「待機児童問題」という言葉があまりに一般化したせいか、問題としての危機感まで薄れてしまったように感じる今日この頃。だが、都市部における「保育園に入れない」問題はいまだ解決されておらず、働きたい&働かざるをえない母親たちは、ただでさえ乳児を抱えて大変なのに、保活(保育園に子どもを入園させるための活動)にまで労を費やさねばならないのが現状だ。
「1点」にしのぎを削る入園審査の世界
多くの自治体は入園審査に点数制を採用しているが、申し込む保護者の多くが「父母ともにフルタイム勤務」「祖父母が遠方」と加点条件が似通っているため、点数は拮抗している。1点でも加点が欲しいところだが、そのためには就業や託児の実績が必要になる。認可保育園に入る前から父母が両方とも働いていたり、やむをえず子どもを預けていたという事実が加点対象となるからだ。しかし激戦区では認可保育園だけではなく、あらゆる保育施設が満員という状態だ。入園前に実績をつくるのは容易ではなく、高額で保育環境に不安のある無認可や、1日1万円近くかかる一時保育、またはシッターなどをやむなく活用する人もいる。
このような入園のハードルの高さのせいで、”行き過ぎた”保活に走る両親が増えているのだ。
【とんでも対策1】離婚して無理やり「シングルマザー」に
中でも最強なのが、偽装離婚だ。シングルマザーともなれば入園できる確率はがぜん高まる。実際の生活は一家そろっていても、書類上での離婚が成立していれば、入園審査ではシングルマザーだ。「やりすぎだ」と思う反面、「その手があったか…」というのが正直な感想である。
【とんでも対策2】書類偽装で「働いている」ことにする
優先されるのは今働いている人、今預けている人だから、実績を書類で作ってしまうのだ。就業しているという書類を、会社を経営する友人に書いてもらう。そして今現在、子どもを友人に預けているということにしてもらい、託児の証明書を作って印鑑をもらう。
【とんでも対策3】祖父母が「病気で動けない」ことにする
祖父母と同居していると点数が下がるので、健康であっても「体調が悪く子どもを見る余裕はない」などの書類を添付し、減点を避ける。
【とんでも対策 4】アリバイ会社に依頼する
待機児童問題を反映してか、アリバイ会社なるものが出現している。お金を出せば、就労証明書を書いてくれて、もし保育課から確認の電話がいっても対応してくれるというものだ。
正攻法で点数を上げていくことの限界
働いていなければ、入れない。でも入ることが決まらなければ、働けない。騙すこと、欺くことはもちろんNGだが、ここまでしなければならないほどの現状だということを、当事者以外で理解している人は少ない。世に言う少子化対策も、女性の活躍による経済の活性化も、子どもを“普通に”預けられるようなってからの話ではないだろうか。