「日本語はわかるか?」と何度もたずねられた 日本在住ハーフ女性が語る差別の実態

「日本語はわかるか?」と何度もたずねられた 日本在住ハーフ女性が語る差別の実態
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先月、ミス・ユニバース日本代表に日本以外の国にルーツを持つ、いわゆる「ハーフ」として初めて長崎県佐世保出身の宮本エリアナさんが選ばれた。アフリカ系アメリカ人の父と日本人の母を持つ宮本エリアナさんだが、ネット上では一部「純日本人ではない」「ハーフが選ばれるべきではない」との批判も挙がり、報道で問題に。そんな今回の件に、当事者ともいえるハーフの女性たちはどう反応したのだろうか。

今回、ハーフ女性の生の声を拾うべく、フィリピンと日本のハーフである蛯名舞花さん(10代後半・サービス業)、ケニアと日本のハーフであるNさん(20代前半・学生)、ドイツと日本のハーフであるYさん(20代後半・専門職)、トルコと日本のハーフである堀口美奈さん(20代前半・会社員)に話を聞いた。

びっくりした? しなかった? ハーフ女性らの反応は

「すごいです」「びっくりした」と驚きと喜びを交えた反応を見せたのは蛯名さんとNさん。新生児の頃にフィリピンから移住してきて以来、日本で生まれ育ってきた蛯名さんは、宮本エリアナさんの件もこの取材で初めて知ったとのこと。ハーフが「日本で認められたように感じる」と話し、「誇らしい」と喜んだ。

Nさんはケニア生まれで、中学生の頃に日本に移住してくるまでは現地の日本人学校に通っていたが、自身や、ケニアで一緒に学校に通っていたハーフの友人の体験から、ハーフは日本で偏見を持たれることもあると感じるという。今回の宮本エリアナさんの優勝には「励まされた」と話した。

喜びながらも、「驚かなかった」と話すのは、Yさんと堀口さん。ドイツで生まれ育ち、日本に移住してきてから6年になるYさんは、テレビでハーフタレントを頻繁に見かけることを挙げ、「日本代表にハーフの人が選ばれるタイミングとしては、早くも遅くもないと感じた」とコメントした。

トルコ、パキスタン、日本と3か国で暮らしてきた経験を持つ堀口さんは、前述の「純日本人ではない」との批判に、「そもそも純日本人にこだわる必要性がない」と答えた。堀口さん自身は高校生の頃にインターナショナルスクールに通っていたこともあり、ハーフであることが特別視されない環境で暮らしてきたからだ。

しかし、同時に、日本で生まれ育ったハーフの人は「自分は他の人とは違う」と感じやすいのではないか話し、今回の件について「宮本エリアナさんのような人が活躍していることが、(彼らの)メンタルに与える影響だけでも、すごく意味がある」とコメントした。

「私も半分日本の血が流れているのに」

今回の宮本エリアナさんの報道でもう一点話題になったのが、彼女がミス・ユニバースに出場したきっかけだ。宮本さんのハーフの友人が、日本社会に受け入れられていないと感じ、自殺してしまったことがミス・ユニバースに挑むきっかけになったという。また、宮本さん自身も、ごみを投げつけられたり、容姿をからかわれるいじめを経験していたそうだ。

このことを踏まえ、前出の4人に日本に暮らすハーフとして感じることについて伺った。

蛯名さんや堀口さんは、日本でハーフとして暮らすことを総じてポジティブに受け止めていた。蛯名さんは、見た目からはハーフだと気づかれないものの、ハーフであることを周りに話すと「母国の料理や、顔立ちをうらやましいと言われる」と話す。

堀口さんは「恋人同士などといった深い関係になると、相手の文化的背景を受け入れられるかどうかが問題となってくるが、普通に日本で暮らす分には問題ない」と、特に暮らしに支障はないと話した。

しかし、YさんやNさんは、たび重なる「外国人扱い」に悩まされているようだった。

Yさんの場合、国籍上はドイツ人であるものの、日本語を流暢に話す。運転免許更新時の講習の際、Yさんはこういった事情を説明し、日本人向けの基礎講習に参加したのだが、大勢の前で、「(教官の言葉が)わかるか?」「日本語はわかるか?」と何度もたずねられ、かなり不快な思いをしたという。Yさんは、「ハーフタレントがちやほやされたり、ハーフメイクが流行ったりしているけれど、私なんかを見ると『はい、アナタは外国人』と外国人扱い」とため息をついていた。

Nさんは日本人としての自己認識と、周りから受ける外国人扱いの差を「ギャップ」という言葉を使って表現した。アルバイトをしているとき、「あなたはきっと日本語がわからないよね」とお客さんが別の店員に話しかけにいく場面などがあり、そういうときにこのギャップを実感するというのだ。

「日本にいるのに、そして私も半分日本の血が流れているにも関わらず、“日本人とは別”と見られるのは少し悲しい」

「ハーフといじめ」に関しても同様に見解は分かれ、「ハーフの友人がいじめられた」(Nさん)とハーフに対するいじめの存在を指摘する声から、「友達とうまく付き合えない、約束を守らないといった、ほかのことが原因でいじめられている子どもが、ハーフなのが原因だ、と問題の本質をすり替えちゃうこともあるのでは」(堀口さん)と厳しい意見まで聞かれた。

ハーフに対して偏見があるって、本当?

筆者自身も神奈川県横浜市で生まれ育ったハーフだが、日本でいじめを受けた経験も、露骨な差別を受けた経験もない。しかし、地方出身のハーフの方はいじめに苦労されることが多いと聞くこともあるし、今回のインタビューでは、見た目からハーフであることが明白なYさんやNさんらが「外国人扱い」される疎外感をより感じている傾向が見て取れた。同じ「ハーフ」というくくりの中でも、住んでいる場所やルーツによって日本での生活が変わる、ということなのかもしれない。

さらに、差別やいじめに直接言及しなかった人も、「ハーフはスタイルがいい、というイメージがあるから、スタイルがよくないことがとてもコンプレックスだった」(蛯名さん)と、ハーフに関するステレオタイプが日本に定着していることを感じさせる発言をしていた。ドイツと日本のハーフであるサンドラ・ヘフェリンさんによる、日本に暮らすハーフの体験を集めた著書のタイトル『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』(中央公論新社)からも、こういったステレオタイプが存在することがうかがわれる。

これらを踏まえると、宮本エリアナさんがただ「美しい女性」としてだけではなく、「日本人女性を代表する女性」として脚光を浴びたことに意義があったと感じざるをえない。日本で暮らす「ハーフ」が、「外国人」や、タレントやモデルなど「美しい人」としてでなく、「普通の日本人」として日本社会に受け入れられる日は、そう遠くないのかもしれない。

参考記事:ハフィントンポストロイター

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