やりたい仕事と向いている仕事、どちらを選択するべきなのか。
女優の能年玲奈が事務所との対立で引退の危機と報じられている。それらの記事の真偽はわからないが、一部では、事務所側で受けた仕事が、能年の「やらない」の一言で白紙になったとも報じられている。NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』で国民的な人気を得た女優が、なぜこのような残念な現状になってしまったのか。その原因から、「やりたい仕事と向いている仕事、どちらを選ぶべきなのか」という問題を紐解いていく。今回、大手企業の総合職から週刊誌の芸能記者に転職した女性に話を訊いた。彼女にいわせると、芸能界も一般企業も女性のキャリアプランには実はそうそう差がないという。
やりたい役ができないのは女優にとって苦しいこと
Q: 能年玲奈さんがブログでなにかすると、すぐに、ニュースになります。みんな能年さんがスクリーンやテレビで活躍するのを見たいのに、出てこないのが残念です。
A: 能年さんと事務所は、方向性での対立があったと報じられていますね。映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』への出演オファーが能年さんに対してあったのに、事務所が断ってしまった。能年さんは同作に出ることを熱望していたので、とても悲しんだとも書かれています。役者にとっては、やりたい役を他の人がやるのは辛いことです。“私だったらこうやるのに”と悔しくてたまらなかったのでは。
でも、事務所は意地悪でそうしたわけではありません。女優を大作映画に出せばギャランティが入ってくるんですから、短期的な利益を考えたら、オファーを受けさせます。ですが、10年後の女優のキャリアを考えたときに、損になると判断するから蹴るわけです。
能年さんは映画『ホットロード』への出演に難色を示していたとも伝わっています。原作は古典的な少女漫画で、ヒロインは親との関係で傷ついていて、不良の少年に惹かれていく役です。現代風ではないし、明るい役ではない。能年さんからしたら全然魅力的じゃない仕事だったのかもしれませんが、映画は大ヒットして、能年さんの株は上がりました。結局、事務所が『ホットロード』に彼女を出演させたことはキャリアを考えたら、正解だったようにみえます。本人のやりたい役と、向いている役が違ったのかもしれません。
向いていることの方が“稼げる度”は高い
Q: やりたい仕事と、向いている仕事はどちらを選択するべきか。女優みたいな特別な仕事だけじゃなくて、すべての人にかかわる問題でもありますね。
A: 向いていることの方が、絶対に“稼げる度”は高いですよね。エッセイストの中村うさぎさんは書くことが好きじゃなかったけれど、執筆に向いていると言われて、コピーライターに転職し、その後、小説でヒットシリーズを出しました。
また、大物俳優の娘は、ニュースキャスターを希望していて、局アナになりましたが、退社後に司会や歌で能力を発揮して、マルチタレントとしてブレイクしました。でも、彼女にはニュース番組の仕事は無理でしょうね。なぜかというと、全然、勉強してこない人だからです。ある仕事の場で、他の女子アナはちゃんと資料を読んできたのに、彼女だけは目も通してこなかったということがありました。報道の仕事は、本やデータを読みこむのが必須ですから、それができない人には向かないんですよ。『NEWS ZERO』(日本テレビ系)のキャスターの山岸舞衣さんは実はそのあたりの前準備がちゃんとできる人でした。
向いていない仕事は一生の仕事になりにくい
Q: どんな仕事に向いているかというのも、自分でなかなかわからないものだと思います。それを見つけるにはどうしたらいいのでしょうか?
A: 30歳前後になってくると、社会人経験も積んできて、自分の向き不向きや、できることとできないことの見当はついてくるんじゃないでしょうか。女性であれば割と気軽に転職を考える人も多いと思うので、それを向いている仕事に出会うチャンスと捉えるのもありなのではないかと思います。ただ前提として、どんな仕事だろうと、キャリアを積むことは辛くて嫌なことの積み重ねで、上手くいくかどうかはそれを承知しているか、否かじゃないでしょうか。
俳優の成宮寛貴さんは、つまらない仕事をやるときのモチベーションについて、「職業として俳優を続けるためには、気が乗らない役でもきちんとやって結果を出すべきだから」というような話をインタビューで答えていました。ただ、その辛さや退屈を乗り越えるには、自分がそれを“得意”である方がいいのかな、って思います。向いていない仕事をやっていても、結果は出しにくいので、一生の仕事にはなりにくいでしょう。「やりたくないからやらない」ではなく、向いている仕事、得意な仕事で結果を残す、というふうに気持ちを切り替えることで、結果的に「やりたい仕事」ができるようなキャリアを築けるようになるのではないでしょうか。