先日、26歳のアメリカ人女性がアメリカのクラウドファンディングサービス「indiegogo」に妊娠中の子どもの養育費を募集したことが話題になりました。それだけでなく、なんとその女性は「目標金額である100万ドルが集まらなければ中絶をする」と、宣言をしたことでネットは大炎上。「子どもを利用した脅迫まがいのお金儲け」「これでお金が集まったら全ての妊婦に100万ドル与えるべき」など、多くの批判を呼びました。
そこで、クラウドファンディングサービス「MotionGallery」を運営する大高健志さんに、日本ではこのような事例はどう扱われるのか、資金を募集できるプロジェクトの定義など詳しいお話を伺いました。
日本の会社の多くは取り扱わない今回のケース
――まず今回のアメリカ人女性の件について、どう思われましたか。
大高健志さん(以下、大高):まず、「indiegogo」は「良いプロジェクトかどうかは、応援する側が判断する」という非常にアメリカ的な考え方を事業形態として打ち出しています。詐欺的なプロジェクトを防ぐ審査は行っていると思いますが、倫理性や道徳性などの観点に関しては、それを見て応援する側の判断に委ねている部分が大きいと思われます。その為、そのサービスを提供する側と利用する側の間という観点では問題ないとは思います。
個人的な感想としては、倫理観としてこの女性の行動については疑問ですし、目標金額に到達しない場合にある種の脅しとも取られかねないメッセージが発せられるケースは見たことがありません。
――会社によっては、今回のような私的なプロジェクトも取り扱っているのでしょうか。
大高:そうですね。ただ、ここ数年で日本もクラウドファンディングのサイト数が急増している事もあり、その会社によって、そういったプロジェクトを受け付けるかスタンスに違いが出てきているとは思います。
弊社の場合はあくまで社会に新しい体験・価値観をもたらす創造的なプロジェクト(作品)を審査で通しているので、今回のような私的なものは取り扱いません。
留学費用など、プロジェクト実現に直結しないものはすべてNG
――では、MotionGalleryではどのようなプロジェクトがNGになりますか。
大高:今回のような人生のプライベートな物事はもちろん、美容効果・健康効果を謳った、化粧品や洗顔料など、つまり支援者との約束が最初から曖昧もしくは測定不可能なものはNGです。後者は、最近日本のサイトでも増えていて個人的にはどうなんだろうと思う部分もあります。
以前あったのは映画監督になりたいから海外の映画学校への留学費用を募集したいという投稿でした。いつかは監督になって作品を生み出すという考え方があるかもしれませんが、その資金が作品制作に直結するわけではないですよね。私的か公的かはグレーな部分もあると思いますが、学費関連の投稿についてはすべてNGにしています。
――会社がどんなプロジェクトを扱うのかというスタンスを明らかにしていくことが大事なのですね。
大高:その会社がオープンでフェアなやり方をしているかですよね。「審査が厳しいので安全なサイト」と謳っているのに、フタを開ければそういうプロジェクトが掲載されてしまうということが一番トラブルになりやすいと思われます。どのようなプロジェクトを掲載させるのか、考え方や定義を明確にしないとトラブルが起きてしまうと思います。そういった意味では、今回のケースでは「indiegogo」を普段利用しているユーザーからすれば、クラウドファンディングやそのプラットフォームへの不信感には繋がっていないと感じます。
お金を出してもらった支援者を放置してはダメ
――何か自分のプロジェクトを投稿したいという人が気を付けるべきポイントはありますか。
大高:基本的に購入型のクラウドファンディングは、誰かのプロジェクトを支援することでお金を儲けるのではなく、共感や賛同をするからお金を出すということで成立しています。ですから、お金が集まってプロジェクトが実現した後も支援者に対して情報を発信し続けていくということが大事になってくるんです。
お金を集めるだけ集めたのに支援者を放置してしまえば、ガッカリされ批判につながりやすくなってしまいます。あくまで多くの人からの「共感」をもってプロジェクトを成功させるべきですから、今回のケースのような脅迫のようなやり方は、誰からも共感されないのではないかと思います。
●取材協力:MotionGallery