロレスラーとしてデビューした朱崇花さんに、今の気持ちを聞いた。

幼い頃から浜田文子選手に憧れていた

――朱崇花さんが女子プロレスラーになりたいと思ったきっかけを教えてください。

朱崇花さん(以下、敬称略):きっかけは現在同じ団体に所属している浜田文子選手です。子どものときにリングで活躍する彼女を見たのが最初でした。それまで、仮面ライダーのようなアクションものにはまるで興味がなかったんですよね。だけど浜田選手を見て、まさに理想の女性像といった印象を受けて、自分もこうなりたいと思いました。

――初めて自身のことを女性だと認識したのはいつごろだったのでしょうか?

朱崇花:幼いころの記憶はあんまりないんです。ただ、母によると姉の服を着たりお人形遊びをしたりするのが好きだったらしいです。自分で覚えているのは、物心がついたときにサッカーやカードゲームに誘われるのがイヤだったこと。本当は女の子同士で話したりするのが好きなのに、とジレンマがありました。姉と妹がいる女兄弟の中で育ったので、その影響も受けていたんだと思います。

母の期待を裏切りたくなかった子ども時代

――女の子と仲良くしていることで、周りから何か言われたりしたことはありましたか?

朱崇花:母は、女性らしい趣味や雰囲気を心配していたようです。女兄弟の中の唯一の男とあって、私に対して男性としての期待もあったんだと思います。だから、私が浜田選手に憧れて「格闘技をやりたい!」と言ったときは、「朱崇花も男らしいところがあったんだ」と安心したみたいです。

その気持ちに気づいて、自分が女性としての意識を持っていることを誰よりも母に知られたくないと思うようになりました。格闘技に対しては純粋な気持ちもあったんですけど、格闘技をやっていることでそれをごまかせるかなという思いもありました。でも去年、母についにカミングアウトしたんです。

――カミングアウトしようと思ったのはなぜですか?

朱崇花:最初に話した相手は父親なんです。両親は今、離婚して別々に暮らしているので言いやすかったのもあり、ふたりで話していたときの流れで伝えました。それで父から母に言ってもらいました。家族にわかってもらったというのもあって、病院に行き「性同一性障害」だという診断を受けました。診断されて、形として症状がわかったのがホッとしました。

たくましい体になることに葛藤も

朱崇花さん

――最近はLGBTに関するニュースが増え、徐々に関心が高まっていると思います。この風潮に背中を押された部分というのはあったのでしょうか?

朱崇花:それはすごくありました。テレビで活躍されている方も多いので。

カミングアウトしたことについて、自分自身でも本当に言ってよかったのかわからない部分もあります。ただ、話したことで楽になれました。私の場合、家族にだけは一番知られたくありませんでしたが、その家族に理解してもらえたことが大きいですね。

あとはカミングアウトすることでだいぶ肩の荷がおりて、思った以上に女性になりたいと思うようになっていました。「女性としてプロレスがやりたい」と強く思って今の団体にメールしたので、カミングアウトしていなかったらこの道を選んでいなかったかもしれません。そう考えると、話してよかったなって思いますね。

―格闘技をすると、筋肉がつき、たくましい体型になっていくと思います。それについて抵抗はなかったのですか?

朱崇花:ものすごくありました。小5くらいから、体格ががっちりして筋肉がついてきて、男として扱われることも多くてそれがイヤで仕方ありませんでした。それでも当時は母親にバレたくなくて、格闘技はやめられなかったですね。

今でも、体型ががっちりしていくのがイヤな気持ちもあります。でも、テレビでマツコ・デラックスさんが「何かをするためには、何かを犠牲にしなければいけない」と言っていたんです。「女子プロレスをやりたい、でも体が大きくなるのはイヤだ」と思っていたのですが、自分が得たいものは全部は得られないのだと気づかされました。だからその葛藤もありますが、プロレスラーでいたいという気持ちを大事にしています。

もっとワザを増やして、世界を目指したい

朱崇花さん

――デビュー戦の相手は女性レスラーでしたが、周りからは、体は男性である朱崇花さんに対して男女の力の差を指摘されたりしたことはありましたか?

朱崇花:一般の意見はわからないですけど、とくに言われたことはないです。プロレスの世界にはいろんな人がいるし、男性より強い女子レスラーも多いですから(笑)。でも、自分の中では女子としてデビューすることに意味がありました。だから、女子プロの選手として憧れだったリングに立てたことに素直にうれしかったです。試合は家族も来て応援してくれて、終わった後に「すごくよかったよ!」と言ってもらえたのも自分の中で大きな励みになりました。

――これからどんな女子プロレスラーになりたいですか?
朱崇花:初戦では、次のワザを出すために頭の中で考えながら攻撃しなければいけないので難しかった局面もありました。これから世界を目指してプロレスをやってきたいので、そのためにもっとワザを増やして相手を追い込めるようにしたいです。もっともっと練習して、いつか憧れの浜田選手とも戦いたいですね。

まだ16歳の格闘家とは思えない、柔和で落ち着いた語り口の朱崇花さん。好きな芸能人は藤木直人と言い、「事務所の先輩方みたいに、もっと女子力を磨きたい」とはにかんだ。迷いなく、強く美しい女性を目指す彼女を応援したいと思う人はきっと多いだろう。

(成瀬瑛理子/プレスラボ)

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