小保方晴子博士のSTAP細胞に関する研究成功が大々的に報じられ、改めて話題になった「リケジョ」という言葉。暗い、理屈っぽい、ガリ勉っぽいといったマイナスイメージで捉えられがちだった理系の印象をプラスに変える言葉である一方、そもそも「理系女子」というくくり方が差別的では、といった批判もあります。
今回の小保方博士に関する報道では、博士が白衣の代わりに着ている割烹着や巻き髪、指輪、その美貌を「美人リケジョ」「オシャレなリケジョ」のようにリケジョといった言葉を強調し煽ったことが一部で話題となりました。さらに「博士クラスの人を『リケジョ』と呼ぶのはおかしい」といった疑問の声も。
問題のひとつは「リケジョ」の用いられ方にあるようです。リケジョとは広義の「理系女子」を指す言葉で、2010年頃からメディアで使われるようになりました。現在は「理系女子応援サービス Rikejo」を運営する講談社が商標登録しています。
一方で、理系分野で働く女性が少数かつ特殊な存在であることを強調する、女性差別的な言葉だと認識されることもあります。理系女性たちは本報道をどう受け止め、自らもリケジョと呼ばれる際にどう感じるのでしょうか。
本人は特に何も感じない
数人の理系女性に「リケジョと呼ばれることについて、どう思う?」と聞くと全員が「特に何も感じない」と回答を寄せてくれました。
「そもそも1度しか見聞きしたことがないです。こうした男女区別の表現は何種類かありますが『リケジョ』はあまり害がない部類だと思います。『男子が多い中で大変だね』『理系なんてスゴいね』といった、どちらかというと好意的な表現なのでは。一方、女医、女弁護士、女社長といった『女○○』は男性が作った言葉で、女性が権威のある職もしくは高学歴が必要な職に就いて生意気といった感情が透けて見えると個人的には思います」(27歳/製造業 技術職)
確かに、女性を強調した言葉は「リケジョ」だけではありませんね。
マスコミが騒ぐことで違和感?
「ニュースで目にするだけで、大学時代の研究室でも病院へ入ってからの研究室でも、1回も言われたことはないです。自分が地方在住だから、なのかも知れませんが。でも、もし自分が『リケジョ』と呼ばれたとしてもイヤではないです」(27歳/医療臨床検査技師)
「大学とか教育機関が使う『リケジョ』には何の意図も感じませんが、マスコミが『リケジョ、リケジョ』と騒ぐのを聞くと『そんなに特別なことかな(笑)?』と若干違和感があります」(28歳/建築)
取材に答えてくれる時点でこの言葉に対する拒否反応は少ないから、ということもあるかもしれませんが、一部の理系女性は「リケジョ」に関してあまり特別な感情を抱いていないよう。
小保方博士の研究については、「女性ということより年齢の若さに衝撃を受けましたね。30歳で結果を出したこともさることながら、25歳でその足掛かりとなる発見をしていたことに驚嘆・感心・羨望、奮起させられました」(前述の27歳製造業)と、同じ理系分野に属する人として励みになったようです。
2011年に閣議決定された「科学技術基本計画」では、女性研究者の数が海外に比べて少ないことが指摘され、女性研究者に対するサポート体制などが促されました。女性研究者はまだまだ少数派、そして増えていくことが求められている日本。「リケジョ」論争は、過渡期とも言える状況のなかで、起こるべくして起こった議論と言えるのかもしれません。