人気お笑い芸人・ドランクドラゴンの鈴木拓さんが、競争の激しい芸能界をしたたかに生き抜く処世術をまとめた『クズころがし』(主婦と生活社)を上梓されました。
「クズ」「炎上芸人」と呼ばれても、仕事を獲得する人間付き合い、メンタルの保ち方など、一般社会でも通用しそうな技術をうかがいました。
敵を作らず自分を消せれば出世するかもしれない
――『クズころがし』というタイトルはどんな風に決まったんですか?
鈴木拓さん(以下、鈴木):僕は『はねるのトびら』で“フンコロガシ”というキャラクターをやっていたので、タイトル候補の中で「クズころがし」を見つけて、それがいいんじゃないかと。でもこの本は、僕がクズだっていう話じゃないんですよ。実はクズを利用してころがしている人の話です。ここで言っとかないと。僕はあくまでもクズじゃないんで!
――この本にはビジネスマンの人にも読んで欲しいという意図があったそうですね。
鈴木:これを実践しとけば出世すると思いますよ。敵を作らないで自分をさっと消せる方法を書いているので。本の中に出てくるような話を番組でしていたら、ある心理学者の先生に「目的がはっきりしていて、そのためには手段を選ばないやり方は、非常に政治家向きだ」と言われまして、同じ番組に出ていた東国原(英夫)さんにも、僕のやり方をその先生がオススメしてたくらいなんですよ。
面白さを捨てるところから始まった
――本にあるような内容は、昔から考えられていたんですか?
鈴木:レギュラー番組はあるのに、ぜんぜん出られない時期が続いていて、その頃ですね。番組終わりに僕の名前はテロップで流れるし、ギャラももらえるのに、番組には出られない。そんなことがあって「俺は消えるな」って思ったんです。それで、お笑いの才能では勝てないから、人付き合いでなんとかしていこうと。面白さを捨てたところから始まっているんです。
――お笑いでいうと、アンジャッシュの渡部建さんとかも、グルメを勉強されて仕事に生かしていますが、それともまた違う感じですね。
鈴木:渡部さんはもうスーパーマンなんですよ。あんなことは僕にはできません。僕なんかは等身大よりも下の人間、言うなれば妖怪みたいなのが人間の友達を作る方法を考えたようなもんですから。でも、その分、ダメ人間な人が読んでもなるほどなと思えるかもしれません。
――この方法論って、何かを読んで得たものなんですか?
鈴木:自分の経験に基づいたものですね。というのも、文字をじっくり読めないですし。
炎上しなくても、Yahoo!ニュースに載るまでに
――本には、鈴木さんのほかに、南海キャンディーズの山里さんやウーマンラッシュアワーの村本さん、三四郎の小宮さん、ノンスタイルの井上さん、アンジャッシュの児嶋さんなどのクズキャラがいると書かれてました。そこでクズキャラ同士がぶつかったりはしないんですか?
鈴木:僕は山ちゃんとふたりで、「もうクズは村本に任せよう」って言ってるんです。もう僕も山ちゃんもクズにはなりたくないんですよ。クズは利用させてもらうけど、僕らはクズではないので。それにクズがもてはやされるには賞味期限もあるし、僕には愛する人や家族もいる。最近はもう炎上もしてないんですよ。でも今は炎上しなくてもYahoo!ニュースにのっけてもらえるというところまできまして。
――どんなことがあったんですか?
鈴木:僕は嫁さんの前では屁は絶対しないんですけど、家にひとりでいるときにオナラをしたらですね、ニュースに載ったわけですよ。というのも、屁をこいたらウンコが出てしまったのでね。
――テレビで芸人さんがオナラをしたらウンコ出たっていう話けっこう聞くのに、鈴木さんだけはそれでYahoo!トップになってしまうと。
鈴木:そうなんですよ。女性の場合は、なかなかないかもしれないけど、男性は半年に1回くらいはウンコもらすもんなんです。僕なんか先週2回もらしましたから。でも、みなさんニュースにはならないでしょ。僕はマスコミの中での力を得たんです。大したことしないでもニュースになるという(笑)。
「鈴木がよくわからない何かと戦ってるな」
――でも、鈴木さんはクズを利用して今の仕事を得ているとは言いますが、やっぱり最近はテレビでの発言も的を射ているな、すごいなと思うことが多々あります。例えば、『ゴッドタン』(テレビ東京系)の「マジギライ」の企画で論破するときのロジックが凄くて……。
鈴木:ほんとはあの企画は嫌われてる芸人が嫌われる様を笑うための企画なんですけど、僕は頭に来たので論破してやれってなってしまったという……。でも、自分の半分くらいの年齢の女の子に目くじらたてて論破するわけですから、そこはほんとクズだなとは思ったんですよね。
――鈴木さんの中で、クズを転がすときに、何かルールみたいなものはあるんですか?
鈴木:キングコングの西野とかが俺のマネしてネットで誰かと口論して失敗してるのを見るけど、僕の場合は、攻撃するのは個人じゃなくて不特定多数の何かに対してなんですよ。見てる人がどっちにつくかみたいな感じにしちゃダメですね。鈴木がよくわからないなんかと戦ってるなという感じにしないと。
――西野さんが見たらマネしてねーわってなりそうですね(笑)。
鈴木:西野とは番組でケンカみたいなことをすることもありますけど、エンタメであればオッケイなんですよ。でも、ただの悪口の言い合いになるときもあります。それは滑ったときですね。
女同士のマウンティングでも最後に落とせば好かれる
――本の中には「自慢をして滑るのはかっこ悪い」ってことも書いていますよね。
鈴木:自慢してもいいと思うんですけどね、それもやっぱり最後に笑えるようにしたほうがいいと思うんです。よく女性にも「マウンティング」ってのがあるって聞きますけど、あのマウンティングも落としどころがあって、上手く最後に笑いに変えられたら好かれたりもすると思うんですよ。自慢をフリにして、最後に落として笑えば可能だと思います。
――確かに、逆に最初に落として最後に上げる人もいて、なんかモヤモヤっとするときはありますね。
鈴木:自分が良く思われたい人はそっちに行くんですけどね、芸人は最後に落とすのが決まりなので、最後にみんなに笑ってもらえればそれでいいんです。