同棲してそのまま結婚とならなければ、必然的に訪れるのが「同棲解消」の瞬間。離婚ほどシビアではなくとも、恋愛の終わりの瞬間ともなるため、やはりそのエピソードは悲喜こもごも。自分が出て行くか、相手が出て行くかによって感じることも違ってくるようだ。3人の事例を取材した。
身勝手な彼女に同棲解消されたSさんの場合
同棲解消後は方々に“怒り”をまき散らしていた、という男性Sさん(当時27)。自分の部屋に彼女がなだれ込んでくる形で同棲をスタートさせたが、彼女は自分の留守中に許可なく犬を飼い始め、さらにその犬が宝物のレコードをダメにするなどしてSさんは憤慨。この頃から険悪な空気が漂うようになり、ある彼の出張中、彼女は理由も告げず勝手に出て行ってしまったそうだ。その上、勝手に冷蔵庫や洗濯機を持って行ってしまったそうで、とにかく悲惨な同棲解消だった、と語る。
「突然出て行かれた上に超不便になるし、むなしさと屈辱で散々だった」心底懲りたそうで、彼は以来、恋人ができても同棲はしていない。
別れ際に彼氏が逃げ出したTさんの場合
続いて、彼氏の部屋に居候する形で同棲をしていたTさん(当時26)。でも彼は異常に束縛心が強く、同僚をご飯に誘っただけで「今すぐ出て行け!」と激昂。Tさんはその日に別の部屋を契約。別れが決まってから2週間ほどは一緒にいたが、彼は引越の1週間前から帰ってこなくなった。
「最後の日くらい顔を合わせよう」と連絡してみるも、彼からの返事はなかった。「逃げ出すような彼の弱さに心底失望した」というTさんは、引越当日、空っぽの部屋とトラックの写真を撮り「あばよ!」と捨て台詞メールを送りつけたとか。その後、彼は復縁を迫ってきたが、Tさんはキッパリ拒否。「一人での引越作業はかなり惨めだった。二度とあんな思いはしたくない」
彼と過ごした街の思い出に苦しんだJさんの場合
最後は、女性が部屋に居残ったパターン。Jさん(当時27)は、2年間暮らした彼に、「仕事で来月引っ越すけど、君を連れて行けない」と言われた。それが「別れよう」という意味だとJさんはすぐにわからなかったそうだ。去る後ろめたさからか、彼はそれ以降、連日酔いつぶれて帰宅したという。引越当日も「また今度……」などと言葉を濁しながら去っていった。
しかしその後、Jさんは帰宅するたびに「彼がいない」と感じて泣いた。街は一緒に行った飲食店だらけだし、街角に彼が立っていた風景が何度も思い出された。「拷問と感じつつ、思い出にすがっていたような気もする」とのことだったが、広めの部屋の家賃をひとりで負担するのも限界になり、半年後になけなしのお金をはたいて引っ越したそうだ。
出ていく方も、出て行かれる方も、どちらも辛い
名作ドラマ『東京ラブストーリー』の原作には、「部屋に残されるほうは辛いから、先に出て行ったほうがいい」と“モテ男”三上が語るシーンがある。それに対し、“優しい男”カンチは「なら尚更、彼女にそんな思いはさせちゃいけないから、俺は自分が残るよ」と語り、「最終的にはそういう男が選ばれるんだな」と三上が感心する……なんてエピソードもあった。しかし、実際には「出て行く方」も「出て行かれる方」も、それぞれの状況によって辛い思いをしていることが分かった。
よく「別れ際には人間性が見える」というが、共に生活をし、共有財産も作った同棲の解消時には、通常の別れよりも多少、相手への配慮や丁寧な対応をしておかなければ、遺恨が残りやすいようにも思う。同棲を考えているみなさんは、ある程度の覚悟を持って決断する方がよさそうだ。