「健康長寿」を目指しながら、年齢を巻き戻す「エイジングケア3.0」という新しいフェーズを提案する「fracora(フラコラ)」。同ブランドが運営するYouTube番組「生命科学アカデミー」では、最先端の生命科学の知識を紹介しています。
近年、健康・美容・活力をサポートする成分として注目を集めている「5-ALA(5-Aminolevulinic Acid:ファイブアラ)」。この5-ALAを長年研究してきた長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科長の北潔(きた・きよし)先生に、その効能や可能性について教えていただきます。
第2回目では、5-ALAとミトコンドリアの関係性を深掘り。必要なものを自ら作り、それを利用するミトコンドリアの仕組みに迫ります。聞き手は同番組のホストを務めるHIROCO学長です。

北先生(左)とHIROCO学長
5-ALAはエネルギー代謝の原材料
HIROCO学長(以下、——)先生が研究されている「5-ALA」は、アミノ酸の一種ですよね。アミノ酸とはどのような物質なのでしょうか。
北潔先生(以下、北):人間の体は約60%が水分、約20%がタンパク質でできています。このタンパク質の構成成分がアミノ酸です。全部で20種類あると言われており、私たちはこれがないと生きていけません。
一方で、私が研究している「5-ALA」は、アミノ酸ではあるものの、タンパク質の構成成分ではありません。アミノ酸のひとつである「グリシン」と「スクシニル-CoA」といった物質から、5-ALAが生成されます。
——タンパク質の構成成分である20種類のアミノ酸の役割と、5-ALAのアミノ酸では、どのような役割の違いがあるのでしょうか?
北:20種類のアミノ酸は、先ほどお話しした通りタンパク質の構成成分です。一方、5-ALAは、ヘムやクロロフィルといった、エネルギー代謝に重要な成分の原材料、出発物質です。
ミトコンドリア内を循環する5-ALAの仕組み
——同じアミノ酸でも役割が違うということですね。エネルギー代謝といえばミトコンドリアですが、ミトコンドリアと5-ALAの関係性は?
北:5-ALAは、ミトコンドリア内で生成されます。それが細胞質に出て行き、途中まで組み立てられてから、再度ミトコンドリアに戻ってくるんです。このようにして「プロトポルフィリンIX」という物質が生成されます。
プロトポルフィリンIXは手裏剣みたいな形をしていて、真ん中に穴が空いています。この穴に鉄(Fe)が入ると「ヘム」という物質が合成され、酸素呼吸をしたり、組織に酸素を運んだりする役割を果たすんですね。
——ミトコンドリアは、必要なものを自ら作り、それを利用しているんですね。
北:図で表すとわかりやすいですが、5-ALAは、ミトコンドリアの外膜(細胞質)と内膜を循環しています。オレンジ色の部分が外膜、ピンク色の部分が内膜ですね。

生命科学アカデミーより
ミトコンドリアの内膜には、筋肉の収縮など生命活動で利用されるエネルギーの貯蔵・利用にかかわるATP(アデノシン三リン酸)を合成したり、色々な栄養物質を運んだりする機能が備わっています。ここが元気であれば、健康を維持することが可能ということですね。
ミトコンドリアの機能が低下すると病気になる
——ミトコンドリアが元気じゃなくなると、どうなるのでしょうか?
北:ミトコンドリアの機能が低下してくると、いろいろな病気になることがわかっています。ミトコンドリアに異常をきたすことが原因で発症する病気を「ミトコンドリア脳筋症」といい、例えば、ミトコンドリアのDNAに変異が起こり、ATPが合成できなくなってくると、筋肉の機能が落ちてきます。
ミトコンドリア脳筋症になると、まぶた(眼瞼)が垂れてくるので、それで病気が発覚することもありますね。
——先生は、5-ALAがミトコンドリアとタッグを組み、健康長寿をどのように支えているかといった仕組みを研究されているんですね。
北:そうですね。実は、研究室に入った大学4年生のとき、教授から「シトクロムという大腸菌のヘムタンパク質の研究をしなさい」とテーマをいただいたんです。その研究で、ヘム合成のない大腸菌を培養するときに、5-ALAを使っていたんですね。
なので、5-ALAとは不思議な縁があるというか……その頃からもう50年くらい同じ研究をしている感じです。
(第3回へ続く)
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