フェイスブックにある、「お腹いっぱい!」の絵文字。ぷくぷくになった顔がかわいらしく、よく見かける絵文字のひとつですね。
しかし実はこれ、英語版フェイスブックで、なんと16,771件もの抗議を受けた絵文字なんです。いったい、その理由とは? はじめに声を上げたのは、あるひとりの女性でした。
「これで笑えると思ってるの?」
日本語版で「お腹いっぱい!」となっているこちらの絵文字ですが、英語版では「太った気がする~(feeling fat)」と表現されていました。そこでアメリカに住むキャスリン・ウェインガーテンさんが、こんな呼びかけを始めたんです。
「フェイスブックを見ていたら、友達が『太った気がする~』っていうステータスに更新していたのを見ました。ぽっちゃりしたほっぺに、二重あごの絵文字を添えてね。たぶん笑えると思ってやったことなんでしょうけど、これを見て私は怒りを覚えました。摂食障害に苦しみ、それを乗り越えた人間として、私は『太っている“気分”』というものがどんなものなのか知っています」
(署名ページより引用。以下、引用部分は同ページより)
自分が太っているのではないかという考えに取りつかれ、他人の視線を恐れ、太っている人を笑うような言葉がよみがえり、食べることが恐くなってしまう。いつか身体を害するほどに痩せおとろえたとしても、まだ「太っている“気分”」にとらわれ、拒食や過食嘔吐に走ってしまう――そのような摂食障害の経験から、キャスリンさんはこの絵文字に抗議することを決めたのです。
署名には共感のコメントが殺到
「私はこの署名に賛同します。なぜなら私の女友達が学校でバカにされ、『自分が太っているせいだ』と考えて亡くなってしまったから」
「『黒人な気がする~』とか『ユダヤキリスト教徒な気がする~』とか『双極性障害な気がする~』みたいな絵文字、設定しないでしょ?(中略)なんで太っている人だけが二重あごの絵文字にされなきゃいけないわけ? うっわ~!」
今年2月から始まった署名運動は、『タイム』『ワシントン・ポスト』ほか多くの有名メディアに取り上げられ、瞬く間に世界へ広まりました。
フェイスブックは絵文字を変更、摂食障害ガイドラインも
抗議を受けてフェイスブックは、3月10日に絵文字を見直す方針を発表。3月26日現在、フランス語・スペイン語など一部言語では削除され、また英語版でも「feeling stuffed(お腹いっぱい)」に書き変えられた上でリストの最下部近くに移動しています。
それから日本語版含むフェイスブックのガイドラインには、「摂食障害とみられるユーザーを助けるには?」というページも。
何年間も摂食障害に苦しんだというキャスリンさんは、現在脚本家として、子どもたちが自分の体にポジティブなイメージを持てるようなワークショップなどを開催。人々にこんなメッセージを伝えています。
「太っていることは“気分”ではありません。脂肪は、体重に関わらず、私たちの身体の自然な一部です。そしてすべての身体はみな、それだけで尊重に値するものなのです」