関ジャニ∞の渋谷すばるが主演した映画『味園ユニバース』の舞台は、元“グランドキャバレー”。戦後まもない時期に、駐在アメリカ兵向けの慰安施設として生まれた娯楽施設だが、1960-70年に全盛期を迎え、現在は衰退しつつあるといわれている。
はたして“グランドキャバレー”とは、どのようなところなのだろうか。今のキャバクラとは違うのか? 女性も遊びに行けるのか? そんな素朴な疑問を、おそるおそる大阪の老舗グランドキャバレーにぶつけてみることにした。
取材に訪れたのは、たくさんのネオンが輝く、大阪・難波宗右衛門町。その界隈でも一際目立つ存在の「キャバレーサン」は、大阪に残る数少ないグランドキャバレーの代表的な店舗である。その「キャバレーサン」の末広店長にお話を伺った。
キャバクラとの違いは「社交ダンス」
――“グランドキャバレー”は今や大阪に数店舗が残るのみと言われていますが、キャバクラやクラブとは、どのように違うのでしょうか。
末広店長(以下、末広):まず風俗営業に関してから説明した方がわかりやすいと思うのですが、風俗営業は「キャバレー営業」「カフェ営業」の2種類あります。「カフェ営業」はラウンジ・キャバクラ・クラブなどの営業許可、「キャバレー営業」が、グランドキャバレーを許可しているものです。これだけ唯一ダンスと飲食ができるという許可を得ています。
ショーステージもフロアの真ん中にあります。だから元々ホステスたちは社交ダンスができるのが前提条件でした。
今は、社交ダンスを求めるお客さんがほとんどいないので、ダンスができるホステスは50代くらいのホステスに数人。20代くらいのホステスで踊れる子はほぼ皆無になりました。
本来グランドキャバレーとは、ホステスとお話ができ、お酒が飲めて、ダンスが踊れるところなんです。まあ雰囲気的には、大人の空間として、しっとりと気軽に飲める場所なのではないでしょうか。
ホステスさんに年齢制限なし。90代でも大丈夫
――ホステスさんは20〜50代くらいの方が多く在籍しているのですか。
末広:特に年齢制限は設けていません。今は20〜60代くらいの女性が在籍していますが、お客さんがつけば90代でももちろん構いません。客層が様々なので、お客様のニーズに合わせて幅広い年代のホステスがいます。
――ホステスさんの服装はキャバクラのようにドレスでしょうか。また、どのような勤務形態なのでしょうか。
末広:服装は自由です。着物を着ている女性もいれば、ドレスを着ている女性もいます。私服の女性もいますよ。給料システムはキャバクラと同じで、「時給+指名料」です。ボトルを空けたらボトル代も入ります。
ホステス300人、お客さんが1,000人の全盛期
――今日(金曜日の19時頃)すでに、半分席が埋まっていますが(200席中90席ほど)、いつもこれくらい来客があるのですか。また、一番盛り上がっていたと思われるのは年代としてはいつの頃ですか。
末広:やはり金曜日から土曜日は、ほぼ満席になります。平日も、22時頃は9割くらい入りますよ。
一番盛り上がっていた時代は、40年ほど前だと思います。当時、このキャバレーサンは千日前沿いにあって、敷地面積は今の3倍でした。その時は、ホステスは300人、お客さんは常に1,000人ほど入っていました。あんまりいっぱいになるものですから、入り口のシャッターを半分ほど閉めて、もうお客さんが入ってこないようにしたりしていましたね。
その頃は、大物歌手でグランドキャバレーのショーに出ていない人はいないくらいでしたね。台湾の大物歌手や、某芸能事務所の歌手はほとんど出てもらっていました。まさにバブルの時代でしたね。
セクシーヌードショーなどのイベントも開催
――今、お店の料金システムはどのような感じでしょうか。やはり、1回遊びにくると、相当な金額の支払いになるのでしょうか。
末広:大衆的な値段ですよ。平均的には、1人1万〜1万6,000円ですね。ボトルをたくさんおろしたり、派手に遊びたい方は10万円使う方もいたりしますけれど。
初めての人に、安心して使って頂くための時間制限付き飲み放題も設けています。90分楽しんでもらって、きっちり5,000円で飲み放題というプランです。
週ごとにイベントもやっています。豪華景品ありのビンゴ大会をする日もあれば、セクシーヌードショーをやる日もあります。ステージ上で、ダンサーが服を脱いでいくんですが、最後は下まで全部脱ぎます。上半身だけ服を脱いで、客席内を練り歩いたりもしますよ。
お客さんは自営業の50代男性が多い
――お客さんはどんな方が多いですか。
末広:北新地あたりでは、接待経費を使って遊ばれるスーツ姿のサラリーマンが多く見られますが、ここは、土地柄もあるのかもしれませんが、サラリーマンよりも、ラフな格好でいらっしゃる自営業の方が多く見られます。よく遊びに来てくださる方は、50代の方が多いですね。
――女性のお客様はいらっしゃいますか。
末広:まあ1割いないくらいでしょうか。会社の飲み会の2軒目ということで、男性社員に「社会勉強や」と連れられてくる同僚の女性ですとか、または、うちのホステスがアフターで行くお店のママさんが、お返しに来てくれたりしますね。
女性も入店OK! フルーツのサービスがあることも
――男性のお客様がメインだと思いますが、女性がお客さんとして来店する際の、マナーや注意すべき点はありますか。
末広:女性だからこその特別なマナーや注意点はありません。レストランに行くときのような普通のマナーがあればいいです。まあ当たり前のことですが、人と人が接する商売なので、例えばホステスに「なんでこんな仕事をやっているのか」「もっと他の仕事があるのではないか」など失礼な発言さえしなければ大丈夫です。その後の空気が悪くなりますからね。
そういう人としての当たり前のルールがあれば、気軽に来て頂ければと思います。女性のお客様には、せっかく来てくれたということで、フルーツをサービスしたりもしますよ。
――最後に、末広さんが思われる、グランドキャバレー「キャバレーサン」のいいところはなんでしょうか。
末広:やはり、大衆的であることを心がけているので、気軽に飲みに来られるところでしょうか。飲んで歌って、踊ることもでき、イベントショーも見られる、とても楽しいところです。男性も女性も、もっとたくさんの人に来てほしいですね。
店内に入る前は「グランドキャバレー」がどのようなところなのか、「怖いもの見たさ」が勝っていたが、入った瞬間に店内の明るさや、明朗会計な料金システムを見て、決して“こわいところ”ではなく、大衆的で、気軽に飲みに行けるお店だと感じた。フードメニューも豊富で、女性に嬉しい野菜の料理も多い。
飲んで歌って、イベントも参加し、その気になれば踊ることだってできる。人生経験豊富なホステスさんに悩み相談するのもアリかもしれない。グランドキャバレーは今でも存分に楽しめる、むしろ新鮮で刺激的なところだった。
(泉華)