職業選択の自由も定着し、お金も自分で稼げる現代女性。でも人生の分岐点で「これって私のワガママ?」と思い悩むこともあるはず。女の自由とワガママの境界線に揺れる心を、女装パフォーマー・ブルボンヌさんに聞いてもらいましょう。
地方出身、東京在住の会社員、未婚です。最近、両親から「地元に戻って見合いをしろ」と言われます。彼氏もいないので身軽ですが、もう少し都会で遊びたいし、いまさら田舎に戻るのも負けた気がして……。両親の健康状態も不安定なので、正直、迷っています。東京にしがみつくのはワガママでしょうか。(35歳・会社員)
結婚したいなら、さっさと帰りなさい
これは選択肢がはっきりしているよね。「田舎で見合い」か、「都会で遊びと仕事」か。田舎で結婚した上で、遊びと仕事もできなくはないけど、職種も遊びの内容もかなり限られるだろうし。
まず、アナタの中で「田舎に戻る」可能性はどれくらいあるのかしら。35歳って結構ボーダーラインよ。自己啓発本でも「35歳までにすべきこと」なんてのをよく見かけたけど、何かと答えや成果を求められる年齢よね。
それに日本の田舎社会においては、すでに女としての商品価値はキビしいんじゃない? ここで迷って、その後、40歳で田舎に帰る踏ん切りをつけたとする。でも「さんざん都会で遊んだ後で、出戻ってきた未婚40女」を嫁にもらうイイ男って、田舎社会には極端に少なそうだわ。言いたかないけど、狭いコミュニティーの中では失笑の対象になっちゃうかも。そういうのに負けない女でいてほしいけど。
だから、田舎に戻って見合い結婚をする可能性にひかれてるんなら、今の時点でも遅いくらいだから、迷ってないでさっさと戻った方がいい。アナタがこの先、「男を捕まえて結婚して幸せになる」というコースを狙っているのなら、35歳まで都会で男を捕まえられなかった以上、漁場を変えて親のコネを利用したほうが、まだ可能性はあるってことでしょ。
田舎のイイ男は、若くして“ヤンパパ”よ
ただし、田舎に戻っての見合いコースに決めても、それなりの厳しさがあるのも間違いないわよ。
都会でも通用するくらい見た目や性格が魅力的だけど、「俺は家業を継ぐんだ」「地元で頑張るんだ」って田舎から出なかった男たちってのは、ほとんど、少々ヤンキー風でも同じ地元のカワイイ娘と若くして結婚して、ヤンパパになっているんだから。
そんな中で、アナタの見合い相手になるのは、都会に出ていく選択をしなかったけれど、地元娘との結婚もしなかった人。もしくは同じように都会から出戻ったワケあり。人が良くて真面目に家業を継いだ男性とかはいると思うけど、見た目やセンスは、アナタから見てパッとしないかもしれないわよね。地味ないい人は大勢いると思うけど、都会の遊びに慣れた女が、「いい人」だけで満足できるのかしら。アンタ、華やかな世界を知っちゃってるんだよ……。
その上さらに、見合い相手のご両親とか、保守的な考えを持っている人たちからしたら「35歳の女なんて、今から子どもは何人育てられるのか」なんて意地悪なことを思われちゃう可能性だってある。
都会に「負けた」なら田舎で「勝つ」方法を模索しては?
でも、厳しいことを言えば、アナタは都会にすでに負けぎみなのよね。バリバリ働いて遊んで、「楽しいから、都会に住み続けたい」ではなく、自分で「しがみつく」って言葉を使ってる時点でそういうこと。それだったら、田舎なりの穏やかな幸せにチャレンジしてみるのも田舎で逆転勝利をする方法かもしれないよ。
添加物まみれの食べ物みたいな都会の刺激に麻痺したアナタが、田舎の牧歌的な世界の中で、優しい旦那さんと10年一緒にいて「幸せ」って思える日が来るかもしれない。夢と欲のデトックスが時間をかけてできるのなら、田舎に戻ることは「負けたこと」にはならないわ。
この先、都会に「勝ち」があるのか見据えないとね。ギャンブルと同じで、しがみつけばつくほど、負けが込んじゃうことも十分にあるし。
「都会に負けた」なんて捉えないで、若い頃は都会で十分遊びを堪能させてもらって、今度は田舎の穏やかな良さを味わおう、美味しいトコ取りなのよって思ってもいいんだから。もちろん、最初から地元で頑張ってきた人たちに比べたら、変換期の摩擦は覚悟しないといけないけど。
都会にしがみつく女は嫌いじゃないけどね
行き詰まりを感じてるアナタに、田舎コースを提案してくれる親御さんと地元があるだけ、いいじゃない。
アタシなんて、田舎に帰る選択肢は全くないもん。女装で仕事してるゲイって時点で街でしか暮らせないんだから。だからこそ、しがみつくんじゃなく、わき目もふらず都会で生きていこうと思ってる。
女子は、両方のコースがありえる分、迷っちゃうのは分かるけどね。アナタも、そもそも結婚願望があまりなくて、ステレオタイプな女の幸せ像に乗っからなくてもいいと思ってるなら、「アタシはオカマ!」くらいに思って、独り身覚悟な都会での人生に割り切るのもありなんだけどな。
二丁目に通う女は割とそういうコ多いんだから。全てを手に入れた人はそんなにしょっちゅうは来ないわよ。都会で楽しんでるようで、なんか足んないオカマも女も、傷をなめ合ってる。「負けてないから!寂しくないから!」って言い張りながらね。ちょっとイタイかんじだけど、それが都会のシングルライフを笑い飛ばす生き様なんだもの。
(構成:穂島秋桜)