なぜLGBTへの理解が必要なのか 多様な価値観と共存するために私たちができること

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なぜLGBTへの理解が必要なのか 多様な価値観と共存するために私たちができること

なぜLGBTへの理解が必要なのか

レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害など)の頭文字をとり、多様なセクシュアル・マイノリティの性を表す「LGBT」。

今年4月1日から施行されている渋谷区の「同性パートナー条例」により、LGBTの権利にまつわる議論も全国的な広まりをみせています。「アパートの入居拒否」や「病院での面会を断られる」などLGBTを取り巻くさまざまな問題に対応することを目的とする同条例では、同性のパートナーを「男女の婚姻関係と異ならない関係」と定義。日本で初めて同性パートナーを公的に認めたことから、大きな話題を呼びました。

差別や偏見に苦しむLGBTの人たちへの理解促進が期待される同条例ですが、多様な価値観を受け入れる地域づくりのためには住民の協力も欠かせません。すでに、海外をはじめ国内でも、LGBTを受け入れて、共存する地域を実現するべく活動している団体も存在します。そうした活動を牽引する3名のパネラーが集った国際シンポジウム「『性の多様性』を活かした地域づくり」が4月に開催されました。

地元の当事者が自治体に声をあげれば、変化は起きる

シンポジウムには、キェラン・リー・カラハン氏、エディ氏、鈴木秀洋氏の3名が登壇。それぞれの活動紹介をはじめ、LGBTを取り巻く環境の変化や支援団体運営の難しさなどについて、会場からの質問への回答を中心に意見を交換しました。

なぜLGBTへの理解が必要なのか

キェラン・リー・カラハン氏
「レズビアン」と「トランスジェンダー」として2 度のカミングアウトを経験し、現在は法律上の性別を男性に変更。さまざまなセクシュアル・マイノリティのコミュニティに所属。米国・サンフランシスコ市カストロ地区にある「GLBT 歴史博物館(※)」の運営に携わっている。※「GLBT」は「LGBT」と同義。

カラハン:サンフランシスコには、さまざまな支援団体や施設があります。自分がトランスジェンダーと気づいたときも「ピアサポートグループ」という団体に通い始め、トランスジェンダーの男性たちがサポートしてくれたこと、良い医師に出会えたことで、家族にカミングアウトする勇気を得ることができました。

ほかにも、2002年に開設された「LGBTコミュニティーセンター」は、4階建ての大きなビルのなかに貸オフィスやイベントのためのスペースが整っています。ここでは、あらゆる年齢のLGBTに向けた求職プログラムも実施されています。

また、「オープンハウス」という団体は、シニア世代のLGBTのために集合住宅も計画しています。自分が所属する団体において一番重要なのは、情報が得られるか、サポートがあるか、友情が育めるか、コミュニティ形成ができるかということです。これまで、私個人もさまざまな団体に参加できたことで、素晴らしい経験を得ることができました。(談)

なぜLGBTへの理解が必要なのか

エディ氏
愛媛県松山市でセクシュアル・マイノリティの人権啓発イベントを運営するほか、LGBTの当事者同士をはじめ家族とも交流できる施設としてLGBT センター「虹力(nizi-kara)スペース」を開設。

エディ:松山市内に開設した「虹力(nizi-kara)スペース」は、LGBT当事者や家族が安心して過ごせる場所を提供するための常設スペースとなっています。50万人という規模の都市では、こうした施設は珍しいです。このスペースでは、ゲイやレズビアンそれぞれが集まる会を実施したり、LGBT全体の交流会も企画しています。親御さんの参加も少しずつ増えています。

また、当事者に向けたメールや電話での相談をはじめ、商店街にブースを出して、幅広い方にLGBTのことを知ってもらうための活動をしています。ときには地元の方から、「同性愛者を増やしているんですか?」という声を頂くこともありますが、自分たちの活動を理解してもらえるように発信を続けています。

ほかにも、映画館で『愛媛LGBT映画祭』を主催し6作品ほど上映しています。こちらもLGBT当事者ではなく市民の方に自分たちのことを知ってもらうことを目的に開催しています。去年は、約400名に参加してもらいましたが、LGBTの率は2~3割ということで、市民の方に多く来場して頂きました。

こうした活動もあって愛媛県や松山市の人権の重要課題に性的マイノリティが入りました。市の広報誌でも性的マイノリティを大きく扱ってもらったり、四国中央市では全職員1,500人に向けて性的マイノリティの研修も行われました。これは全国でも先進的な取り組みだと思います。こうした事例を踏まえて、地元の当事者が自治体に声をあげれば、変化は起きるものだと感じています。(談)

なぜLGBTへの理解が必要なのか

鈴木秀洋氏
文京区男女協働・子ども家庭支援センター担当課長で、性指向・性自認にもとづく差別禁止を明文化した男女平等参画推進条例の立案を担当。行政現場での人権尊重推進に取り組んでいる。

