まきむぅと考える「セクシュアル・マイノリティ―ズ」との付き合い方 vol.4

職場にオネエ系の男性がいます 性同一性障害として配慮すべきですか?|LGBTsさんといっしょ。

職場にオネエ系の男性がいます 性同一性障害として配慮すべきですか?|LGBTsさんといっしょ。
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セクシュアル・マイノリティーズとの付き合い方について、短いストーリー形式で考える連載「LGBTsさんといっしょ。」私こと「まきむぅ」と、私の妻「モリガ」との会話をもとにお送りします。おしゃべりする気分でいっしょに考えていきましょう。

今回のテーマはこちらです。

職場にいるオネエ系の男性、性同一性障害として配慮すべき?
Q.うちの職場にはオネエ系の男性がいます。男性として入社しているんですが、「あらやだ~!」とか女言葉でしゃべるんです。きっと心は女性なんですよね? 性同一性障害として配慮すべきことはありますか?

人の性のあり方は、振る舞いからはわからない

まきむぅ「……ほげ」

モリガ「なに!?」

まきむぅ「いや。ゲイ用語でね、オネエっぽく『あらやだ~(くねくね)』ってやることを
『ホゲる』って言うらしいのよ。『あんた彼の前だと急にホゲるわね!』みたいな」

モリガ「へぇ。なんか、『ぶりっこ』みたいな感じの言葉だね」

まきむぅ「うん。でさ、かわいこぶりっこしてるからって中身も可愛いとは限らないじゃない? それと似たようなもんで、人の中身が人の振る舞い通りだとは限らないものよね」

モリガ「あぁ~、うん」

まきむぅ「『オネエ=性同一性障害』とか『オネエ=男が好き』っていうのは、言ってしまえば早とちりよ。性別に関係なく、ホゲること――つまり女っぽく振る舞うことの背景には、いろんな理由があるでしょう」

人がホゲる(“オネエ”っぽくなる)理由3パターン

1.ホゲると得だからホゲてる(営業オネエ)
例:「やめなさいよそんなクズ男!」とかオネエ言葉で喋っておけば毒舌も許されると思っている、おいしいポジション狙いの人

2.ホゲたいからホゲてる(ありのままのオネエ)
例:男とか女とかオネエとか全く関係なく、「アタシはアタシのやりたいようにやんのよ!!」と思っている人

3.ホゲなくちゃいけないと思うからホゲてる(義務感オネエ)
例:女性ばかりの職場で無用な警戒感をもたれてはいけないと、「わぁステキ! そのお花どこで見つけたの~?」みたいな感じでゆるふわしてしまう男性保育士さんや看護師さん
例2:特に自分では「私は女!!」という自認を生きているつもりはないものの、恋愛対象が男性であるなどの理由から、「私は女らしくしなくちゃいけないんだわ」と思っている人

モリガ「なるほど……そもそも、やりたくてやってるわけじゃない場合まであるんだね」

まきむぅ「うん。だから、『オネエ言葉ってことは性同一性障害なんでしょ!?』なんていうのは間違いだし、もちろん『性同一性障害ってことはこういう対応が必要なんでしょ!?』みたいなマニュアル対応もスベるわけ」

モリガ「『女はこうすれば落ちる!!』的なマニュアルが大体スベってるのと似てるね!」

まきむぅ「とにかく。性同一性障害かどうかを含め、人の性のあり方は振る舞いからはわからないの。たとえば一見して女っぽい人でも、ありのままの人もいれば義務感でやってる人もいるのよ」

職場のオネエ系男性は性同一性障害?

(イラスト:小池みき

「障害だから困ってるでしょ!?」じゃなくて、誰もが困ったことを話し合える職場に

まきむぅ「ところで『性同一性障害』っていう病名は、世界中どこでも使われているものじゃないのよ。ただ、むやみに性器を取り除くような手術をしてはいけないと母体保護法で定めている日本において、『でもこの人は病気なんです。だから手術しましょう』っていうことにするために便宜上つけられる名前なの」

モリガ「確かに、フランス語ではもう『障害』とか『病気』って呼ばないね」

まきむぅ「でしょう。たとえばある人が『生まれた時に男の子だとされたけど、女として生きよう』っていうことにしたとしたって、手術を望むかどうか、自分を病気だと思うかどうか、女性として生きる時間をフルタイムにするかパートタイムにするかっていうことはまったく人それぞれなわけ。その上で、特に、職場についてチェックしたいのは以下の4項目になります」

職場において、性別にまつわる困りごとが起こりやすいチェックポイント
・男女別にされている施設の利用について(更衣室、トイレなど)
・男女別にされている服装規定について(制服、メイク、髪型など)
・仕事上で名乗ったり呼ばれたりする名前について(名札、名刺の表記、敬称や愛称)
・性別にまつわるトラブルへの対策について(性差別を禁止する社内規定、相談体制など)

まきむぅ「これらのことについて誰かが困った時に、ちゃんと誰もが対等に話し合える職場かどうか。そういう雰囲気や窓口づくりこそ、大切なことなんだと思うのよ。性同一性障害とされる人が困ることは、他の人にとっても困ることだったりするからね」

誰もが安心できる職場づくりのために

まきむぅ「たとえば『LGBTと職場環境に関するアンケート調査2014』には、こんな経験談が寄せられています」

就業時間中には「男だったら頑張れ」、歓送迎会では「男なのに女みたいな甘い酒を飲むのか」などという発言がある職場。毎日のように「もっと女らしくしなさい」と言われ、反論したら解雇されてしまった。
(※NPO法人虹色ダイバーシティ/国際基督教大学ジェンダー研究センターによる共同研究。『LGBTと職場環境に関するアンケート調査2014』PDF資料60ページより要約、全文はこちらから)

モリガ「これは……なんていうか、誰だってイヤだろうなぁ」

まきむぅ「うん。だから、『男は○○』『女は○○』みたいな性別による決めつけを考え直すことは、結果として誰もが安心できる職場づくりに繋がっているんじゃないかしら。私の昔の上司も、女性だってことで不当な扱いを受けそうになった時、こう言ってたわ。『私は女である前に、人間です!』って」

今回のまとめ

人間のあり方は、その人の振る舞いからだけでは判断しきれません!

×(あの人ってなんかオネエっぽいから、きっと性同一性障害なんだ)
×(性同一性障害ってことは、ずっと苦しんできたんだ、かわいそう)
×(オネエ系の人って性同一性障害で、男が好きなんでしょ?)

いわゆるLGBTsを困らせない職場こそ、より多くの人にとって過ごしやすい職場につながります!

○他人や自分自身に対して、「男だから○○」「女だから○○」というような、性別に気を取られて個を無視するような対応をしていないか思い返してみる。
○エントリーシートの性別欄はじめ、自分の職場で男女別になっているものを「そもそもこれはどうして男女別にしなくちゃいけないんだろう?」と考え直してみる。

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