>>【前編はこちら】「歩くとおっぱいが大きくなる装置」を発明した21歳女芸人に聞く、無駄すぎる作品の魅力とは?
もの作りが好き、お笑いが好き、そこから生まれたYouTubeチャンネル「無駄づくり」。若手女芸人でもあるチャンネル主の藤原麻里菜さんは、「おっぱいが大きくなる装置」に「乳首が気持ちよくなる装置」といったエロ工作から、「ごはんですよ」を使ったメイソンジャーに、使い終わったレコードで作った時計まで、幅広く工作に励んでいる。藤原さんの一体何が、これらの無駄な工作に向かわせるのだろうか。
コンプレックスが工作に昇華した
藤原:おっぱい装置なんかはまさにそうなんですが、自分の負の部分、悩んでいる部分を工作にしているところがあるんです。ほかには例えば、「一人専用クラブを自宅に作ってみた」とか。実際にはクラブなんて絶対行けないので……。せめて行けた気持ちになるために作りました。
――コンプレックスを工作に昇華させているんですね。
藤原:「10分で彼氏を作ってみた」は、クリスマス前に作った動画。カメラにマッスルのイケメン男性の写真をくっつけておいて、そのイケメン男性と一緒に写るようなアングルで自撮りをすれば、イケメン彼氏とイチャイチャしているリア充ツーショットが撮れる装置なんです。
――すごい! ……と思ったんですが、装置を作ったあと、虚しくなりそうです(笑)。
藤原:やっている最中は楽しくてノリノリなんですけど、後片付けするときはちょっと虚しいです(笑)。もちろん、おっぱい装置とか、10分彼氏装置とかを、欲しい、買いたいっていう人はいないと思うんですよ。でも、使っている動画を見て、笑ってくれて、観ている人のコンプレックスも一緒に解消されたらいいなって思っています。
私、今まで卑屈になることが多い人生だったんですよ。コンプレックスを笑いに変えるというのを覚えたのは、お笑いを始めてから。話すのが下手だったり、愛想笑いが苦手だったりして、昔から学校のグループにもなじめなくて。テレビでイケてない芸人とかを見て、そういう面白さもあるんだ、とだいぶラクになりました。それに、NSCに入ったら、ウジウジ悩んでいるとダサいっていう風潮があって、これはこのままではまずいぞと。
悪口を言われる箇所は面白くできる!
――悩み=おいしい、みたいな世界だからでしょうか?
藤原:そうですね。先輩の男性芸人に、「お前よく見るとブスだな」とか言われて、「あ……、はい……」って最初ちょっと本気で傷ついてたんですけど、「お前つまんねーなー、ブスなんだから面白い返しくらい考えとけよ」って言われて。
そう言われてみれば、ブスな友達は、うまくそれをネタにしている子が多いな、それが人から見たら面白いなら良い返しをしないと、とそれに気づいてから意識が変わりました。その先輩芸人さんも、良かれと思っていじってくれたわけなので。今は、先輩とかから何か悪口を言われると、それはもっとココを誇張していけば面白くなるってことなんだ! と前向き思えるようになれました(笑)。
だから、みんなが人に言えずに抱えているような悩みやコンプレックスを工作にしたら面白いんじゃないかなって思いながら作っているところもあります。いや、もちろんキレイになるに越したことはないんですけど(笑)。それでも、悩んでしまっているくらいなら、そんな自分のことも認めて、見方を変えるだけでも全然違ってくると思います。それが“変えられないこと”なら特にです。
――貧乳なんかはそうですね。
藤原:そうです。顔はメイクで変えられても、貧乳は手術しない限り一生付き合っていくものですから。私、一度悩むと四六時中そのことばかり気にし続けるタイプだったんですけど、先輩芸人さんの言うところの“返し”を一つ持っておくだけでも、それが自分の心の防御力が上がりました。「無駄づくり」もその“返し”の一種と言えるかもしれません。例えば、すごく美人な人と会うってなったとき、昔はかなり卑屈になってたんですよ。いちいち自分の顔と比べちゃって。でも、今はそういうネガティブな気持ちが減りました。
――「無駄づくり」という名前からは想像できないくらいの自己啓発ですね。
藤原:だから、5年、10年と続けていきたいですね。今21歳なので、5年後はまた違った悩みが出てきていると思うんです。それこそ、結婚・子育てなんかにまつわる装置を作りたくなりそう。年齢ごとに違った「無駄づくり」が生まれるはず。今は……そうですね、婚活とかよりも、彼氏がいないことや友達が少ないことが悩みなので、一人で二人羽織りをする装置を作ってみたいです。二人羽織りをしてくれるような相手がいないので……(笑)。
(朝井麻由美)編集協力プレスラボ