セクシュアル・マイノリティーズとの付き合い方について、短いストーリー形式で考える連載「LGBTsさんといっしょ。」私こと「まきむぅ」と、私の妻である「モリガ」との会話をもとにお送りします。おしゃべりする気分でいっしょに考えていきましょう。
今回のテーマはこちらです。
Q.この間、友達から恋愛相談を受けました。彼女は私の男友達に一目惚れしたそうなんですが、実はその男友達、ゲイなんです……。なので彼女に「彼はゲイだから女には興味ないよ、諦めな」って教えてあげたいんですが、大丈夫でしょうか? そういうの勝手に言っちゃいけない気もするけど、かといって男友達の方に「あなたがゲイだって彼女に言っていい?」って聞くのも変な気がするし、どうしようか悩んでます。
まきむぅ「確かに、これは悩むな~」
モリガ「そうだね、『紹介してよ~』とか言われそうだし」
まきむぅ「一番めんどくさいパターンは『なんでゲイだって早く教えてくれなかったの!? ひどい!! 私のこと陰で笑ってたんでしょ!?』みたいなやつね」
モリガ「あぁ……」
まきむぅ「……」
モリガ・まきむぅ「はぁ~……」
モリガ「まぁ、全員で悩んでてもしょうがないね。ちゃんと考えよう。どうしたらいいんだろう?」
まきむぅ「私は、言わないべきだと思う」
モリガ「どうして?」
まきむぅ「だって、人に言われてどうこうできるものじゃないじゃない、恋って」

イラスト:小池みき
親切心にもひそむ危険、“アウティング”とは?
まきむぅ「それにね、恋だとかゲイだとかそういう話に限らずね……やっぱりあんまりよくないわよ。人の心の中のものを、勝手にさらけ出しちゃうようなことって」
モリガ「そうだね……噂話が好きな人だっているけど、そういう人だって自分のいろんなことを勝手にバラされるのは気持ちのいいこととは言えないだろうしね」
まきむぅ「うん。そういう中でも、性のあり方に関わること……例えば『彼はゲイだ』とか『あの人は元男子で、手術をして女になったらしい』とか、そういうことを本人の同意なく他人に言うことは『アウティング』と呼ばれるわね」
・アウティング(outing/出す=他人が勝手に話すこと)
まきむぅ「だから、基本は『彼はゲイだ』なんて勝手に言うとアウティングになっちゃうわけ。親切心からもやってしまいがちなんだけどね。『彼はゲイなのに片思いしてる彼女がかわいそうだ』とか、『この女性は元男性だから理解と配慮をしようってこと、代わりに私がみんなに呼びかけよう』みたいな」
モリガ「そうだねぇ……。『ゲイだ』ってことがよそでどう伝わるかもわかんないし、言うかどうかは本人だけが決めることだよね。だけどさ、本人に『ゲイだって他の人に言っていい?』なんていうのも聞きにくい質問だよね? なんだかゲイであることを隠すべき悪いこと扱いしてるみたいに聞こえかねないし、『なんで言いたいの?』ってなるし」
まきむぅ「それじゃあ、こう聞くのはアリなんじゃないかなぁ」
オープンリーゲイとクローゼットなゲイ
・「自分がゲイだってこと、オープンにしてる?」
まきむぅ「こういうふうな聞き方をすればいいんだと思う」
モリガ「なるほど。『ゲイ』に限らなくても、わりとなんでも使えそうな表現だね」
まきむぅ「そうでしょう。今は『ゲイだってこと、別に隠さないよ~』って人もいる時代だしね。『そもそも“隠さなければならないこと”扱いされていること自体がおかしいよね』とか。ということで『オープンにしてる?』みたいな聞き方ならまだアリだと思うけど、仮に『オープンにしてるよ』って言われたとしても、最終的には本人の意思を尊重するべきよね。難しいけど、その女友達の名前を出さないようにしつつ『あなたのこと好きだって言う女の子に、あなたがゲイだって伝えてもいい?』って聞くとか。今回のことは『ゲイとノンケ女子の間のこと』である前に、人間と人間のあいだでのことなんだから」
モリガ「そうだね。結局は、ゲイかどうかとか関係なく、『他人の恋愛に口出しするものじゃない』っていう話だと私は思うなぁ……。」
今回のまとめ
×「女がゲイに片思いなんてかわいそう。彼はゲイだって彼女に教えてあげなきゃ」
×「この人は自分が性同一性障害だってこと、みんなにわかってほしいに違いない。この人の代わりに私が、差別をやめるように訴えよう!」
○「あなたが同性と付き合ってるってこと、私の他には誰かに話してる?」
○「自分がゲイだってこと、オープンにしてる?」