「肉フェス」主催・AATJ杉﨑健二代表インタビュー

肉を日本発のエンタテインメントに! 肉フェス仕掛け人が語る165万人の心を掴んだ理由

肉を日本発のエンタテインメントに! 肉フェス仕掛け人が語る165万人の心を掴んだ理由
肉フェス成功の秘密を主催者に直撃

「門崎熟成肉 格之進」(「肉ロックフェス」参加予定)

2014年春にスタートし、すでに来場者累計が約165万人を数えた「肉フェス」。近年のフードイベントの中では、ダントツに成功しているが、果たしてその成功の秘密とは何だろうか。主催するAATJ株式会社の杉﨑健二社長に「肉フェス」誕生の経緯を伺った。

日本の畜産業をエンタテインメントで支えたい

――そもそも「肉フェス」着想のきっかけは何だったのでしょうか。

杉﨑:僕らは、音楽を中心としたエンタテインメントの会社で、主にコンサートやイベントなどを主催しています。2013年に「クールジャパン」の一環で「Tokyo Crazy Kawaii」という日本のポップカルチャーやファッションを紹介するイベントをパリで開催したんですね。会場内に「築地」という日本食のエリアを設けてマグロの解体ショーなどを行ったんですが、思った以上に強い反応があったんです。

僕らは常々、エンタテインメントに何を組み合わせるかを考えているのですが、それがきっかけで「食とエンタテインメント」の企画を考え始めました。ちょうどその頃、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)のニュースがあり、日本の畜産業が苦境に陥る可能性があると報じられていたので、僕らが何かサポートできないかと、日本の肉を世界にプレゼンする「肉とエンタテインメント」のイベントを思いつきました。

日本人が知らない豪快な肉の食べ方がある

肉フェス成功の秘密を主催者に直撃

将泰庵(「肉ロックフェス」参加予定)

――TPPの報道以外に、ここ数年のバーベキューブームの影響もあったのでしょうか。

杉﨑:僕も毎週のようにバーベキューを楽しんでいますが、それより、仕事でアメリカやパリなど世界中を回り、海外の肉文化に触れる中で、日本は食べ方のバリエーションが少ないなと感じていたんです。それで、もっと豪快でワイルドな肉の食べ方の提案をしたいと思ったんです。

――「日本の食べ方はバリエーションが少ない」と言いますと?

杉﨑
:日本ではバーベキューや焼肉が人気ですが、家庭で食べるのは、スーパーで買うパックの肉ですよね。でも牛肉にはいろんな部位があり、「プライムビーフ」だとかグレードもあって、それによって食べ方も変わります。「シャンビリオンステーキ」といったら、どの部位でどれだけ価値がある肉が使われているのか、それを日本人はあまり知りませんよね。その知識を広めることで畜産業もビジネスとしてさらに発展する可能性があるのではないかと考えています。

肉フェス成功の秘密を主催者に直撃

5月に開催した第三回「肉フェス」(駒沢公園)

――当初、ここまで成功すると予想していましたか?

杉﨑:いえ、全く。予想より女性の反応がよく、来場される方の男女比率は半々です。年代は女性が20~30代、男性は20~50代の方が多いです。

――来場者が累計165万人だそうですが、一般にバーベキューや焼肉が定着したことも影響しているんでしょうか。

杉﨑:どうでしょうか。肉フェスでは、実は焼肉のブースは少なく、今の一番人気は熟成肉です。ジャンルが偏らないように出店いただいていますが、来場される方には「肉」だけではなく、青空の下で肉とビールを楽しむ、1つのエンタテインメントのパッケージとして支持をいただいていると思いますね。

ロックが加わり「肉ロックフェス」へ進化

――9月には「肉ロックフェス」を予定されていますが、出演アーティストは「電気グルーヴ」「ACIDMAN」「OKAMOTO’S」「STARDUST REVUE」「LINDBERG」など本格的な音楽フェスですね。

杉﨑
:実は、僕がRED WARRIORS(※)のライブがどうしても見たくて、ダイアモンド●ユカイさん(●は六芒星)にコンサートのオファーをしたところ、快諾していただきまして。多く来場される40代50代は食にこだわりがあり、飲み物もありきたりのビールでは不満でしょうから、コンサートに「肉フェス」が合体したら満足いただけるのではないだろうかと。他にもいくつかのバンドから、「肉フェスと一緒にやりたい」というオファーをもらって、それで「肉ロックフェス」になりました。

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RED WARRIORS

(※)RED WARRIORS ダイアモンド●ユカイ(●は六芒星)、元レベッカの木暮武彦(shake)、小川清史によるバンド。1985年に結成、1989年に解散。その後2度の再結成と解散を経験し、2007年より活動期間にこだわらない復活をする。

どれだけバカなことが言えるかが成功のカギ

――「肉フェス」もそうですが、「肉ロックフェス」も、ネーミングのセンスがキレてますね。これはどのように決定されたんですか

杉﨑
:僕らは音楽の会社ですので、僕らがやるイベントだったら「フェス」だろうと。それで、肉のフェスだから「肉フェス」。単純ですが、食のイベント、さらに音楽以外で「フェス」という言葉を使ったのは僕らが初めてでしょうね。

「肉フェス」の語感も、くだらなくてバカっぽい感じがありますよね。でも、バカみたいなことがエンタテインメントにつながるんですよ。この業界は言葉遊びも得意ですし、どれだけバカなことが言えるのか、どれだけくだらない提案ができるかがキモなんじゃないかなと思います。

肉フェス成功の秘密を主催者に直撃

焼肉IWA(「肉ロックフェス」参加予定)

休日の選択肢としてディズニーランドと並びたい

――肉フェス以外にも肉をメインにした類似イベントが増えたと思うのですが。

杉﨑:これは日本に肉ブームが来ている表れだと思います。まあ商標侵害があれば問題ですが。

――他の肉系イベントとは違う、「これが肉フェスのウリだ!」というのは?

杉﨑:お客さん目線のホスピタリティです。他のフードイベントでは、お店を集めるだけ集めて、食べる場所が用意されていなかったり、清潔ではないところもあります。でも、僕らは、お客さんがどういう店で買って、どういう場所で食べて、どうやって帰っていただくかまでこだわりたい。「東京ディズニーランドに行きますか? それとも肉フェスに行きますか?」と、休日の選択肢として東京ディズニーランドに並ぶくらいになりたいですね。

――畜産業以外の、たとえば漁業関係の方などから、「ぜひ魚で」というようなオファーがあったりは?

杉﨑:そうですね。そういったこともちらほら。うちではすでに「魚フェス」「寿司フェス」「まぐろフェス」の商標登録もしていますから、期待していてください。

肉フェス成功の秘密を主催者に直撃

杉﨑健二社長

(穂島秋桜)

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