鈴木:LGBTを取り巻く差別や偏見は、自殺などにもつながりかねない問題であることから、憲法13条の「幸福の追求権」にもあたるという考え方のもと、「性的指向・性的自認に起因する差別の禁止」を明示する男女平等参画条例を制定しました。条例制定後にどういうかたちでLGBT問題に取り組むのかということですが、文京区では職員研修をはじめ中学生への出前講座、セクシュアル・マイノリティ支援団体の後援や共催事業などを実施しています。

また、窓口の職員や福祉現場職員が携帯できるよう「LGBTってなんだろう?」というネームカードに入れられるサイズの啓発カードを作成しました。互いの違いや多様な生き方を尊重する社会を次世代につなぐために、今後も行政現場における人権尊重を推進していきたいと思っています。(談)

政府や企業の支援に頼るだけではなく、寄付集めも必要

――セクシュアル・マイノリティを取り巻く、日本とアメリカ社会の空気の違いとは?

カラハン:日本でもアメリカでも、どこにいるかによって空気は異なると思います。私はサンフランシスコに住んでいますが、LGBTの支援サービスが充実しています。違う州や街に住むLGBTの人たちが置かれている環境とはかなり違うと思います。

今回東京を訪れてみて、以前滞在していた1990年代後半にくらべるとレインボーパレードへの参加もかなり増えていることなどから、良い方向への変化を感じています。ただ、これが地方になるとまた事情が異なるのかもしれません。各地域の取り組みによってもセクシュアル・マイノリティに対する空気は変わるのだと思います。

――LGBT支援団体運営の難しさとは?

エディ:「虹力(nizi-kara)スペース」の場合、利用料を1人あたり300円以上のカンパをお願いしているので、300人来てもらったら家賃と光熱費が払えるというかたちですが、始めて1年くらいで150人ほどなので、まだまだこれからかなと。行政に支援を依頼したいと思っても、こうしたコミュニティ施設の運営に対してお金を出してもらうのは難しい。結局のところ不足分は僕が補てんしています。

何年続けていけるかというと、一代限りで終わっても仕方ないのかなと。それは泣き言ですけどね。本当は引き継いでくれる人が出てきてくれると嬉しいですし、公的な支援があったらいいなとは思います。

カラハン:お金に関していえば、サンフランシスコでもどのグループも苦しいと言っています。5年前に「GLBT 歴史博物館」が設立されましたが観光客を引き寄せるという判断から、政府や地元の企業にとって利益にもなるということで好ましく受け止められ、金銭的な支援を受けることができました。ただ、政府や企業の支援に頼るだけではなく、SNSなどのツールを使うなどして、一般の人に向けた寄付集めの努力も必要だと思います。

エディ:アメリカに比べると日本では寄付する文化が定着していないですよね。対価がないと寄付してもらうのは難しい。もちろん、コツコツ寄付してくれる人もいますが、日本では「寄付はいかがわしい」という発想があるのかなとも思います。

そうした背景には、公共性のある支援は行政がやることで、税金を払う行為がすでに寄付にあたるという意識があるのではないでしょうか。それは、LGBT当事者も同じだと思いますが、自分たちのために自分がお金を出すという意識を持つことも大事だと思います。

カラハン:それはアメリカでも同じかもしれません。待っていても勝手に寄付してもらえるという訳ではないので、メールやSNSなどで常に事業の価値などを説明する機会を設けていますし、税務報告のときに寄付をしたら税金が安くなるので、そのタイミングを狙ってメールを送るなど工夫をしています。

偏見が積み重なると自分に降りかかってくる

最後に、LGBTを理解するためにLGBTでない人たちが心得ておくべきことを、エディ氏に伺いました。

エディ:それは学習しかないと思います。多様性があるということを心掛けて理解、納得しないと、偏見が積み重なるばかりです。そうすると、例えば我が子や身近な人の問題になってしまったとき、縁を切るということにもなりかねず、自分を苦しめてしまうんです。

自分はLGBTじゃないから関係ないというスタンスでは、多様な価値観はいつまでも理解できないですよね。私たちの団体では、セクシュアリティを超えてLGBTとLGBTではない人たちの交流会も実施しているのですが、そうした理解を得るには、やはり双方が身近に触れ合うことが大事だと思います。

さまざまな価値観を否定せずに受け入れてこそ、誰しもが生きやすい社会が実現するもの。そのためには、セクシュアル・マイノリティの人たちが暮らしやすい環境を整えるだけではなく、地域住民との相互理解を深め合っていくことも大切なのかもしれません。今回のシンポジウムでは、そうしたコミュニケーションが生まれる地域づくりのきざしを感じました。

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