なぜ、営業の女子は使い捨てにされるのか。
2000年代以降、企業は女性に営業職の門戸を開いてきた。製薬会社、酒造メーカー、不動産、大手銀行など、それまでは「営業は男の仕事」としてきた業種でも女性の採用に乗り出した。しかし、10年経った後に残っている女性営業職はわずかである。会社で管理職になったり、転職してキャリアを伸ばしたりするのはたいてい男性だ。そこには男女の体力的な違いだけではない問題が見え隠れする。今回は人材コンサルタントに「なぜ、女子の営業は使い捨てにされるのか」について聞いてみた。
女性の営業は誘惑との戦い
Q: かつては「女子は内勤で事務。男子は外に出て営業」という性的役割分担がありましたが、現在は、女性の営業職も増えています。しかし、キャリア的に伸びる営業は男性が中心です。たとえば、製薬会社のMR(医薬情報担当者。価格交渉等はしないが実質的に営業活動をする)は、10年前は女子学生をたくさん採用していたのに、最近は減っていますね。
A: 結局、製薬会社のMRは男の仕事だからですよ。若い女の子を、医者のところに行かせたら、手を出されるからです。そういう実情が分かっちゃったから、女子学生も製薬会社のMRを志望しなくなったんです。
酒造メーカーの営業が男性中心なのも似たような理由です。打ち合わせはお酒を飲みながらになります。しかもたくさん飲むわけでしょ。お酒って怖いですよ。多くの女性営業職が客とおかしくなってしまって辞めていきました。
生命保険会社の管理職が“女性の営業は誘惑との戦い”だといっていました。医者などがしらふの席で、女性MRに「で、あんたは俺と寝るのか?」って訊いてくるそうですよ。寝ちゃえば契約がとれるわけですから、誘惑ですよね。
地味でも男ばかりの現場だと若くて可愛い存在に
Q: 全体的にそういう枕営業が通用しなくなっているように思います。製薬業界だって接待を禁止していますし。コンプライアンスも強くなっていますから、そういうことは減っているように思います。
A: だから、お酒は怖いんですよ。「この人が独身ならアプローチしたいな」って思えるようなそこそこ悪くない男性クライアントと飲んでいて、つい、肉体関係を持ってしまうことはありますよ。ホテルで行為が終わった後に、女性の方がうつむいて“こんなつもりじゃなかったのに”って泣き出して、男性がおろおろするみたいな。
結果的に2人とも傷つくみたいなことが割と起こっています。真面目な女性ほどこういう経験が耐えられなくなって退職していくわけです。でも、寝なければいいってもんじゃないですよ。セックスが絡まなくても、20代女性だと若さと可愛さで契約がとれたりもするんです。A社とB社で同じ内容の商品を同額で扱っていたら、クライアントは営業が可愛い方から買いますよ。
中途半端に優秀な女性営業マンが陥りやすいのは、自分が“若くて可愛い”という自覚がないことです。同世代の中では地味な子でも、男ばかりのビジネスの現場だと“若くて可愛い”存在になります。それを把握しないで、自分は“ちゃんと仕事をするからクライアントに好かれている”と勘違いするんです。ちゃんと仕事をするのは当たり前で、それだけでは30代後半になって生き残っていくのは難しい、ということが分かってない。結果的に自称“女を武器にしてない”ちゃんは、30代前半で失速して、30代半ばで“使い捨て”にされるわけです。
情報を持つことが営業の武器になる
Q: ちゃんと仕事をしているだけでは残っていくのは難しい。ならば、営業職でキャリアを積むためにはどうしたらいいんでしょう。
A: 今、営業マンに必要なのは情報を持つことです。そのために情報収集力やリサーチ能力が大切です。A社とB社で同質同価格の商品を扱っているとしたら、クライアントは営業が可愛い方から買うことが多々あります。もし、競合他社の営業が超可愛い時は、どう戦ったらいいか? クライアントに有益な情報を提供するんです。「あ、この子は情報を持っている。つきあうと色々と良い情報をもらえるぞ」と判断してもらえれば、注文をしてくれます。昨今はどこも余裕がないので、可愛いより有益な情報を選択します。大手企業の社員は、とにかく情報をもっていますよ。彼らはその情報を武器に営業をしているんだな、と感じます。その情報を集めるための努力やスキルが必要ですね。
まず身につけてほしいのは“ググる技術”です。気になったことはなんでもとりあえずネットで調べること。ウィキペディアは信用できなくとも、そこには確かな情報へのヒントがあります。そうやって情報を蓄積していきます。リサーチのスピードや質を上げることは、将来、どんな職種や業種につこうと役に立ちます。今は営業もリア充よりオタクが強いんです。オタクの人は学生の頃から趣味に関する情報を集めるのに一生懸命だったでしょ。その経験は仕事に活かされると思いますよ。