転職しくじり女インタビュー 木原友見の「微妙なる転職」 第3回

トイレ臭いブラック企業から、パワハラの酷い大手企業へ…転職しくじり女(年収300万円・C子の場合)

トイレ臭いブラック企業から、パワハラの酷い大手企業へ…転職しくじり女(年収300万円・C子の場合)

ブラック企業からパワハラ大手企業へ転職

「リベンジ転職」という言葉を聞いたことはありますか。リーマンショック以降の何年間の就職不況時に新卒で社会に出た若者が、景気回復した今転職活動をするというものです。昨今は大手企業も中途採用や既卒者の採用に熱心になっており、数年前に就職活動に失敗した人たちにもチャンスが広がっています。今回はトイレの匂いがまん延するブラック企業から、大手企業に転職した女子の「しくじり」をご紹介します。

今回の転職女子の転職
C子さん・20代半ば 中小コンサルティング・商品企画 年収300万円→ 大手メーカー・商品開発 年収460万円

――新卒時の就職活動は失敗されたということですが。

C子:地方の大学出身だったので全然情報をもってなかったんです。お金がないから渋谷のラブホテルで女友達と雑魚寝して就職活動をして。私は全然ダメだったのに、一緒に泊まった子は大手に決まったりしていましたね。

あの差はなんだったんだろうと思うと、その子は就職活動のための本を読んだり、早稲田や慶応に友達が多くて色々と情報をもらっていたりしたんです。私は準備不足でした。ある大手の面接で「君は彼氏はいるの?」って訊かれたんです。「いません」って答えたら「どうして?」ってさらに追求されて。「この面接官はなにが目的なのかしら?」ってパニックになってしまって。「実験に追われ、また、サークル活動など他に夢中になるものが多々あったので異性には興味を持てず」とか意味不明のことを言っちゃって、見事に落とされました(笑)。

    新卒の時はトイレ臭いブラック企業に入社

――圧迫面接ですよね。ストレス耐性度をみているわけです。正解は「どうしてなんでしょう? 私もこの何年かずっと疑問です」と可愛く笑えばよかったわけです。

C子:そうなんですよね。圧迫面接も知らずに就職活動をしても通るわけがありません。でも、地元の企業は縁故入社が多くてさらに無理なので、結局、新卒の時はベンチャー企業に入りました。ベンチャーといえば聞こえはいいけれど中小企業です。入る前からブラックだとは知っていましたが、入ってみたらもっとすごかったですね。コンサルタント業でしたが、とにかく業務量が多いし、2年目にはなんだか大きな仕事を振られるんですよ。

一番困ったのは、古いビルだからトイレの匂いが下っ端の私たちがいるエリアに漂ってくるんです。最初はどうしようと思いましたがそのうち慣れてしまって。男子は会社に泊まったりもしていましたが、私は近くの健康ランドに行っていました。足裏マッサージをされて大きなお風呂で体をほぐして、休憩室で寝るという……。

――若いうちしかできない働き方ですね。

C子:そうなんですよ。若者向けの商品企画を出すのが仕事でした。リサーチして、企画を考えて、それが形になっていくのは、やりがいがありましたが、いつまで続けられるのかなって。20代のうちは若い子のトレンドも分かるけれど、30歳40歳になった時に自分はどうなっているのか……って思うと不安でした。

    東大体育会系出身の上司のパワハラがつらい

――そんな時に誘いがあったんですね。

C子:誘いというわけではなくて、取引先の大手メーカーの方から「うちで中途採用があるよ。受けてみたら。君はうちの会社向けだから」といわれたんです。勧められたって感じですね。それで受けたら合格しました。新卒の時はエントリーシートで落とされたのに。

合格した時は嬉しくて泣きました。前の会社は給与が上がりませんでしたが、今の会社はちゃんと昇給があるので。これでちゃんとしたところに引っ越せるなって。風呂とトイレが別の物件に住むのが夢だったんです。入浴剤をもらっても使う機会がなかったのに。

――ちょうど転職されて1年経っていかがですか?

C子
:ひとつには仕事はつまらなくなりましたね。下請けからあがってくる企画をチェックする仕事ですし。ただ、まあ、それはいいんですよ。仕事は仕事ですから。それよりつらいのはパワハラです。東大体育会系出身の上司の口癖は「俺は女性には優しくする。でも総合職は全員男だから」。結果を出さないと罵詈雑言の嵐です。オラオラ系なトーンで、論理的に責めてくるんですよ。“インテリヤクザ”ってこういう感じなのかなって。

特に女子で可愛いというか、お嬢様っぽい子は完全にストレスのはけ口にされていて、彼女が泣くまでやりこめています。それを見ているこちらもすごいストレスです。もちろん辞めちゃう子もいるから、だから私が入れたんだなって。今、考えると「君はうちの会社向けだ」と言われたのはストレス耐性が高いからなんだなって。

    ブランド力がある大手ほど、パワハラやセクハラが放置されがち

――ご自身の以前の会社と今の会社を比べるとどうですか。

C子:ブラック企業にはブラック企業のよさがあります。某有名ブラック企業の飲食チェーンの店長も仕事は楽しいと言っていました。前の会社はブラック中小企業だったので、上下関係も緩くて、社員が社長に意見も言えました。ブラック企業が雇用を確保するためには居心地のよさを提供するしかないですしね。

反対に大手でブランド力があるところほど、パワハラやセクハラが放置されがちだと知りました。入りたい人がたくさんいるから、いくら社員を乱暴に扱って辞めてしまわれても、いくらでも代わりがいるからです。

今の環境に耐えられるのは、前職での経験があるからだと思います。体力的には楽になりましたし、給与も上がりましたから。

(木原友見)

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