「Letibee」外山雄太さんインタビュー(前編)

LGBTのために、いま企業は何を学ぶべきか―IT業界やエステ業界も参加する、企業研修の必要性

LGBTのために、いま企業は何を学ぶべきか―IT業界やエステ業界も参加する、企業研修の必要性
職場でLGBTの理解を深める企業研修

外山雄太さん

渋谷区で同性カップルに「パートナーシップ証明」を発行する全国初の条例が成立するなど、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーといった性的少数者)に対する関心が高まりをみせている。しかし、まだまだ日本社会におけるLGBTへの理解は十分とは言えないのが現状だ。そんな中、「セクシュアリティに関わらず、すべての人が自由に幸せを追求できる社会に」との理念を掲げ、LGBTの人たちの結婚式や人生設計支援、LGBTの受け入れを考えている企業への研修などを手がけるLetibee(レティビー)という会社がある。一体どんな会社なのか。

LGBTと一言でいってもひとりひとり違う

「LGBTの割合は全体の5%以上、つまり20人に1人はLGBTであると言われています。しかしカミングアウトできないなどの社会的な困難や、婚姻関係を結べないことに起因する法的な困難を抱えています」

3月25日、東京都内のホテルでLetibeeによる企業向け研修会が開かれ、代表の外山雄太さん(24)は参加者を前に日本におけるLGBTを取り巻く状況について説明した。参加したのはLGBTの受け入れを考えているブライダル事業者ら9社。みな真剣な表情で耳を傾けていた。

「LGBTと一言でいっても、そのセクシュアリティや抱えている悩みはひとりひとり違います。例えば、レズビアン同士のカップルであっても、2人ともドレスを着たいカップルもいれば、タキシードとドレスの組み合わせが良いというカップルもいる。新郎新婦と呼ばれたいカップルもいれば、名前で呼んでほしいというカップルもいる……。組み合わせは無数にあります。また、親族との関係性もそれぞれ違うので、きめ細かい配慮が必要です」

外山さんは、LGBTの結婚式を執り行う上での具体的な注意点についても指摘した。その後、参加者同士でワークショップも行い、実際の結婚式や披露宴でスタッフが何に気をつけるべきかを議論。「末端のスタッフまでLGBTのことを理解して動かないと当事者の満足感が得られない」「映像を撮影する際、ストレートのカップルであれば新婦中心に撮ることが多いが、同性同士の場合はどうするか考える必要がある」などの意見が出た。

参加したウエディングドレス制作・販売会社の齋藤康平さん(34)は「あらためてLGBTの結婚式にはさまざまな配慮が必要だと感じた。ただ、私の会社はオートクチュールでドレスを作るので、細かな要望にも応えられるはず。LGBTの方も積極的に受け入れていきたい」と意欲的だ。

職場でLGBTの理解を深める企業研修

高校時代の失恋の原体験をきっかけに起業

この研修を行った外山さんは、自身もゲイであることをカミングアウトし、大学在学中の2014年4月にLetibeeを立ち上げた。外山さんに会社設立の経緯や日本の企業や社会はLGBTにどう向き合うべきか、話を伺った。

――4月で会社設立からちょうど丸1年ですね。まず、起業しようと思ったきっかけを教えてください。

外山雄太さん(以下、外山)
:そもそものきっかけは僕自身が高校生の頃、初めて同性を好きになって辛い思いをしたという経験があります。それまで自分がゲイだという自覚はありませんでした。ただ、小さい頃から戦隊ものごっこをするときは女の子の役を選んだり、ジュリアナ東京の真似をして、みかん箱の上で踊ったりするような子どもだったのですが、自分も周りもちょっと変わってるくらいにしか思っていませんでしたね。

それが高校1年のときに同性の先輩を好きになって、はっきりと気づきました。その先輩とは高校3年の春から夏にかけて付き合ったんですけど、結局世間体とか、いろいろあって別れてしまって。その時は周りに相談できる人もいなくて、本当に辛かったですね。毎日ひとりで部屋で泣いて、ご飯も食べられない……という日々が何か月か続きました。その時に「同性というだけでなぜ当たり前に好きな人と一緒にいられないんだろう?」と強く思ったんです。また、この失恋を機に少しずつ周りにゲイであることをカミングアウトしていきました。

その後、大学時代の2011年、ニューヨーク州で同性婚法が成立したニュースを知り、「世界はこういう風に動いてるんだ」と感銘を受けました。日本でも自分に何かできるんじゃないかとLGBTの自助団体を回ったり、勉強会に参加するうちに、公正証書で契約書を作成すれば、同性カップルも現行の法律下で婚姻に近い関係性を結ぶことができることを知りました。そこで、公正証書の作成や結婚式を行いたいという同性カップルをサポートするサービスができるのでは、と考え、大学の同級生と2人で起業しました。

IT企業、エステ業界へも研修を行う

――現在は企業研修にも力を入れていますね。このサービスはいつから始められたのですか。

外山:昨年9月です。僕らのところに結婚式を挙げたいと相談に来たLGBTのカップルがいて、当初はLetibeeで結婚式のプランニングまでしようと考えていたんです。でも僕らは結婚式のプロフェッショナルではないし、そのカップルもチャペルみたいなところで一般的な式を挙げたいと考えていた。だったら挙式はプロの方にお任せして、LGBTに関するところだけしっかりサポートしたほうがいいだろうということで、同性カップルを受け入れてくれるブライダル企業を探し回りました。

断られることが多かったのですが、そのうち心からサポートしたいって言ってくださる企業が見つかりました。でもその企業もLGBTの受け入れは初めてで、ぜひやりたいけど、どういう風にサポートすればいいか分からないという。それじゃあ僕たちが企業向けの研修もセットでやりますと提案をしたのが最初ですね。

――ブライダル業界以外でも企業研修はされているんですか。

外山:そうですね。ダイバーシティを推進しているIT企業や、スタッフにLGBT当事者が多いエステ業界などで実施しました。エステは体に触れるという点でも気を使う部分が多いですから、そういった観点からアドバイスをさせていただきました。

>>【後編はこちら】LGBT、ダイバーシティ、ひとり歩きする言葉たち 支援企業が語る当事者の見えない現状

(東本由紀子)編集協力プレスラボ

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