セクシュアル・マイノリティーズとの付き合い方について、短いストーリー形式で考える連載「LGBTsさんといっしょ。」私こと「まきむぅ」と、私の妻である「モリガ」との会話をもとにお送りします。おしゃべりする気分でいっしょに考えていきましょう。
今回のテーマはこちらです。
Q.どうしても、ゲイと友達になりたいんです!! 恋バナとか気を使わずにできそうだし、ファッションチェックしてくれそうだし。でも向こうは女になんか興味ないですよね? どうしたらゲイの人は女と友達になってくれますか?
もう友達にいるんじゃない?
モリガ「実はもういるんじゃないかな、ゲイの友達」
まきむぅ「うん。ただ、気づかないだけよね……『男は女が好きなはず』って前提で周りを見ているせいで。別にゲイだからってみんなゲイゲイしい恰好してるわけじゃないし」
モリガ「なにもおでこに『ゲイ』って書いてあったりするわけでもないもんね!」
まきむぅ「書いてあったらある意味カッコイイけどね(笑)。……ともかく、ゲイはどこにでもいるのよね。別にゲイバーとか行かなくてもいるはずなのよ、そのへんのスーパーとか電車の向かいの席とかに」
モリガ「うーん。でも、『初めまして、ゲイです!』みたいなことにはならないわけじゃない?」
まきむぅ「そうねぇ、名前が『ゲイさん』じゃない限りねぇ」
モリガ「もちろん、信頼関係を築けたら、話してもらえることかもしれないけど……とにかくゲイと友達になりたい! って場合は、どうしたらいいんだろうね?」

(イラスト:小池みき)
「友達になりたい」っていう時に、自分のことだけ考えてない?
まきむぅ「もしかして……『ゲイと友達になりたい』っていうんだったら、『ゲイと友達になりたいんです!!』って言わないことが必要なんじゃないかなぁ」
モリガ「どういう意味?」
まきむぅ「そんなふうに言われた人は、『ゲイであれば自分じゃなくてもいいんだ』って思うじゃない。『外国人と友達になりたい』とかも一緒よね。私、空港で『日本人と友達になりたいんです』っていう人に連絡先を渡されて、メールしてみたら大変な目に遭ったことがあったもの」
モリガ「えっ! 何があったの!?」
まきむぅ「なんか、『この文章を日本語に訳してくれ』とか、『チケットぴあに日本語で電話できないから代わりにチケット取ってくれ』とか(笑)。こないだ空港で会ったばかりの私に言ってくるのよ? 友達ってそういうことじゃないわよね」
モリガ「それは友達っていうか、無料通訳サービスだね」
まきむぅ「ほんとに。……で、ゲイの話に戻るけど、こういう偏見に飽き飽きしてる人も少なくないわけよ」
・ファッションセンスがいい
・クリエイティビティがある
・美意識が高い
・オネエ言葉でしゃべる
・毒舌でビシバシ物を言ってくれる
・男の気持ちも女の気持ちもわかる
・恋バナやセックスについてのトークが好き
まきむぅ「もちろんこういうゲイもいるだろうけど、ゲイにだって色々いるわけ。それを理解せずに、自分に都合のいい“ゲイ友”を求めてゲイにつきまとう女は、ゲイ用語で“おこげ”って言われるのよ。『お釜(オカマ)にくっつく余計な何か』ってことで」
モリガ「日本語って面白いなぁ!」
まきむぅ「イギリスの有名スーパーマーケット『TESCO』は、『ゲイの友達人形』なんて商品を売ってものすごい批判にさらされたこともあるの。商品説明にはこんなふうに書いてあったんですって。『(この人形は)あなたにファッションアドバイスをしてくれて、あなたのお尻がデカく見えるかどうか教えてくれて、誰についても毒舌でネチネチ悪口を言ってくれるのよ……ただしJimmy Chooの靴を履いている人たちを除いては』」
モリガ「あはは! 面白いこと言ってるつもりかな?」
まきむぅ「あらあんた、毒舌ね」
それでも、本っ当にゲイと友達になりたい!! という場合には?
モリガ「とにかく、自分に都合のいいファッションアドバイスとかを期待してゲイの友達を作ろうとしても失敗するってことはわかったよ。でもね、それでもゲイの友達がほしいっていう人は、どうすればいいんだろうね?」
まきむぅ「こういう感じじゃないかしら?」
・「男はみんな女が好きなはず」というように相手を属性で決めつけず、その人自身の話を聞く
・自分に都合のいいイメージを相手に押し付けない(毒舌とか、ファッションセンスがいいとか)
・既に周りにいる人を大切にし、「この人の前には本当のことを話しても大丈夫だ」と思ってもらえる信頼関係を築く
モリガ「これは、ゲイに限らないことだね。友達関係の基本だね」
まきむぅ「人間だもの、ゲイだって。で、もっと積極的に行きたい場合はこういう感じかな」
・ゲイに限らない色々なセクシュアリティの店員やお客さんが集まる、ミックスバーやミックスイベントに行ってみる
・好きなドラァグクィーン(=女装パフォーマンスをする人)を見つけて、ショーを観に行くなど、ファンとして追いかけてみる
まきむぅ「同じお店によくいたり、同じものが好きだったりすると、友達になりやすいのは誰でも変わらないわよね。もちろんすべてのゲイがバーに行ったり女装するわけでもないけれど、比較的ゲイが集まりやすい場所に行くっていうのは手段としてアリだと思うわ」
モリガ「友達たくさんできるといいね!」
今回のまとめ
×「ゲイって、男の気持ちも女の気持ちもわかるんでしょ?」
×「ゲイなんだ! オネエ言葉でしゃべってみてよ~」
○秘密を守り、人を大切にし、身の回りにいるはずのゲイが「この人にならゲイだと言っても大丈夫かな」と思ってくれるような人に自分からなること。
○「ゲイだったら誰でもいい」という態度をとらず、「あなたとわたし」の間の友情を育んでいくこと。